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艦隊これくしょんSSのキャラ別まとめブログ


榛名 鳳翔 青葉 大淀 時雨 夕立

【艦これSS・榛名】鈍感系提督【夕立】

2016/12/21

提督「おぉ、すごい。とても綺麗な月ですね」

一日の指揮が終わり、縁側で静かに杯を傾けながら提督がつぶやく。

鳳翔「あら、では私は死んでもいいわ、と答えればよいでしょうか」

隣に座り酒を注いでいた鳳翔が静かに笑う。

提督「そういう意味では…いや、鳳翔さんに言われたら悪い気はしませんね」

鳳翔「軽口で言ったつもりはないですよ?」

提督「はは、舞い上がってしまいます」

杯を空にし楽しそうに提督が笑う

提督「鳳翔さんは俺の思い描く理想の女性です。あなたにこんなことを言ってもらえるとはたとえ冗談でも男冥利に尽きます」

鳳翔「もう…、冗談ではないと言っているのに…」

提督「しかしたとえ冗談でも死んでもいいなどと言わないでください。あなたがいなければこの鎮守府は成り立たない。いや、ここだけじゃない。もしあなたが死んでしまったら俺も生きていけません」

鳳翔「提督それって…」

提督「終わりの見えなかったこの戦争もようやく佳境にきました。このまま一人の轟沈もなく、最後まであなたと戦いたいのです」
鳳翔「提督…私の夢をご存知ですか?いつか戦いが終わって、その後人として生きることを許されたのなら、小さな、本当に小さなものでいいんです。ささやかな料亭を営みたいと…。そしてそのとき提督が隣にいて下さったら…」

提督「えぇ、その夢が叶うように頑張りましょう。私も指揮官として誠心誠意戦いに臨む覚悟です。あなたのことも頼りにしています、鳳翔さん」

鳳翔「はい、提督…」

鳳翔は思いを馳せる。この戦争の終結に、その先の未来に。最古の軽空母でありお世辞にも戦闘力は高いとは言えない。それでもこの人のためになら、この人と一緒なら、艦隊丸ごと一つでも相手にしてみせよう。大きな月と隣に寄り添う最愛の人に向け、静かに強く鳳翔は誓うのだった。

提督「諸君、ご苦労であった。無事作戦終了だ」

特別海域の攻略に参加した艦娘たちを前に提督はねぎらいの言葉をかけていた。

提督「そして今回のMVPは榛名、君だ」

榛名「はいっ、頑張りました!榛名感激です!」

提督「作戦全体を通して君にはとても活躍してもらった、ありがとう」

榛名「そんな、改まって言われると榛名照れてしまいます///」

比叡「むうー、次は私も頑張ります!」

金剛「ワタシだって負けないネー!」

提督「みんなも良く頑張ってくれたよ。ただ今回は榛名が一番だったというだけだ」

一旦言葉を切るとゴホンと咳払いし提督は榛名に向き直る。

提督「そこで少しばかり感謝の品をと考えていたんだが…女性の感性には疎くてね、いいものが思いつかなかった」

榛名「そんな、榛名にはもったいないです…」

提督「そんなことはない。君さえ嫌でなければなにか要求を言ってほしい。俺にできる範囲のことならなんでもいい」

金剛「そうダヨー榛名!頑張ったんだからPresentは当然ネー」

榛名「ほ、本当ですか?では…ゴニョゴニョ…」

提督「っ!い、いいだろう。男に二言はない、了解した」

霧島「榛名、なにをお願いしたんです?」

榛名「ふふっ、内緒です♪」



その夜、提督の私室にて

提督「まさか添い寝してほしいとは…」

榛名「なんでもとおっしゃったのは提督ですよ?それとも…榛名ではイヤ、ですか…?」

提督「とんでもない。君こそ変に気を使ってくれたのではないかと心配になってしまってね。悪かった、今日は存分に甘えてくれたまえ」

榛名「ふふふ、今日だけは提督を一人占めです。あぁ提督の匂いに包まれて榛名は、榛名はっ…」

提督「へ、変な気は起こさないでくれよ…?」
MVPはもちろん狙って取った。前回の大規模作戦で戦果を上げ、提督に褒められていた娘を見て今回は自分こそがと頑張ったのだ。まさかこちらから要求を出していいといわれるとは思わなかったが…。けれどこうして一緒の布団に潜れているのだからこれ以上ないご褒美といえるだろう。もっといろいろあんなことやこんなことを…などと暴走しそうになる理性を抑えながら今この幸せを噛みしめつつ榛名は提督にしがみつく。ずっと一緒にいられますように、次も頑張れますように、と。

青葉「司令官、司令官!新しく着任した娘のいい情報ありますよぉ?」

バーンと勢いよく扉を開け元気な記者娘が執務室に入ってくる

提督「あー、また誰かのパパラッチをしたのか?」

青葉「ち、違いますよー。清く正しいインタビューですよーやだなー、ははは…」

提督「君の情報はとても役に立っている。しかしあまり他の娘のプライベートに踏み込むのは感心しないぞ。誰とは言わないが苦情も何件か来ている」

青葉「こ、こればっかりは記者としての本能で…」

提督「俺が心配しているのはね、青葉」

提督はペンを動かす手を止め真剣な眼差しで青葉を見つめる。

提督「君がいろいろ首を突っ込みすぎて他のみんなから嫌われてしまわないか、ということだ」

青葉「あう…」

提督「艦隊の規律がどうこうじゃない。君がのけ者にされ辛い思いをすることになったら俺はとても悲しい」

青葉「司令官…」

提督「だから青葉、人が嫌がることはしないでおくれ。俺は頑張り屋で素敵な青葉をもっとみんなに知ってもらいたい」

青葉「そう、ですね。わかりました。青葉少し控えるようにします」

青葉「あ、でもでも司令官のことは取材…してもいいですよね?」

提督「ふぅ、しょうがないな、青葉の取材欲を満たすためなら協力しよう」

青葉「やったぁ!ではでは早速ですねぇ…」
知りたい、知りたい、自分の知らないこと隠されているもの、首を突っ込まずにはいられない。そのためだったら危険も冒すし結果他人にどう思われようが気にはならなかった。でも提督に出会い嫌われる怖さを知った。迷惑をかけても邪険にせず一番に心配してくれる人、もしこの人に愛想をつかされたら…。想像するだけで胸が締め付けられてしまう。そう考えるようになってから他の人にも気を使えるようになっていった。もちろん取材魂は鎮火してはいないが、人が本当に嫌がることはしないと決めた。それに今は、もっともっと時間をかけて取材したいものがあるのだから。

→→ドック

提督「大丈夫か鈴谷!?戦艦との交戦で大破したと聞いたぞ!」

顔面蒼白にした提督がドックの扉を開け放し慌ただしく駆け込んでくる。

鈴谷「おっす…提督ー…。えへへへ…ヘマしちゃったー…」

提督「無理に起きるな。目は見えるか?手足は動くか?傷は痛むか?あぁこんなにボロボロになって…」

鈴谷「全身…バッキバキに痛いけど…大丈夫…命に別状はないってさ…。ごめんねー…作戦…中断させちゃって」

提督「馬鹿言え、帰ってきてくれただけで大戦果だ。沈まずに済んで本当に良かった」

傷だらけの身体を抱きしめながら心底ホッとしたように提督は声を出す。

鈴谷「でも…さんざん苦労した海域を…。あと少しで行けたのに…」

とても申し訳なさそうに言う鈴谷の目を真っ直ぐに見つめ提督も言葉を返す。

提督「鈴谷、俺達は海の平和を守るために戦っている。深海棲艦の脅威は排除しなければならないが、それでもお前たちを犠牲にしてまで進もうとは思わない。軍人としては失格だろうが、俺はこの信念を曲げるつもりはない」

