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川内

【艦隊これくしょんSS】提督「ゲームをしよう」川内「ゲーム?」

2016/12/24

提督「最近、お前が夜五月蠅いっていう苦情が増えてな」

川内「だって、提督が夜戦に連れてってくれないんだもん」

提督「資材とか色々事情があるんだよ。で、お前は夜戦を諦める気はないんだろ?」

川内「もっちろん!」

提督「というわけで、ゲームをしよう」

提督「俺が勝ったら、夜戦を諦めろ………とまでは言わないが、他の人に迷惑がかからないようにすること」

川内「私が勝ったら?」

提督「夜戦に連れってやろう」

川内「本当!?」

提督「ああ。その代り、お前が負けたらちゃんと守れよ?」

川内「分かってるって!提督が勝ったら、夜静かにする。私が勝ったら、提督が私のお願いを聞く。こういうことでしょ?」

提督「そういうことだ」

川内「で、何のゲームをするの?」

提督「何、一瞬で終わる簡単なものさ」スッ

川内「トランプってことは、ポーカーとか?」

提督「いや、それよりもっと単純だ」

提督「俺が引いたカードが、スペードのAかどうか。簡単な二択だよ」

川内「それ全部がスペードのAとかはやめてよ?」

提督「心配するな、新品だ」

川内「ならいいよ!早くやろ!」

提督「なんだ?自身満々だな」

川内「まーねっ!」

提督「手加減はしないぞ?」

川内「当然でしょ!」

提督「じゃあ、やろうか」

 そう言って俺は封を切り、箱を開け、山をそのまま出す。
 そして、その山の一番下のカードを引いた。

提督「さあ、これはスペードのAかどうか。どっちに賭ける?」

川内「ふぅん……シャッフルはしないんだね~」

 『お前の企みは全て分かっている』とでも言いたげな表情を浮かべる川内。
 それに対してこちらは視線を落とし、黙り、焦る―――――そういう風に見せる。

提督(あの様子じゃ、新品のトランプの初期位置については知ってるかな。まあ、知ってても知らなくてもとる行動は一緒だろう)

 このゲームはただの運勝負じゃない。
 新品のトランプの初期配置は大体決まっていて、スペードのAは一番下にある。
 スペードのAを取る確率なんて、普通に考えれば52分の1、約1.92%。
 しかし、それが新品のトランプだった場合は全く異なり、100%に変わる。

提督(—――――と思ってるんだろうなぁ)

 そう思いながら、引いたカード―――ジョーカーをチラリとみる。
 そう、確かに新品のトランプでスペードのAは一番下にある。
 ただ、それはあくまでジョーカーを抜いた場合の話だ。

提督(俺は一言もジョーカーを抜くなんて言ってないし、実際に抜かなかった)

提督(俺の勝率は一見1.92%、だがドランプが新品ならば俺は100%スペードのAを引ける。それに気づいたからこそ、シャッフルについて言及したんだろう。そして、それに俺は焦る演技で応えた。これで川内は俺のカードがスペードのAだと信じて疑わないだろうな)

提督(ふふっ、川内の悔しがる顔が楽しみだ………)

川内「……うん、決めたよ」

提督「……………どっちだ?」

 緊張しているように見せながら、それに応じる。
 表面上はそう取り繕いながらも、内心は川内に言う決め台詞を考える。

川内「提督の持ってるカードは―――――」

提督(川内には悪いが、ここはかっこつけさせてもらおう)

川内「—――――スペードのAじゃない!」

提督(………………………………………は?)

