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加賀

【艦隊これくしょんSS】提督「鎮守府七不思議?」

2017/01/04

提督「時期が違うんじゃないか?」

加賀「幽霊に時期なんて関係ありませんから」

提督「って言ってもなぁ……そもそもそんな話俺は聞いたことがないし」

加賀「知らないのですか?駆逐艦の子たちの間ではとても有名な話です」

提督「駆逐艦ねぇ……それ以外の艦種は?」

加賀「……有名ですね」

提督「おい何故言葉に詰まった。そもそも駆逐艦の中で有名な話をなぜ知ってる」

加賀「偶然聞こえてきただけよ」

提督「いやいや……まぁいいか」
加賀「では早速調査を致しましょうか」

提督「えっもう寝るところなんだけど」

加賀「このままでは他の艦が怖がってしまって戦闘に支障が出てしまうわ」

提督「一緒に探すの俺じゃなくてもよくない?」

加賀「女性二人組でそういう怪奇現象を探し回るのは死亡フラグよ」

提督「死亡フラグって……ここ家なんだけど」

加賀「幽霊に場所なんて関係ないの。布団の中からすら襲い掛かってくることもあるのに……危機感が足りていませんね」

提督「あ、なんか悪い……」

加賀「わかればいいの。じゃあ行きましょう?」

提督「……なぁ、俺一つ知ってる怪奇現象あるんだけど」

加賀「なにかしら」

提督「夜中に下剤入りボーキサイト食べてトイレから一晩中聞こえてくる女のうめき声」

加賀「……後で叱っておくわ」
提督「で?」

加賀「で?とは?」

提督「肝心の七不思議の内容だよ。どんなものがあるんだ」

加賀「始めは『火の玉』です。主に食堂で報告があります」

提督「火の玉ねぇ……誰かが料理してたとかじゃないのか?」

加賀「火の玉自体の報告は稀ですが、同時にすすり泣く声があるというのが問題なのです」

提督「……まぁ火元があるのは危ないしちゃんと調べるか」

加賀「ええ」

提督「…………」

~食堂~

提督「おー暗いな」

加賀「早く電気を付けましょう」

提督「はいはい。えーっと確かスイッチはキッチン側に……」

「うう……ぐす……」

加賀「……提督」

提督「んあ?」

加賀「声が」

「ひぐっ……足りないよぉ……」

加賀「足りないって」

提督「……どっかで聞いたことある声だな」

「あ、ああ!!見つけたぁ!!ぎゃはははは!!うんまいいいい!!」ボオオオオ

加賀「火の玉が」

提督「……あれ玉って言うか人型じゃね?」
提督「ぽちっとな」

加賀「明かりが……」

「ヒャッハー!!酒だぁ!!」ボオオオオオ

加賀「……隼鷹?」

提督「やっぱりか……」

隼鷹「みりんもたっぷりあるじゃないか!!」ボオオオオオオ

加賀「あの、燃えているけれど」

提督(無言の油バシャー)

隼鷹「めけーも!!めけーもぉ!!」ゴォォォォォ

提督「最近調味料や酒類がなくなってると思ったらお前か!!何回目だこの野郎少しは頭冷やせ!!」

加賀「提督、冷えるどころか熱くなってます」

隼鷹「み、水……!!死ぬ……」

提督「その辺転がってりゃ消えるわ!!オラオラ!!」ガッガッ

隼鷹「痛い痛い!!やめておくれぇ!!」

加賀「はぁ……」

この後ちゃんと水かけて助けた
隼鷹「」ジュウウウウ

提督「ああスッキリした」

加賀「まさか火の玉が人体発火とはね……」

提督「人体発火ってそんな簡単に起こるものだっけ?」

加賀「艦娘は人体とは少し違った構造だから可能性はあるのではないかしら」

提督「なんか釈然としないな……で、次は?」

加賀「……隼鷹をドックに連れていくついでに『ドックから伸びる手』を調べましょう」

提督「ドックから……?普通トイレじゃないかそういうのは」

加賀「どうやら深夜にドック入りした子が湯につかる瞬間に足をつかまれるそうなの」

提督「ほう。そこはセオリー通りか」

加賀「それでなめ回す様に触られた後、『コレジャナイ……』と言って離すらしいわ」

提督「女の霊か……なんかまた嫌な予感が」

加賀「これでは安心して入渠もできません。即座に対応すべき事案かと」

提督「よしじゃあ行くか。よっこらせっ……うわ、焦げくさっ!酒くさっ!油でヌルヌルするっ!」

加賀(自分の部下はきちんと自分で背負う……いい鎮守府だわ、本当に)