鈴谷「うん…」

提督「鈴谷を見捨てることなんて絶対にしない。もしお前が沈んだらそのときは俺も一緒に逝ってやる」

鈴谷「うん、うん…」ポロポロ

提督「だから今は安心して休みなさい。治ったら甘いものをたらふく食わせてやる。気力回復するまで帰さないからな、覚悟しておけよ」

鈴谷「ありがと…提督…」ギュッ
ほんとに軍人失格だよ。指揮官たるもの、攻める時には非情な決断をしなきゃいけない時だってあるだろうにさ。でも、こんな人だから命を預けられる。私たちのことを第一に考えて行動してくれると信じられるから。全身を襲っていた痛みは提督の声を聞いているうちに気にならなくなっていた。私を大切にしてくれるこの人のために全力で命をかけよう、そう心に決めながら鈴谷は眠りに落ちていった。

時雨「いい雨だね。提督、雨は好きかい?」

梅雨の時期。しとしとと降り続ける霖雨を物憂げに見ながら時雨が話しかけてくる。

提督「時と場合によるな」

時雨「へぇ、聞かせてくれないかい?嫌な時っていうのは?」

提督「外出の予定があるときや野外での用事があるときかな。洗濯物が貯まっているときも憂鬱になる」

時雨「ふーん」

提督「それとみんなが作戦に出ている時だ。荒れた天気でみんなに何かあったらと思うととても不安になる」

時雨「提督は優しいね」

提督「心配性で小心者なだけだよ」

時雨「じゃあさ、雨が好きな時は?」

提督「そうだな、いい雨だと感じるのは時間に余裕があってゆっくり静かに過ごせる時。それと…」

時雨「それと?」

提督「…時雨が隣にいる時」

時雨「…」

提督「…」

提督「…すまない、今のはクサかった。忘れてくれ」

時雨「ふっ、ふふふっ、あはははっ、確かに、柄じゃないね。ふふふっ…」

提督「カッコつけるんじゃなかった…」眉間押さえ

時雨「ふふっ、でもそうか、じゃあ今の雨は好きな雨なんだね?」

提督「恰好つけて滑ったが、思っていることは本当だよ」

時雨「嬉しいな。提督…いい雨、だね」ぴとっ

提督「…ああ、そうだな」
平静を装いつつ照れている提督はカワイイ。真剣な顔で指揮を執っている提督はカッコいい。作戦から帰投したとき優しい顔で迎えてくれる提督は安心する。こうして提督とくっついているととても暖かい気持ちになる。
心の中に抜けない棘があった。幾多の戦闘を越え幸運艦と呼ばれるまでになった自分だが、生き残るということはそれだけ多く仲間を看取るということ。転生し、再びかつての仲間たちと一緒になっても心のどこかで後ろめたく思っていた。意識せず壁を作ってしまっていた自分だったが、提督は気づき優しく諭してくれた。
『もし時雨が先に沈んだら、生き延びた仲間に恨みつらみを吐くのかい?お前の知っている彼女らはそんな狭量な奴らではないだろう?』
彼にとっては何気ない励ましの言葉だったかも知れない。それでも僕はとても救われた。負い目を感じなくていいんだと、生き残ったことを誇っていいんだと、ここにいても大丈夫なのだと。提督がいてくれたから今を笑って過ごせている。ありがとう、提督と一緒に見る雨、僕も好きだよ…。

夕立「提督さーん、戻ったっぽいー」ダキッ

北方へ向かわせていた討伐部隊が帰還し旗艦の報告からしばらくたった後、今回の戦闘で首級を上げた駆逐艦娘が勢いよく抱き着いてきた。

提督「お疲れさま夕立。また大活躍だったみたいだね」なでなで

夕立「えへへー、褒めて褒めてー!」

主人に甘え、頭の両脇から見えるくせ毛をぴこぴこさせる様はさながら褒美を待つ犬のようである。

提督「夕立は本当に犬みたいだな。狂犬などと呼ぶ輩もいるそうだがウチの鎮守府自慢の可愛い可愛い愛犬だ」なでなで

夕立「んむぅー、夕立犬じゃないっぽい!ちゃんと女の子よ!」

提督「失礼しましたお嬢様。じゃあ撫でるのは止めたほうがいいかな?」なでなで

夕立「それは続けていいっぽい」

提督「ふふふ」なでなで

夕立「んふふー♪」

提督「夕立はうちの艦隊で真っ先に改二になったからな。駆逐艦の大火力としていろいろ無茶をさせている」

夕立「そんなことないっぽい!提督さんのお役にたてるの嬉しいっぽい!」

提督「そう言ってくれる夕立についつい甘えてしまっている。すまない」

夕立「んーん、提督さんは私のこと大事にしてくれてるってわかるから夕立どんどん頑張れるっぽい」

提督「夕立は本当にいい子だな…。俺ももっといい指揮ができるよう頑張るよ、ありがとう」ぎゅっ

夕立「んふふー…///」

あぁ暖かい手だ。大きくてゴツゴツした大好きな人の手。戦闘中は非情な殺戮マシーンでも、ここに戻れば気を抜いて一人の少女に戻ることができる。犬扱いは嫌と言ったけど頭を空っぽにして甘えられるこの時間はなによりも大切な時間だ。また頑張ろうと思える、提督にいっぱい褒めてもらえるようにと。そんな難しいことを思うのも一瞬、この後はいつもみたいに騒がしく、まさしく犬のようにじゃれつくのだ。私だけができる私だけの甘え方で。

霞「クズ司令官、今週中にって言われてる提出資料は完成したの?」

提督「む、今そっちより緊急性が高い書類があってな…。明後日までには何とか…」

戦闘には参加できない提督だが、その代わりに膨大な事務処理がある。今日も今日とて執務室で書類とにらめっこである。大淀や明石が普段から手伝ってくれているが、提督のモットーとして本来の業務以上の仕事はなるべく回さないようにしている。そのため自分の仕事が片付かず、休暇であっても執務室にいることが多い。
霞「あーもう!だから時間があるときにやっとけって言ったのよ、このクズ!」

提督「くっ、面目ない。いや、しかしまだ猶予は…」

霞「そういってまた徹夜するんじゃない!書類出して、やれるところはやったげるから!」

提督「非番なのに申し訳ない。霞は適当なところで切り上げてもらえれば…」

霞「アンタだって休みでしょ!ちょうどヒマだから出来の悪い司令官を手伝ってあげるって言ってんのよ!迷惑かけたくなかったらてきぱき仕事こなしなさいこのクズ!」

提督「(そこまでボロクソ言わなくても…)出来の悪い上司ですまんな、ありがとう」

霞「…フン!まったく、見てらんないったら!」
普段はそんな堅苦しい喋り方しないのに私の前では気を張っちゃって。出来が悪い訳ないでしょう。一人の轟沈も出さずここまでやってきて、休日にだって仕事をしているあなたが。そんなあなただからこそ努力は報われて欲しいしい失敗をしてほしくない。あなたを思ってのこととはいえ、こんなキツイ物言いしかできない不器用な私をあなたは受け入れてくれる。それがなにより嬉しく温かく感じる。大丈夫、私がずっとついていてあげるから。世界が平和になるまで、そしてその後だって私がしっかり引っ張って行ってあげるんだから。
168「作戦終了、艦隊が帰還したわ!」