 我ながらよく声に出さなかったと思う。
 この時点ではまだ川内のブラフの可能性もあるため、演技を継続して応える。

提督「それで、いいのか?」

川内「もちろん!」

 ……暗に『このままだと俺が勝つぞ』というニュアンスを込めた一言も、笑顔で返されてしまった。

川内「で、答えは?」

 そう急かされて、おずおずと手に持つジョーカーを机に置いた。

川内「ジョーカー……ってことは、私の勝ちだねっ!」

 笑顔で勝ちを喜ぶ川内。
 対照的に、俺は放心状態と言っても過言ではなかった。

提督「……………理由を聞いてもいいか?」

川内「ん?理由?そんなの……………」

提督「……そんなの?」

川内「秘密!」

提督「なっ!?……………どうしても?」

川内「どうしても」

 川内に一泡吹かせてやろうと思って考え、自身があったゲームを破られたのみならず、その理由も分からないまま………
 控えめに言って、ちょっと泣きそうになった。

川内「ねえ、提督。私が勝ったんだから、約束守ってくれるんだよね?」

提督「ああ……夜戦だったな。理由が気になるところだが、負けは負けだ。じゃあ、明日にでも艦隊を組んで―――――」

川内「え、何言ってるの?」

 キョトンとした顔で尋ねる川内。

提督「え?何って、賭けで」

川内「私は『提督が私のお願いを聞く』としか言ってないよ?」

 そう言われて、ゲーム開始前のやり取りを思い出す。

提督『俺が勝ったら、夜戦を諦めろ………とまでは言わないが、他の人に迷惑がかからないようにすること』

川内『私が勝ったら?』

提督『夜戦に連れってやろう』

川内『本当!?』

提督「ああ。その代り、お前が負けたらちゃんと守れよ?』

川内『分かってるって!提督が勝ったら、夜静かにする。私が勝ったら、提督が私のお願いを聞く。こういうこと?』

提督『そういうことだ』

提督「なぁっ!?だ、だが俺が『夜戦に連れってってやる』って言った時喜んだだろ!?」

川内「確かに喜んだけど、賭けの内容はその後きちんと決めたよね?」

提督「ぐっ………」

 やられた。
 自分から心理戦を仕掛けておいて、最初—――ゲームを開始する前から駆け引きで負けていた。
 これは完敗だ………と、川内の要求を聞こうとして気づく。
 夜戦じゃないなら、川内は何を頼むんだ?

 
 提督として情けないことだが、正直全く予想出来ない。
 秘書艦である川内とは普段から一緒にいるが、考えてみれば夜戦以外で頼み事をされたことは無かった。
 川内は夜戦、夜戦と五月蠅いから勘違いされがちだが、その一点を除けば文句なしに優秀なのだ。
 戦闘面、指導、書類仕事、家事に至るまでさらりとこなす。
 基本的に一人で大抵のことをこなせる川内だからこそ、俺に頼み事ということはあまりなかった。

提督(結果だけ見れば、良かったのかもな)