~ドック~

加賀「照明が古いものだから薄暗いわ……」

提督「今度変えるように言っておかなきゃな」

加賀「それで、今回はどう調べるの?」

提督「ん?これをな……」

加賀「隼鷹を?」

提督「風呂に突っ込む」ドボーン

隼鷹「」

加賀「気絶しているところに水の中は不味いのでは……」

提督「大丈夫大丈夫ちゃんと足だけつかる様に支えて……ん?」

加賀「どうしました?」

提督「なんか引っ張られてるような……」

『チガウ……コレジャナイデチ……』

加賀「提督……!」
提督「一本釣りそぉい!!」

「わああああああああ(なのでちですって)!!」

隼鷹「」

加賀「この子たちは……」

提督「何やってんだ潜水艦ズ」

ゴーヤ「あ!提督でち!」

イク「提督みーっけ、なのね!」

ろー「提督、こんばんわですって!」

ゴーヤ「えへへ、ゴーヤの番で提督を見つけたからゴーヤの勝ちだね!」

イク「待つのね!提督はイクたちを釣り上げたからゴーヤが見つけたわけではないの!」
提督「なんだよ見つける見つけないって……」

ろー「えーっとぉ、ろーちゃんたちがお仕事の終わりに入渠するんだけどね?暇だから隠れて誰が他に入ってきたか予測して当ててみようって」

イク「水中だと気配は感じてもよく音が聞こえないから何となくで当てるしかないのね」

ゴーヤ「でも提督は男の人だからすぐわかったでち。まぁ入ってきたのは隼鷹さんだったけども……」

加賀「手触りでわかるものなの……?」

ろー「潜水艦だから水の中に入ってきてくれさえすればわかっちゃうんですって!」

提督「アホな事やってないで寝ろよ……大体仕事ならいつも夕方前には切り上げさせてるじゃないか。どうしてこんな時間に入渠を?」

ゴーヤ「昼は昼でイムヤやハチ、しおいが同じことしてるんでち」

イク「イク達は夜にやるって決めてるのね」

提督「……まるゆは?」

イク「すぐに入渠が終わっちゃうしそもそも長く潜れないのね……」
加賀「ところで貴方たちは自分が霊扱いされているというのは知っているの?」

ろー「ええー!!なにそれぇ!?」

ゴーヤ「ゴーヤたちまだ死んでないよぉ!」

イク「まさか幽体離脱なの!?」

提督「違うから。その様子だと自覚ないみたいだな……」

加賀「貴方たちの行いのせいで沢山の人が入渠を怖がってしまっているの。だからこんなことはもうやめなさい」

ゴーヤ「そんなことになってたんだ……了解でち」

ろー「じゃあその代わり今度提督も一緒に入りましょうって!」
提督「うーむ…………痛っ!?」

加賀「そんなこと許しませんよ。何のためにドックと男性湯船を分けていると思っているのですか」(腕抓り)