赤い髪を揺らしながら水着姿の少女が元気よく報告してくる。

提督「あぁお疲れ様。暑い中哨戒任務ご苦労だった」

168「大したことないわ。なんなら連続でだって出撃しちゃうんだから!」

提督「イムヤはいつも頑張ってくれているんだから、休息も任務の内だよ。ここ(執務室)は涼しいからな、少しゆっくりしていくといい。今は秘書艦もいないから小言を言われることもないしな」

168「そう?じゃお言葉に甘えさせてもらうわ」

冷蔵庫の飲み物を168に渡すと提督はまた書類作業に戻る。
しばらく時計のコチコチという音と書類をめくる音だけが聞こえる静かな時間が流れる。

168「…」

提督「…」

168「ねぇ」

提督「…」

168「ねぇってば」

提督「ん?」

168「司令官、イムヤのこと嫌いになったの?」

提督「!? いやいや、仕事してただけだろう。急にどうした?」

168「本当?嫌になったから無視してたんじゃないの?」

提督「そんなことするわけないだろう。そもそも嫌いな奴を労って部屋に置いておくと思うか?」

168「だって…5分間もなにも話してくれなかったじゃない」

提督「えぇ…、たった5分じゃないか…」

168「私が初めてここに来たときは『初めての潜水艦だ』って喜んでくれたのに、練度が上がって他の娘たちが増えてからどんどん構ってくれなくなって…」

提督「む…」

168「嫌われちゃったのかなって、もういらない娘なのかなって不安になって…」

提督「イムヤ…」ぎゅっ

168「あっ…」

提督「すまない。どうやら長い付き合いだからとお前のことを蔑ろにしていたようだ。ここ最近出撃させて欲しいと頻繁に言っていたのも意識してもらいたかったからなんだな。気づいてやれなくて悪かった」

168「うっ、ううう…」グスグス

提督「前より話せる時間は少なくなってしまったが大丈夫、イムヤのことはずっと考えていたよ。またちゃんと話す時間を作るようにするからどうか許してくれないか?」

168「グスッ、私のほうこそ急に取り乱したりしてごめんなさい…。久しぶりに司令官と二人きりになったらなんかいろいろ溢れてきちゃって止まらなくて…」

提督「いや、全面的に俺が悪い。こんな後になって申し訳ないが今夜は予定を開けておく。久しぶりにゆっくり二人で話をしよう」

168「うん、わかったわ。夜は私たちの世界よ。司令官に聞いてもらいたいこといっぱいあるんだから途中で寝ちゃわないでよね!」ニコッ
海の底はとても静かでそして暗い。その世界で生きる私たちだから今更恐れはないけれど、長い間潜っていると最後の日のことを、暗く深い海底へ沈んでいったあの日のことを思い出してしまう。でも今は違う。どうしようもなく不安になるときがあっても待っていてくれる人がいるとわかっている。あの顔を思うと冷たい海の中でも暖かい気持ちになり自然と笑顔になってしまうのだ。艦隊が大きくなり潜水艦仲間も増え前より騒がしく楽しくなったが、それと反比例して司令官と接する機会は減ってしまい話す時間も少なくなってしまった。会える時間が短くなったことで自分の気持ちに気づき、あぁやはりこの人じゃないとだめなんだと改めて強く想うようになっていった。今日は思いがけず目の前で泣いしまったが、怪我の功名、司令官はまた相手をしてくれると約束してくれた。そして今日一晩は私が一人占めだ。ねぇ司令官、これからも私が頑張れるようにちゃんと見ていてよね。

大淀「提督、本部から電文です。なにやら新たな取り組みに関する重要なものだそうで」

提督「ふむ、一体なんだろう?」

→新システム、ケッコンカッコカリについて

大淀「わぁ、綺麗…。指輪、ですね」

提督「これは…、また随分と面倒くさいモノを寄越してきたな」

大淀「あら、いいと思いますよ。仮とはいえエンゲージリングなんて素敵じゃないですか」

提督「これはどうやら艦娘の錬度を限界突破させるアイテムらしいが、一人にしかあげられないとのことだ。俺としては目に見える形で誰かを特別扱いしたくないんだがな」

大淀「あれだけいろいろな方に粉をかけているのに?」

提督「いやいや、人聞きの悪い。そんなつもりはないぞ?」

大淀「まあ悪い人。自覚なしに言っているとしたら大概ですね」

提督「まぁ冗談はさておき、本気で扱いに困る案件だな。よりにもよってケッコンという名と指輪ときたもんだ」

大淀「これを機に誰か一人に絞って身を固めたらいかがです?」

提督「正式な婚姻でもあるまいし、戦力強化、上限解放が目的だろう?ケッコンカッコカリというのは本営なりのジョークだよ」

大淀「彼女達はそうは思いませんよ?」

提督「俺ごときと本気で番いたいと思う酔狂な娘などおるまいよ。あくまでパワーアップアイテム、所詮はカッコカリさ」

大淀「…それ本気で言ってます?」

提督「あ、いや、大本営からの戦力強化の品を所詮なんて言ってはいけないな、うん」

大淀「そうではなくて…」

提督「?」

ここの提督は色恋沙汰に対して鈍感である。轟沈は一人もなく指揮も的確、日々の自己鍛錬を欠かさない誠実な男であるが自身に対する自己評価が極端に低い。特に女性からの好意に関しては壊滅的である。今までの人生で女性に言い寄られたことがないため、艦娘からの想いも「自分がモテるわけがない、その気にさせるようなことを言って持ち上げてくれているだけで本気で言っている訳ではない」と全て社交辞令として受けとってしまっている。艦娘に思わせぶりなことを言うのも良き指揮官として振る舞おうという思いからであり、自分ごときの甘いセリフなど誰も本気にするまいという大前提の上で言っている。

悪人でも女たらしでもない、しかし自信と経験の無さゆえに配慮の仕方が方向音痴になってしまっている。励ましのつもりで言った言葉が、彼女らにどれほどの影響力を与えるかわからずに。
提督「しかし大本営から寄越された物だ、無視する訳にもいかないな。さて誰に渡すべきか…」

大淀「よく考えて下さいよ?本当によく考えて下さいよ?」

提督「わかっているよ。なんでそんなに念を押すんだ…」
???「あわわわわ…」カシャッカシャッ
~週刊AOB【号外】~
≪速報!ついにあの男が!?≫
所用で執務室に赴いた記者は偶然にも衝撃的な光景を目にすることとなる。なにやら深刻そうな顔で話しこむ司令官と秘書艦。そこに届けられたのは小ぶりな箱と書類一式だった。司令官の真剣な表情、秘書官が呟いた『身を固める』という言葉、光り輝く小さな金属の輪。それらが意味するものとは!?・・・・・・・


・・
・・・

提督「まったくあの娘は…」

大淀「はぁ…昨日の今日でもう鎮守府中に知れ渡ってしまいましたね」

提督「仕方がない。いずれは公表しなければならない事だし、不本意な形ではあるがこれから皆に正式に説明しようと思う」

大淀「そうですね。このまま放っておけばいらない混乱を招くばかりでしょう」

提督「まぁパワーアップの指輪一つだ、そんな大騒ぎにはなるまい。簡潔に伝えて終わらせるとしよう」

大淀「そんな簡単に収まるとは思えませんが…」目逸らし
…鎮守府各所

鳳翔「まぁ…」うっとり
榛名「そんな…」ドキドキ
鈴谷「ウソ…」マッカ
時雨「へぇ…」フフッ
夕立「ぽいっ!?」わたわた
霞「もう…っ」ソワソワ
168「ふぅん…」クスッ