 艦娘のわがままを聞くのも提督の仕事。
 いつも頑張ってくれている川内の頼みなら、何でも聞いてやろう―――――

川内「それじゃ―――――」

提督「……で、これはどういうことだ?」

川内「あれ、気持ちよくなかった?」

提督「いや、確かに柔らくて気持ちいいが………なんで、俺は膝枕されてるんだ?」

川内「お願い、聞いてくれるんでしょ?」

提督「いや、まあそうなんだが……こんなことでいいのか?」

川内「まあね。最初はこんなものでしょ」

提督「最初?……お前次も勝つつもりか?今度は絶対に俺が」

川内「提督、何言ってるの?最初のお願いって意味だよ?」

提督「え」

川内「だって、私お願いの数の指定しなかったでしょ?」

提督「」

川内「だから、最初は軽めでね♪」

…………………………………

川内「あ~っ、もうちょっと強くてもいいかも………んっ、そんな感じ~」

提督「……マッサージなら、俺より明石の方が上手いと思うんだが………」

川内「ん~?私はこっちの方が好きかな~」

提督「まあ、これくらいならいつでもやってあげるけどさ」

川内「あ、言ったね?」

提督「……仕事に支障が出ない程度で頼む」

…………………………………

川内「あ~んっ………美味しい~!流石間宮さんのアイスだね!」

提督「……お前が軽巡で良かったよ」

川内「あはは、まあ空母とか戦艦の人達だったらどうなるかは………うん、簡単に想像できるね」

提督「そうだろ?多分……いや、確実に俺の財布が死ぬ」

川内「だろうね~で、提督が食べないのもそういう理由?」

提督「いや、ただ単に今はそんな気分じゃないってだけだ」

川内「そうなの?こんなに美味しいのに」パクッ

川内「……………」

川内「……ねぇ、提督も一口食べれば?」

提督「俺はいいよ」

川内「まーまー、そういわずにさ」ズイッ

提督「んー……じゃ、一口貰うよ」パクッ

川内「美味しいでしょ?」

提督「うん、美味いな」

川内「そっか」パクッ

川内「………さっきより、美味しくなったかも」

提督「なんで?」

川内「……さあ、なんでだろ?」

提督「あ、なるほど」

川内「分かったの?」

提督「一人で食べるより、二人で食べた方が美味しくなるってやつだろ?それじゃ、俺も何か頼んどけばよかったかな」

川内「……そうだねー」

…………………………………

川内「提督、夜戦しよっ!」

提督「……まあ、数の指定なしって言われた時からいつかくるとは思ってたよ。明日でいいか?」

川内「そっちじゃなくて、二人で出来る方!」

提督「ああ、そっちな。じゃ、風呂入ったら俺の部屋で」

川内「うん!」

川内「んっ……あっ!ダメっ!!」

川内「提督っ!もっ………もうやめっ……………!」

提督「駄目だ」

川内「ちょっ、まっ…………ああっ!!」

川内「くそー、また負けたぁー!!」

提督「はっはっは、テレビゲームなら負けんぞ!」

川内「やってる年数が違うもんね~……ね、もう一回しよ?」

提督「いいぞ………って、あ、もうすぐアニメ始まる」

川内「本当だ。じゃあ、終わってからね」

提督「りょーかい」

< トビラヒラケバ ネジレタヒルノヨル 川内「お、始まったね」 提督「うん、相変わらずかっこいいOPだな」 川内「だよね~」 ………………………………… 『恋愛はねぇ~、押して、押して、押しまくった方が勝つのよぉ~!!』 提督「いや~、こおろぎさんの声は素晴らしいな………中毒になりそうだ」 川内「……………」 ………………………………… < チョウテンペンチイミタイナキョウソウニモナレテ 提督「今回も凄い出来だったな!恋愛要素も強まって来たし、続きが待ち遠しいな!!」 川内「……………」 提督「……って、川内?どうしたんだ?」 川内「……………うん、決めた」 提督「決めた?何を?」 川内「提督さ、私がゲームに勝てた理由、知りたい?」 提督「ん?そりゃもちろん」 川内「……私が勝てたのはね、相手が提督だったからだよ」 提督「俺だったから?……あー、俺が心理戦に弱いってことか………」 川内「ううん、そうじゃなくて」 提督「え、違うのか?」 川内「……私はずっと提督のこと見てきたから。提督の考えならちょっとは分かるんだ」 提督「ああ、そういうことか。ま、川内は古参組で、ずっと秘書艦だしだしな」 川内「そうなんだけど、そういうことじゃなくて………」 提督「?」 川内「すー………はー…………よし」 川内「私は、提督の事が好きなんだ」 提督「え……?そ、それは上官として?この鎮守府で暮らす家族として?それとも」 川内「一人の男性として、好きなの」 提督「そう……なのか………」 川内「……………ごめんね、いきなりこんなこと言われても困るよね。その……返事は後ででもいいから」 提督「あー……うーん……………」 提督「……………頼みがある」 川内「なに?」 提督「今の告白、無かったことにしてくれないか?」 川内「っ!!」 川内「そ、そうだよね………本当、ごめんね……………」 提督「あぁっ、違うんだ!すまん、言い方が悪かった!!といっても、なんて言えばいいのか………」 提督「あー……とにかく、理由は聞かずにあと4日待ってくれないか?」 川内「………うん、分かった」 ―4日後― ―――――コンコン 川内「……提督、来たよ」 提督「ああ、入ってくれ」 ―――――ガチャ 提督「えーっと……まずは、待ってくれたお礼だな。ありがとう」 川内「ううん、いいよ。それで………」 提督「あー……そうだな……………」 提督「なあ、川内。俺がお前にゲームを持ち掛けた理由、分かるか?」 川内「そんなの、私が五月蠅かったからでしょ?」 提督「じゃあ聞くが、お前は賭けでもしないと騒ぐのをやめないのか?」 川内「そ、そんなの注意されれば控えるけど…………」 提督「だろ?別に苦情を解決するだけなら、お前に注意するだけでもよかったんだ。それでも、俺はお前にゲームを仕掛けた。その理由は―――――」 提督「—――――他でもない、お前と、一緒にいる時間を増やしたかったからだ」 川内「え…………」 提督「本当は今日、これが届き次第言おうと思ってたんだが……先を越されちまってな。待たせてすまなかった」パカッ 提督「川内、俺とケッコンしてくれ」 川内「……そっか……嫌われてるとかじゃ、なかったんだねっ…………!」 提督「俺の考え分かるんじゃなかったのか?嫌いなわけないだろ」 川内「うんっ………良かっ、たぁっ……………!」 提督「……それで、この指輪、受け取ってもらえるか?」 川内「もちろんっ!!」 ―――――――――――――――――――― ―――――――――――――――――― ―――――――――――――――― 提督「……………」 川内「どうしたの、提督?何か悩んでるの?」 提督「ああ……艦娘達から苦情が届いてな………」 川内「え?私最近そんな五月蠅かったかな?」 提督「いやー……そのー……………」 艦娘『提督と川内さんが夜五月蠅いです』 川内「……………」 提督「……………」 川内「……もうちょっと、控えめにしよっか///」 提督「……そうだな///」 提督「ゲームをしよう」川内「ゲーム?」 完 センダイ=チャン、カワイイヤッター! いかがでしたでしょうか?私は、ぬいぬいと同じくらい好きな川内が書けて満足しています。 それでなんですが、大井っちのスレでちょろっと言った短編(おまけ)集の需要ってありますか? 元スレ:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1431860695/

-川内