イク「イク達はオールオッケーなのね!」

提督「いやいや俺がオッケーじゃないから。さぁほら、早く寝なさい」

ろー「うー……残念」

ゴーヤ「ゴーヤたちはまだ入渠時間が終わってないからもう少しいるでち」

提督「ならついでにこれの面倒を頼む」

イク「隼鷹さん?わかったの!」

加賀「では次の場所へ行きましょう」

提督「おう。じゃあなみんな」

ゴーヤ・イク・ろー「「「おやすみなさーい!!」」」
加賀「次は『駆逐艦寮を覗く不気味な視線』です」

提督「待って、俺それもう既に原因見えたんだけど」

加賀「一応調べるべきではあります」

提督「あー……確かにとっ捕まえておくべきだな。よし行くぞ」

~駆逐艦寮~

提督「さて、犯人を捕まえるためにこれを使う」

加賀「何ですかそれ」

提督「駆逐艦の子が昔俺にくれたぬいぐるみ」

加賀「どうして持ち歩いてるの……」

提督「これ持ってるとやたら運気が上がるんだよ。さすが雪風だ」

加賀「ふぅん……」

提督「さてこれを駆逐艦寮の廊下に置いておく。あとは獲物がかかるのを待つだけだ」

加賀「時間がかかりそうね」

提督「いや、多分すぐにかかる。お前、気配消しておけ」

加賀「…………」

提督「流石だな。じゃあ俺も……」
提督「…………」

加賀「…………」

提督「…………来た」

加賀「…………え?」

提督「そこだ!」バッ

「うわ!?誰だ!?」
提督「やーっぱりお前か……長門」

長門「な、なな何のことだ?」

提督「とぼけんじゃねえよ、現場抑えてんだぞ」

長門「私はただ散歩していただけだ!そう、偶然だ偶然!」

提督「戦艦寮と一番距離が離れたこの駆逐艦寮に?しかも夜間出入り禁止の場所にか?」

長門「あ、うう……」

加賀「どうしてこんなことを?」

長門「……寂しかったんだ」

加賀「は?」

提督「…………」
長門「いつも作戦指揮や艦隊のまとめ役として厳しい面ばかり見せていた。だから皆私には仕事以外では寄り付かなくなっていったんだ」

長門「私だって本当はビッグセブンなどという肩書を忘れて皆と触れ合いたい!駆逐艦の子たちに囲まれて笑顔になりたい!だから……!!」

提督「……お前の言いたいことはわかった。お前に重い仕事を任せてしまっていた俺にも責任はある」

加賀「提督……」

提督「だが長門、お前のせいで駆逐艦の子たちが怖がってしまっていることも分かっているのだろう?」

長門「ああ……もうこんな真似はやめよう」

提督「ついでに反省として罰も与える」

加賀「提督、もう十分反省しているようですしこれ以上は……」

長門「いいのさ加賀。私はそれだけのことをしていたのだから」

提督「長門、お前への罰は……一か月間の駆逐艦寮の掃除だ」

長門「えっ……」
提督「駆逐艦の子と一緒に触れ合い仕事を全うするんだな。元々の仕事は別の者に任せるから気にせずやってこい」

長門「……ありがとう」

加賀「解決、ですね」

長門「ところで提督、そのぬいぐるみを私にくれないだろうか」

提督「駄目だ。これは俺が貰ったものだからな」

長門「そうか……」

提督「欲しいなら掃除を頑張って自分から貰うこった」

長門「……そうだな!では私は寝るとしよう。さらばだ加賀、提督!」
提督「おうお休み……ふむ……そういえば他の奴らには言ってなかったっけか」

加賀「何がですか?」

提督「いや、お前には関係ないことだよ」

加賀「……そうですか。そういえばどうしてあんなに早く長門の気配に気が付けたの?」

提督「……俺は暗いのが好きなんだよ。影だからな」

加賀「へぇ……まぁ、次へ行きましょうか」

提督「ああ」

~数時間後~

提督「あー……結局ここまでまともな不思議一つもなかったな」

加賀「『誰もいないのに動く工廠』は妖精が作業しているだけ、『首だけが浮いている港』は川内が黒服を着て高速で動いていた、でしたからね」

提督「さっきの『魔界へとつながる農園』なんて山雲が得体のしれないものを栽培してたってオチだったからな」

加賀「ある意味で合っていたのではないでしょうか」

提督「あんなニコニコ巨大な植物眺めてる山雲の方が怪奇だわ」

加賀「そうれもそうですね……では、いよいよ次で最後ですね」

提督「最後、ね」

加賀「ええ。でも七不思議の最後は知らない方がいいわ」

提督「何故だ?」

加賀「知ってしまうと呪われてしまうのよ。だからここでもう終わりにしましょう」
提督「そいつは残念だなぁ……なら俺はもう呪われてしまったのか?」

加賀「……どういうこと?」

提督「いい加減に正体明かせよ」

加賀「誰に向かって言っているの……?」

提督「お前だよお前。この2、3時間俺と一緒に歩いてたお前だ」

加賀「私……?私が七つ目とでも言いたいのかしら?」

提督「そうだよ。明らかにおかしいしな」

加賀「何を言ってるの?私は加賀……」