青葉「記事にしたものの、まぁ渡すのは私になんでしょうケド」ニマニマ
提督「…というわけだ。新システムの説明は以上だが、なにか質問のある者はいるか?」

大食堂に集められた鎮守府全ての艦娘を前にケッコンカッコカリの説明を終え、提督は全体を見渡す。艦娘たちも突然沸いたケッコン話に、年頃の娘らしくキャーキャーと色めき立つ。

「正式な婚姻ではなくカッコカリだと言いましたが、その対象となるのは最高錬度かつ強い絆を結べる相手、なんですよね?」

提督「ああ、その通りだ」

「それってつまり…そういうこと(愛情)ですよね?」

提督「ああ、そういうこと(信頼)だ」

根本的な食い違いがあるが提督は気づかず頷く。
ざわざわ…
サスガニキブンガコウヨウシマス… キャーッ! シレイカンッタラ… オホー!
「ズバリ聞きますが、もう相手は決めておいでなのですか?」

提督「うむ、そのことだが実はもうすでに渡す者は決めている」

大淀「!?」
どよどよ…
エッヤダッアタシッ!? ウムッアリガタイゾ! アタシガイチバンニキマッテルジャナイ! ヨンダカモ!?
鳳翔「…」
榛名「…」
鈴谷「…」
時雨「…」
夕立「…」
霞「…」
168「…」
青葉「…」
大淀「ちょっ…待ってください!ここで言うつもりですか!?やめたほ…」

提督「君に渡そうと思う。受け取ってくれるかい?」

提督「卯月」

卯月「ぴょんっ!?」

大淀「ああぁぁぁ…言っちゃった…」
鳳翔「!?」
榛名「!?」
鈴谷「!?」
時雨「!?」
夕立「!?」
霞「!?」
168「!?」
青葉「!?」
一瞬前までそわそわと浮足立っていた空間が一瞬で凍り付く。しかしそれを静粛な空気と捉らえた提督はそのままことを進めてしまう。卯月を壇上に上げると提督は膝を折って目線を合わせ恭しく指輪を渡す。
提督「受け取ってもらえるかな?」

卯月「やったぁ嬉しいぴょん!うーちゃん感激~!」

提督「うむ、喜んでもらえたようで良かった。ではこれを」

提督が卯月の手を取り指輪をはめる。提督から指輪をもらうと卯月は嬉しそうにぴょんぴょん跳ねまわり早速弥生に見せびらかしに行く。

卯月「見て見て~弥生、もらっちゃったぴょん!」

弥生「よ、良かったね…」

卯月「うーちゃんにピッタリ、綺麗だぴょん!嬉しいぴょん!お嫁さんだぴょん!ぷっぷくぷぅ~」

弥生「そ、そう…」

嬉しそうにはしゃぐ卯月と対照的に弥生は青い顔をしながら目を逸らす。

なぜなら食堂全体がシベリアの永久凍土より冷たく、艦隊決戦時以上に緊張した空気に包まれていたからだ。
鳳翔「ひどいです…。あの夜月の下で誓ってくれた言葉は嘘偽りだったのですか…?」

提督の発表を聞きさめざめと泣きだす鳳翔。それを見た空母勢がかつてないほどの怒気を放ちながら立ち上がる。

加賀「あなた…、母さん(鳳翔)をソデにするなんて一体どういうつもり?」

赤城「提督…!これは許されないですよ!」

飛龍「ちょっと信じらんないなー。いくらなんでもお母さん(鳳翔)を弄ぶとかさ…」

蒼龍「提督の趣味をどうこう言うつもりはないけどさぁ、お母さん(鳳翔)振ってあんな小さな子に渡すとかなに考えてるの?」

瑞鶴「お母さん(鳳翔)を傷つけといて、爆撃程度で済まされるなんて思ってないでしょうね?」

龍驤「司令官、ちょっちツラぁ貸せや…」

今にも爆撃機を発艦させそうな勢いで怒り心頭の面々が詰め寄ろうとする。

翔鶴「み、みなさん落ち着いて…」

天城「あわわわわ…」

龍鳳「ダメですっ…ここで争っては…」

隼鷹「あー、これは提督が悪りぃわ。鳳翔さん泣かしたら生きて帰れねーよ…」

雲龍「はぁ、まったくなんてことをしてくれるのかしら」

何人かが必死で止めようとしてくれるがそう簡単には収まりそうにない。

一方、戦艦側からも怒号が聞こえる。

金剛「Shit!どういうことネ!なんでワタシじゃなくウヅキなんデスカー!?」

霧島「これは予想外です。戦艦や空母ではなくまさか駆逐艦に渡すなどと…」

比叡「そーです!お姉さまや榛名の気持ちはどーなるんですか!」

他の戦艦勢もぎゃあぎゃあと喚くが、特に提督を慕っていた金剛の声が大きい。怒り心頭といった感じで真っ赤な顔をして抗議している。

金剛「Hey!榛名もなんとカー…」
榛名「はい、榛名は大丈夫です」
加勢を求めて振り向いた金剛だったが榛名の顔を見て硬直する。

榛名は普段と変わらない柔和な笑顔をしているが、そこからは何の感情も読み取れない。喜怒哀楽の欠落した顔でいつも通り微笑んでいるだけだ。
この場においてあまりにも不自然すぎるその笑顔に金剛は強い恐怖を覚える。

金剛「Oh…」

比叡「ヒエー…」

霧島「は、榛名少し落ち着いて…」

他の金剛型姉妹も異常を察し声をかけるが榛名は変わらない。

榛名「はい、榛名は大丈夫です」

あくまで、いつも通りに、笑っているだけである。

鈴谷「どういうこと?マジ意味わかんないんだけど。なんでよりにもよってあのバカウサギなの?」

眼の座った鈴谷も納得いかないと口にする。

卯月「ぷっぷくぷぅ~wwwぷっぷくぷぅ~www」

弥生「…ねぇ、ほんと止めて…お願いだから静かにしてて…」

弥生は気の毒なほど顔面蒼白である。必死で卯月を抑えようとしているが当の本人は全く気付かずはしゃぎまわっている。周囲を気にせず指輪を見せびらかすその行動がさらに鈴谷の感情を逆撫でし、鈴谷は忌々しげにチッと舌打ちする。

鈴谷「ほんとなんなのさ…」

熊野「鈴谷…、心中お察ししますわ。ですがレディは失恋を乗り超えることでより美し…」

鈴谷「  黙  っ  て  て  」

熊野「…シツレイシマシタワ」

三隈(バカですわ…)

最上(空気読みなよ…)

颯爽とフォローを入れようとした熊野だったが鈴谷の一睨みで縮こまる。
同じく声をかけようとした最上・三隈も、熊野の自爆でより一層不機嫌さを増した鈴谷に気圧され声をかけられず黙ってしまう。

青葉「なんでっ…なんでですかぁ。私、ずっと司令官のこと見てたのにぃ…」

記事を作っていた時の幸せな顔とは裏腹、今は絶望の表情を浮かべた青葉が提督に縋り付く。

青葉「なんで私じゃないんですかぁ、司令官に見放されたら、司令官に見てもらえなくなったら、私はっどうすればいいんですかぁ…」

ここで振り払われたら生きていけぬとばかりにイヤイヤと必死にしがみつく青葉。

大淀「なんで…なんで全体に言う前に、事前に一言相談してくれなかったんですかぁ…」

大淀も絶望した表情で縋り付くが、これは青葉のとは意味が違うだろう。

重巡仲間は青葉のあまりの狼狽ぶりに見ていられないと顔を伏せる。幸せそうな顔で記事を作っていたのを知っている衣笠はよりいっそういたたまれないといった顔で相棒を見ている。