提督「気付いてたか?」

加賀「何にかしら?」

提督「今日俺は一度もお前を加賀とは呼んでない」

加賀「…………」
提督「そもそも加賀は今俺の個人的な命で今不在だ。いるわけがないんだよ」

加賀?「……そう」

提督「お前は誰だ。なぜこんなことをした」

加賀?「……先に七つ目の存在を教えておくわ」

提督「『旧鎮守府の亡霊』ってところか?」

加賀?「……驚いたわ。そこまでわかっているとはね」

提督「この鎮守府は俺の代で再建させたものでな。昔ここにあった鎮守府の者は空襲で全員死亡したという資料を見たことがある」

加賀?「そうよ……私はその死んだ艦娘の『集合体』みたいなものね」

集合体「様々な感情が渦巻いた……怒り、憎しみ、悲しみ、辛さ……中には『もうこれ以上苦しまなくてもいい』、と死んで喜んでいた者もいたわね」

提督「…………」
集合体「その内私たちの望みは一つに固まった。『せめて最後に自分たちがいたという証を残したい』、と」

提督「……そうか」

集合体「でもそれも貴方に出会えたことで果たされた。貴方は私たちのことを忘れないでしょう」

提督「どうだか。俺記憶力悪いし」

集合体「冗談を……貴方はとても優しいもの。この鎮守府をずっと見てきたからわかる」

提督「照れるね」

集合体「今日だって部下の想いや気遣いを何より大事にしていた。だから私達も託せる」

提督「……お前たちだって優しいさ。今回の七不思議だって遠回しに鎮守府にある危険や不安を取り除くように俺を誘導していたんだろ?」

集合体「何のことかしら、ね」

提督「……墓、作っといてやるよ。全員の名前を教えてくれ」

集合体「……ありがとう」
提督「というかもし俺が気が付かなかったらどうするつもりだったんだ?」

集合体「呪い殺していたかもしれないわね。それくらいの力はあるし」

提督「おお怖い。やっぱり頭脳ってのは大事だな」

集合体「この身体の持ち主に成り替わることも出来たわ。名前っていうのは大事なのよ?名前で呼ばれなくなった者はいつの間にか私みたいなのにすり替わってるかもね」

提督「…………」

集合体「ふふ……ああ、もう……皆満足……しちゃって、存在が、保てない」

提督「早くお前たちの名前を言うんだ。墓石に刻めないだろうが」

集合体「私……達の……名前……は……」

集合体「…………」

提督「……消えちまったか」

提督「っと、アレがいた場所になんか落ちてるな……」

提督「……ああ、名前の一覧か……遺品みたいなものだし使ったら埋めておくか」

提督「さて、明日起きてすぐにやらないとな」

~後日~

提督「立派な墓が出来たもんだ。夕張や明石の奴張り切ってたしな」

加賀「……あら、提督」

提督「おう、加賀か」

加賀「はい、ただいま中央鎮守府より帰還しました」

提督「ご苦労。ただの伝令だってのに数日間も面倒だったろう」

加賀「いえ、提督は鎮守府で最も信頼しているものとして私を遣わせたのです。これくらいなら問題ありません」

提督「最も信頼……ああそうか、だからあいつらは加賀の姿を……そうだよな、見てたらしいもんな」

加賀「何のことですか?」

提督「いや、気にするな。休んでくれ」
加賀「はい。ところでこの墓は?」

提督「……なぁ加賀、お前幽霊って信じるか?」

加賀「ゆ、幽霊ですか?し、信じてません」

提督「声がどもってるぞ。まさかお前こわ」

加賀「そんなわけないじゃないですか私は一航戦の加賀なんですよたかが幽霊なんかで怖がるはずないですしそもそも深海棲艦そのものが幽霊みたいなものじゃないですかそうよ私たちは日常的にゴーストバスターしているのだからあんなものに恐怖心を覚える方が可笑しいわええそうに違いない鎧袖一触よ五航戦の子なんかとは違うんだわ」

加賀「わかって頂けたかしら」

提督「アッハイ」

加賀「……私、今回の遠征の報酬が欲しいのだけれど」

提督「ほぅ、なんだ言ってみろ」

加賀「一緒に寝て。夜は一人だと寂しいの。決して怖いわけではないわ」

提督「…………やっぱり本物は違うな」

加賀「先に貴方の部屋で待っているわ」

提督「おう」
「それにしても名前も忘れられていたお前らか……」

「今まで墓もなかったくらいだしな」

「ああ、名前ってのは大事だ」

「名前を呼ばれなくなった奴はいつの間にか姿だけ同じの違う何かにすり替わってるかもしれない……」

「『提督』、『司令』、『ご主人様』なんてのもあったか……」

「じゃあ俺の名前は?」

「七不思議が七つしかない……そんなことは誰が決めた?」

「ああ、誰が気が付くんだろうなぁ、楽しみだなぁ」

「なぁ?『      』」
終わり
貴方の隣にいる人は、もしかしたら貴方の知る者そっくりの別のナニカかもしれませんね
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-加賀