168「ねぇ…わたしよくわからないよ…。なんでわたしいがいのこにあげたの?ちゃんとしれいかんのくちからせつめいしてほしいな」

ドス黒いオーラを纏いながら168も問いかける。

19(ヤバいのね…)

8(かつてないヤバさですね…)

58(誰かなんとかしろでち…)

401(やだやだぁ…)

26(やばーい…)

呂500(漏れそうですって…)

まるゆ(まるゆもう漏らしちゃいました…)

168の少し病的な面を理解していた潜水艦仲間だが、今まで見せたことのないあまりにも危険な気配に誰も声をかけれずにいる。何人か排水してしまっているが、それを気に掛けるほどの余裕は今の潜水艦達にはない。

提督も予想外の大混乱にたじろいでいたが、ちゃんと理由を伝えれば納得してもらえるだろうと思い直す。
なにも後ろめたいことは無い、間違ったことはしていないと自分に言い聞かせなんとか気持ちを奮い立たせる。

提督「う、うむ。卯月に渡した理由はだな、失礼なことを言うが戦闘に参加する娘の中で一番地力が低いからだ」

提督「卯月は能力値が低いながらも艦隊の一員として多くの作戦行動に参加し貢献してくれた。すでに錬度も最高値に至っているしな。まぁうちの艦隊はほぼ全て最高錬度ではあるが…」

正直なぜここまで危険な雰囲気になっているのかさっぱり理解できないまま提督は言葉を続ける。

提督「俺は誰一人として沈んでほしくない。より一層頑張ってほしいという思いと、何より純粋に喜んでくれるだろうと思ったからこそ卯月に渡そうと…」

時雨「あぁそう。てっきり歪んだ性癖からアレを選んだのかと思ったけど…。良かった、愛情で選んだわけじゃないんだね」

提督の言葉を聞き時雨がスッと立ち上がる。
真っ黒な目で提督を見つめていた時雨だったが、今度は嬉しそうに笑いかける。

時雨「だったらもう一度選び直そう?性能とかじゃなく提督の気持ちでさ。ちゃんと考えればアレ以外のもっとふさわしい娘がいるはずだよ?」

夕立「はいはいはい!!!夕立!夕立欲しいっぽい!」

卯月が指輪を渡されて以降、まるで猟犬が兎を狙うかのごとく燃えるような赤い瞳で卯月を睨み付けていた夕立だが、時雨の提案を聞き勢いよく手を上げる。

時雨「…『ぽい』程度の曖昧な気持ちなら黙っててくれないかな?」

夕立「…は?」

時雨が横槍をいれると夕立も反応し、二人の間にピリピリとした空気が張り詰める。駆逐艦の中でも最高位の火力を誇る二人が発する殺気はすでに駆逐艦のソレではない。

初雪「もぅ無理、耐えらんない…」

もし視覚化できれば有刺鉄線が張り巡らされているであろう空間の中、極度の緊張に耐え切れず机の隅で初雪がビタビタとリバースする。
他のメンバーもフォローできる余裕はなく、一触即発の空気にオロオロするばかり。
幼い駆逐艦の面々は怯えきり目に涙を貯めながら小さくなって震え、普段は飄々とした態度の北上や望月でさえ「ヤバい」と感じ緊張した面持ちで押し黙っている。
提督「皆言いたいことがあると思うが…」

どうにかして場を収めようと提督が言葉を発するが、横にいた大淀がそれを制す。

大淀「今はお止めください。すでに提督が一言二言理由を言った所で皆さん納得しないでしょう。提督なりのお考えがあったのでしょうが、今回の発表はタイミング、相手共に最悪だったと言わざるを得ません」

提督「いや、俺はみんなの事を大切に…」
大淀「今は」

大淀は静かに、しかし有無を言わせぬ口調で言葉を遮る。

大淀「そのような言葉はあの娘たちの不満を煽るだけです。皆さんが落ち着くためにも一度時間を置く必要があります。事の張本人がいたままでは静かになりません

提督「…」

武蔵「一旦解散にした方がいいだろう。放っておくと殺し合いに発展しかねん」

長門「同感だな。提督の発言一つで鎮守府崩壊など洒落にならん」

このままでは一層泥沼化する。そう判断した大戦艦の面々もなんとかこの状況を打開しようと出てきてくれる。

大和「皆さん、各々の思いがおありでしょうがこの場は抑えてください。一度頭を冷やしてから改めて話し合いましょう。提督もそれでよろしいですね?」

提督「う、む…」

大和の言葉が収束宣言となり殺気立っていた面々も一応は沈静化する。
こうして、燻る種火を残したままとりあえず新システムの説明は終わりを迎えた。

・・・・・
・・・・
・・・
・・

霞「ったく、どんな判断してんのよ、本当に迷惑だわ!」

日付を跨いだ深夜2時。肩を怒らせながら霞は提督の私室へと向かっていた。
ケッコンカッコカリの発表から半日以上がたっている。
事態を重く見た大淀の提案により提督への接触禁止令が下され『ケッコンカッコカリの話については一晩間を置いてから』ということになったのだ。
しかし夜が明けるまで我慢できず、霞は同室の娘らが寝静まったのを確認すると寮を抜け出してきた。
爆発しそうな激情がありながらそれでも全体の場では発言するのを抑えた霞。あまりのことに言葉が出なかったというのもあるが。

霞「あんな大騒ぎ起こして、私が一番にとっちめてやるったら!」

言いたいことは色々あるが、最も癪に障ったのはなぜ自分に相談してこなかったかということだ。
指輪を渡すってのは夫婦になるってことでしょう!?自分を選ばないにしてもそんな大事なこと私に相談せずに決めちゃダメじゃない!

…いや、やっぱり他の娘じゃダメだ。あんなだらしない奴の面倒見れるのなんて私以外にいるわけない。あいつには私しかいないって思い直させてやるんだから!
霞「入るわよ!クズ司れ…」

提督の部屋の前まで来た霞はノックも無しに扉を

異変に気付く。
怒鳴り込んでやると意気込み扉を開けようとしたが、手をかけようとしたはずの部屋のドアノブが無くなっている。
それは普通では壊れようのない、力まかせにもぎ取られたかのようなあまりにも雑な壊れ方だった。

霞「ッッッ!!!」

すでに施錠の用をなしていない扉を蹴破るとそこにいるべきはずの人物はおらず、家主がいなくなった空っぽの部屋だけが残されていた。

霞「どこに…行ったのよ」

頭がガンガンするような悪い予感に霞はただ立ち尽くすしかなかった。

ずっと見てたのに、そんな素振りはなかったのに。なんで突然、ソレがあるなら私にだと思っていたのに。
カメラに収められた沢山の思い出。彼との出来事を写真に写しいろんな表情を保存した。
凛々しい顔、怒った顔、悩む姿、お茶目な表情、優しい笑顔。どれも素敵で大切な思い出だけど、『私だけ』の特別はない。
私が見れない、私には向けられない、私では知り得ない特別な表情を、私以外の誰かが知ることになる?
慈しみと愛情のこもった幸せそうな顔を?
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌ダ嫌ダ嫌ダ嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌
私以外じゃヤダ、その顔を他の娘に向けないで。私に向けて私を見て私を愛して。
駄目だ、気持ちを抑えられない、壊れてしまう、早く、早く、司令官に話を聞いてもらわないと、早く、早く。

…なんだ、なんでお前がいる。あの人をどこへやった。答えろ、早く、早く!
青葉「司令官はどこですか…?」ガシャ

霞「ちょっと落ち着きなさい!私も今来たばかりで…ッ!艤装なんか展開してなにする気!?一旦話を…」

ここにいると危ないわよ、みんながあなたを狙ってる。そうだ良い隠れ家があるの、ついてきてちょうだい。他の娘たちじゃ手を出せない潜水艦だけの安全な秘密の場所があってね…
168「あはっ…あはははははははははははははははは!!!!!!」

168「やったわ!司令官からの指輪、私がもらったわ!」

所々が赤黒く変色した指輪を見つめ、嬉しそうにうっとりと168が笑う。

168「あぁ素敵、なんて綺麗なのかしら…。私これでもっと頑張れるわ。司令官見、見ててよね」

離れ小島の隠れ家から168が出てくる。軽やかな足取りで鎮守府に戻ろうとする168だったが、別の人影がそれを呼び止める。

鈴谷「容疑者はっけーん。いっけないんだー仲間を手にかけるとかさー」

168「…なんであなたがここにいるの?アイツを連れてくるときに追手には気を付けていたんだけど」

鈴谷「私もアイツを探してたらさ、あんたが連れ出したっていうじゃん?潜水艦の娘たちがさ、私に泣きついて来たんだよ『あんたを止めて』って」

168「…そう」

発表時は暗い表情をしていた168だが、夜になってから一転、明るい表情になりルンルン気分で出て行こうとした所、他の潜水艦仲間たちに止められたのだ。なにをする気だ、そんな状態で外に行かせられない、と。
表情は良くなっても纏うオーラは恐ろしさを孕んだままだったからである。
しかし168が聞くはずもなく、止めるなら す。勝手に出て行った事を話しても すと告げ、寮を抜け出してきた。

鈴谷「仲間の忠告無視して脅して黙らせるとか薄情な奴だよねー」

鈴谷「でも良かったー最初に見つけたのが鈴谷で。これで反逆者を沈めた私は褒めてもらって指輪も取り戻して円満解決だよね」

168「…なんで指輪を持ってるのを知ってるの?」

鈴谷「だって見てたからね。千切るトコ」

あぁそうかと納得する。こいつは見ていた、私がアイツから指輪を奪う現場を。そもそも『私も探していた』と言っていた。こいつも私と同じことを考えていたのだ。
だからわかった上であえて助けず黙って見ていた。効率よく邪魔者を消し自分だけが手柄を手にするために。
せっかく手に入れたんだ、絶対に渡すものかこんなズルい奴に。私が、司令官と結ばれるんだ。

168「あなた(重巡)が私(潜水艦)に勝てると思ってるの…?」

明確な殺意を向け168が魚雷を構える。
鈴谷は魚雷に備え腰を低く落としつつ馬鹿にしたように言葉を返す。

鈴谷「はっ、あんたの頭って浮力調節のウキかなにか?海ばっか潜ってないでちゃんと勉強しときなよ」

カタパルトを構え戦闘態勢に入った鈴谷が呟く。
鈴谷「私は航巡だよ、バーカ」

夕立「…時雨、こんな時間にどこ行くの?」

時雨「夕立こそそんな怖い顔してどうしたのさ」

深夜の駆逐寮、誰もいない静まり返った廊下で猟犬を思わせる金髪の少女と魔犬を思わせる黒髪の少女が対峙している。

夕立「なんか鎮守府全体がピリピリしてて眠れなかったっぽい。そしたら時雨が部屋から出て行くのがわかったからついて来たの」

時雨「僕は今から提督にケッコンカッコカリのことで直談判しに行こうと思ってさ。やっぱり指輪をもらうべきは僕だと思うんだよね」

夕立「お話するのは明日になってからって大淀さん言ってたっぽい」

時雨「そうだよ?だから日付が変わってから来たんじゃないか」

夕立「こんな夜遅くに?提督さんだってもう寝てるっぽい」

時雨「すぐに話がしたかったからね。叩き起こしてでも話を聞いてもらうさ」

夕立「…お話しするのにロープがいるの?」

時雨「はぁ、五月蠅いなぁ…」

しつこく足止めをする夕立に苛立ち、時雨は声色に剣呑な雰囲気を滲ませる。

時雨「僕さ、ほんとは夕立が提督に甘えてるのすっごい嫌だったんだよ?提督の迷惑も考えずにベタベタベタ…。何度引き剥がそうと思ったことか」

夕立「私は時雨のこと嫌いじゃないよ。でも提督さんにヒドイことするなら力ずくでも止めるっぽい」

時雨「犬なら犬らしく立場をわきまえなよ。指輪が欲しいなんて言わなきゃ提督のペット扱いくらいで認めてあげるからさ」

夕立「私は犬じゃない!」

バキバキと牙を剥き出し夕立が吠える。
獣のように姿勢を低くすると最早問答は無用とばかりに赤い瞳を見開き飛び掛かかる。
時雨も半身を捻った徒手空拳の構えを取り迎え撃つ。

時雨「躾けてあげるよ、この雌犬…っ」

夕立「ソロモンの悪夢見せてあげる…っ」
深夜の駆逐寮、誰もいない静まり返った廊下で狂犬二頭の争いの火蓋が切って落とされた。

榛名「提督、綺麗な朝焼けですね」

広い海原の上、小さなボートに乗った人影が優しく語りかけるように言葉を発している。

榛名「いきなり連れ出してしまい申し訳ありません。さぞ驚かれたことでしょう」

榛名「でも提督も悪いんですよ?榛名の気持ちを弄んで卯月さんに指輪を渡したりして…」

榛名「悲しかったんですよ?思い余って実力行使をしてしまうくらいに…」

榛名「二人きりです…。もう今までのように周りに遠慮する必要はないです…。これからは、ずっと、二人で…」

鳳翔「見つけましたよ、榛名さん」

榛名「…」

静寂を破り鳳翔の声が響く。

薄暗い朝焼けの中、ボートの周りに鳳翔をはじめとした空母勢が集まり周りを包囲をする。

複数の艦娘と提督の行方不明が発覚した後、ただちに捜索隊が組まれ索敵に優れる艦娘が観測機・艦戦機を総動員して付近の海域を探していた。

赤城「どこに行くつもりだったか存じませんがもう逃げられませんよ。提督はどこに?」

榛名のことももちろん探していたが最優先の捜索対象は彼女ではない。
艦娘一人脱走するのと司令官たる提督の失踪では重要度がまったく違ってくる。

追い詰められた榛名は、しかしゆっくりと笑う。
榛名「提督なら、ここに、おられるじゃないですか…」

一瞬にして不吉な予感が空母たちを包む。
だってそのボートは一人用で。
二人も乗れるスペースは無くて。

翔鶴「まさか…」

鳳翔「あぁ、なんてこと…」

口を押さえヘナヘナと膝を折る鳳翔。

提督「いや、生きているよ」

榛名「あっ、なんで出てきてしまうんですかっ」

榛名に組み敷かれていた提督がむくりと体を起こす。
提督は一人用のスペースに無理やり押し込まれ榛名の尻に敷かれていたようだが目立った外傷は見られない。
頭と胴体は問題なくくっついているようだ。

提督の姿を確認し心底ホッとしたように鳳翔が胸を撫で下ろす。

鳳翔「よかった…ご無事でしたか…」

榛名「せっかく二人になれたのです。もう誰にも邪魔はさせません!」

加賀「あなたの気持ちはわからないではないけど、これは許されない事よ。素直に投降なさい」

榛名「嫌…嫌っ…」

必死の表情で榛名は提督を胸にかき抱く。
提督は難しそうな顔でしばらく瞑目した後静かに、しかしはっきりと通る声で指示を出す。

提督「お願いがある、鳳翔」

提督「悪いが榛名を止めてやってくれ。俺ごとでいいから」

榛名「!」

鳳翔「な、なんてことを…!できるわけが…」

瑞鶴「オッケー、了解」

鳳翔「ちょっ、瑞鶴ちゃん!」

狼狽える鳳翔を意に介さず瑞鶴が弓を構える。

瑞鶴「お母さん泣かせて鎮守府もこれだけ大騒ぎにして、二人とも一回死んで反省しなさい!」

赤城「同感です」

加賀「やりましょう」

翔鶴「仕方ないですね」

他の面々も同じように二人に向けて弓を構える。

榛名「させません!」

艤装を展開し迎撃しようとする榛名だったが、その眼前に提督が立ちはだかる。

榛名「て、提督!危険です!退いてください!」

砲身を自分の体に押し当てそのまま動こうとしない提督は静かに榛名に言う。

提督「榛名に連れ回されている間色々考えていたよ。やはり今回の騒動はの原因は俺にある。皆の気持ちをないがしろにした、全ては俺の鈍感さが招いたことだ。良かれと思って行動したことがみな裏目に出てしまった、申し訳ない。」

榛名「提督…」

提督「まぁ、なんだ」

キイィィィィン、と艦爆隊の急降下爆撃の音が迫る。

提督「とりあえず、一緒に罰を受けよう」

榛名「そんな…あっ艦爆が…」

提督が申し訳なさそうに笑う。
ドオオオォォォン という爆発音が響いた後、一本のきのこ雲が海上に立ち上った。

・・・・
・・・
・・

隼鷹「嫌な、事件だったね…」

眼下に海の広がる見晴らしのいい高台。目の前の大小の墓石に酒をかけながら隼鷹は語りかける。

隼鷹「あれからしばらく経つけど、鎮守府もようやく落ち着きを取り戻してきたよ…」

隼鷹「卯月や他の奴らもやっと回収できた…。前ほど騒がしくないけどここにみんなといれば寂しくないだろう?」

隼鷹「なぁに…、時間が経てばまたみんな元通りになるさ…」

隼鷹「だから安心して休みな…。大丈夫あんたがいなくても上手くやってくよ…」

物憂げに遠くを見つめながら隼鷹は静かに酒を含

飛鷹「コラ」

ごつん、と拳骨が降ってくる。

隼鷹「いってぇ」

飛鷹「勝手に提督殺さないでよ。それ墓石でもなんでもないし」

隼鷹「あひゃひゃひゃwwwいやー一歩間違ったらこうなってたかもなぁって思ってよwww」

眼下に海の広がる見晴らしのいい高台。弔いなどではなく、いつも通りに軽空母の酒飲み達が集まって飲んでいる。

千歳「まったく、冗談が過ぎるわよ」

千代田「それで冗談元のミイラ提督はどうしてるの?」

飛鷹「今日から復帰ですって。あの○々雄真ばりの怪我からたいした回復力ね」

隼鷹「おー、じゃあまた修羅場の再開かなwww」

千歳「もうそうはならないでしょ。あれからちゃんと話し合ったみたいだしね…」

・・・・・
・・・・
・・・
・・

⇒執務室

鳳翔「提督、お茶をお持ちしました。…傷の具合はいかがです?」

提督「ありがとう鳳翔さん。まだ少し痛みますが執務に影響はありませんよ」

榛名「怪我をさせてしまったのは榛名のせいなのですからなんでも仰ってください。…命じて頂ければお下のお世話だって…あたっ」

鳳翔「ダメですよ。また暴走されては困ります」

榛名「ちょっとした冗談じゃないですか」

鳳翔「目が本気でしたよ?」

あの後、二人まとめて爆撃されボロボロになった提督と榛名は鎮守府に連れ戻された。
大破状態で浮かんでいた鈴谷と168も、潜水艦の隠れ家で伸びていた卯月も捜索隊に発見され、鎮守府内で起こった二つの戦闘もしばらくしてから駆けつけた戦艦勢が(物理的に)仲裁したことで終焉を迎えた。
一連の騒ぎは本営に知られれば軍法会議モノの大事件だが、提督はこれを公表することを禁止。『全ては自分の不徳が引き起こしたこと』としてもみ消した。

高速修復材を使えばすぐさま回復する艦娘と違い、提督はしばらくの入院を余儀なくされたが幸いにも一週間程度で済んだ。
提督の退院に合わせて問題を起こした艦娘達の謹慎も解かれ、ようやくいつも通りの日常が戻ってきた。

提督「ふぅ、しかし書類が多いな。大淀がやってくれていたとはいえ事務処理が溜まってしまっている。さて期日までに終わるか…」

霞「私だって手伝ってあげるんだから、この程度で泣き言言ってんじゃないわよ」

青葉「司令官、私も手伝っちゃいますよ!」

提督「あぁ、二人とも助かるよ」

霞、青葉も執務室にやってくる。提督の復帰を聞き手伝いに来てくれたのだ。

鳳翔「あら、青葉さんも霞ちゃんももう出てきていいの?」

青葉「てへへ…ちゃあんと反省しましたよぉ。あの時はどうにかしてました。今はもう大丈夫ですよ」

霞「私は別に謹慎食らってないわよ。まぁ青葉も反省してるようだし私は気にしてないわ」

提督「霞は小さいのに大人だな」

霞「はぁ!?なに言ってんのよ、そんなんじゃないったら!」

青葉「もー、照れなくてもいいんですよぉー?これからはもっと素直にならないと負けてしまいますよぉ?」

霞「…まだ反省が足りてないようね?」

青葉「あわわわ…」

提督「やめなさい。執務室をオープンオフィスにするつもりか」

がやがやしだした執務室にさらに別の娘もやってくる。

夕立「提督さん、今日から復活っぽい?」

時雨「やぁ提督。包帯姿も格好いいね」

提督「手伝いに来てくれたのか、ありがとうな。二人一緒に来たということはもう仲直りしたのかい?」

夕立「うん、もう仲直りしたっぽい。久しぶりに時雨と思いっきりケンカしてスッキリしたっぽい!」

時雨「はぁ、まったく夕立には敵わないなぁ」

夕立と時雨も執務室に入る。
あの夜駆逐寮を半壊させた二人だったが、元々仲の良い二人。今は仲直りし元の関係に戻っている。

夕立「時雨とっても強かったのよ?時雨の真剣な気持ちビシバシ感じたっぽい」

時雨「夕立の想いもちゃんと伝わったよ。もう余計なことを言って喧嘩したりなんかしないさ。それに今は同じ仲間だし、ね」

夕立「時雨も羨ましかったのよね。これからは遠慮しないで一緒に甘えるっぽい!」

時雨「ふふっ、そうだね。そうさせてもらうよ」

提督「いや、少しは遠慮もだな…」
より騒がしさを増す執務室にさらに艦娘が追加される。

鈴谷「ちーっす提督。復活したんだって?お疲れー」

168「よかった司令官元気になって。今日からまたよろしくね」

提督「ありがとう、またよろしく頼むよ。二人ともあれからもう喧嘩はしてないな?」

鈴谷「へへへ、もう大丈夫だし。ねーイムヤ?」

168「ええ、もういつも通りよ。司令官心配かけたわね」

事件が終わった後一番ギスギスしていたのがこの二人だった。
しかししこりを残しつつ、なんとかお互いに折り合いをつけ生活できている。

提督「二人とも無事で良かったよ。海戦でもない俺が原因のいざこざで沈んだとなれば俺も死んでも死に切れん」

鈴谷(あそこで当ててれば…)

168(生意気に晴嵐なんて装備して…)

提督「ん、何か言ったか?」

鈴谷「べっつにー?」

168「なんでもないわ」
あくまで表面上は、だが。

騒がしいいつも通りの日常。
だが今まで通りではない。
以前と同じような日常に戻りつつ、しかし同時に大きな変化を迎えていた。

鳳翔「あまりご無理はなさらないで下さいね」

提督「ええ、心配してくれてありがとうございます」

鳳翔「いえ…。『妻として』当然です」

提督「はは…、あなたに言われるとドキッとしてしまいます。やっぱりまだ馴れませんね…」

霞「ニヤニヤしてんじゃないわよこのクズ!鳳翔だけじゃないんだから!」

青葉「私たちだって…司令官のお嫁さんですからねっ」

時雨「僕もだよ」

夕立「ぽいっ!」

鈴谷「鈴谷も」

168「私もよ」

榛名「はい、一夫多妻でも榛名は大丈夫です」

提督「あぁもちろんみんな俺の大切な奥さんだ」

あの事件後、大本営から追加の通達があった。
それによると指輪は一つだけではなく追加して購入することができ、複数の艦娘と絆を結ぶことができるということだった。
同時に、提督が『男が女に指輪を渡すということの意味』を理解したことで、指輪の価値が単なるパワーアップアイテムだけでなく、艦娘達が望んでいた夫婦の証という意味も持つようになった。
提督も騒動の原因が艦娘達の恋慕であったとわかり、この件に関わった艦娘達、つまり提督に想いを寄せていた彼女らに指輪を渡すことに決めたのだ。

提督「正直まだ信じられない。この俺がカッコカリとはいえ複数の嫁を貰っただなんて…。そもそもお前たちが本気で俺を好いてくれていたなどとは夢にも思わなかった」

霞「あれだけの騒ぎにしといてまだ自覚できないの?このクズ!ち、ちなみに私はしょうがなく受け取っただけなんだからね!」

夕立「提督さんはね、ホントはみんなからモテモテだったっぽい」

鈴谷「罪な男だよねー。こんな沢山の美女を侍らせてさー。このこのー」

榛名「今後はご自身の言葉がどういう影響力を持つのかちゃんと考えてから仰って下さいね?」

168「今いるメンバーについてはもう諦めたけど、これ以上他の娘をその気にさせたら承知しないんだから」

提督「以前は皆が真剣に受け止めないだろうと思っていたから格好つけたセリフも言えたが、今はもう簡単には言えないよ…」

時雨「そうそう。甘い睦言は僕たちに向けて、ね?」

青葉「ちゃーんと自覚して下さいねぇ、このスケコマシ!」

霞「まったく。この女たらし、種馬、クズ!」

提督「…ケッコンしても変わらないな、霞は」

つくづく自分は女性の気持ちに疎いと思い知らされる。
大切にしようと気を使ってきたつもりだったが、あわや仲間割れで艦娘達を轟沈させそうな事態になりようやく過ちに気付くことができた。自分だって彼女達から大切に思われていたのだ、それこそ殺し合うほどに。
自分が大切にする側だとばかり思っていたがそうではなかった。これからは自分を想ってくれる人がいることをちゃんと自覚しながらやっていこう。今度こそ彼女らの気持ちを裏切らないように。みんなで幸せな終戦を迎えらえるように。
でも鈍感な自分はまた見当違いな間違いをしてしまうかも知れない。
だが今度はきっと大丈夫だと思える。なにせ自分には愛しい九人もの妻がいるのだから…。

提督「みんな、こんな鈍感な夫で申し訳ないが改めてよろしく頼みます」ぺこり

鳳翔「こちらこそ」

榛名「ええ、榛名でいいなら」

青葉「恐縮です!」

鈴谷「よろしくね!」

時雨「僕はいつでも一緒にいるよ」

夕立「夕立もずーっと一緒よ!」

霞「しょうがないわね」

168「私のことちゃんと愛してよね」

卯月「でも一番はうーちゃんだぴょん!」バァァァァン!!!!

弥生「やめて!なんでわざわざ乱入するの!?」

鳳翔榛名鈴谷時雨夕立霞168青葉

「 は ? 」

卯月「ぴゃあぁぁぁ…」

提督「(あ、早速ダメかも知れない…)」

お付き合いありがとうございました。
鈍感だった提督がちょっとだけ聡くなるお話でしたとさ。

最後にもうちょっとだけ後日談を追加します。

弥生「良かった…殺されなくて…本当に」

卯月「も~、弥生ったら心配しすぎ~」

弥生「なんでケッコン艦が揃ってるあの場であんなこと言うの…」

卯月「うーちゃんだってお嫁さんだぴょん!一番最初の『せーさい』?だぴょん!」

弥生「前にイムヤさんに襲われたこと忘れたの?あの夜少し目を離した隙に急にどこか行っちゃって、食堂で騒いでた人たちもいないって聞いて…。もう絶対ダメだと思ったのに…」

卯月「まぁ確かにあれは怖かったぴょん…」
・・・・・
・・・・
・・・
・・

回想
168『ついたわ…ここがわたしたちのひみつきちよ』

卯月『おぁ~すごいぴょん。確かにここなら見つからなさそうだぴょん』

168『…』

卯月『でも困った話だぴょん!なんでうーちゃんがみんなから狙われないといけないぴょん!ぷんぷん!』

168『…ねぇ、たすけてあげたおれいに、ひとつおねがいがあるの』

卯月『なんだぴょん?』

168『あなたのゆびわ、ちょうだい?』

卯月『なんでだぴょん?これはうーちゃんが提督から貰っ…』

168『ちょうだい?』

卯月『い、嫌だぴ…』

168『ちょうだい?』

卯月『ぴ』

168『 ち ょ う だ い ?』

卯月『うびゃぁぁぁ…』

卯月「その後渡そうとしたけどなかなか外れなくって、イライラしたイムヤに指の肉ごと引き千切られたぴょん…」

168「あの時は本当にごめんなさい。無理やりじゃなくて外れるまで待つべきだったわ」

卯月「!?」ビクッ

弥生「そういう問題じゃ…」

卯月「も、もういいぴょん。うーちゃんは心が広いから特別に許してあげるぴょん!えっへん!」

168「ふふっ、ありがとう」

鈴谷「私もごめんねー。あん時は余裕なくってさー」

168「…大丈夫、もう気にしてないわ」

鈴谷「いやーほんと悪かったねー。ま、これからはお互い提督の奥さんとして仲良くやってこうよ」

168「…そうね」

鈴谷(情緒不安定の○チガイが…)

168(卑怯者の○ッチめ…)

卯月「二人ともなに怖い顔してるぴょん?ケンカしちゃ嫌だぴょん。ホラホラ笑って~?せーの、ぷっぷくぷぅ~www」
鈴谷・168
「…チッ」
弥生「あああぁぁぁ…」
提督は変わっても卯月はなかなか変わらないようである…
これで本当に最後です。ありがとうございました。
元スレ:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1474880611/

-榛名, 鳳翔, 青葉, 大淀, 時雨, 夕立