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長門

【暁SS・艦これ】暁「私のサンタさん」

2016/12/23

12月某日

―提督執務室―

提督「………」カリカリ

提督「……ふう、これで今日のぶんは終わりかな」カタ

暁「司令官、おつかれさま!」

提督「おう、そっちもお疲れ。もうすっかり秘書艦の仕事が板についてきたな」

暁「ふふふ、とーぜんよ!なんといっても、れでぃーだしっ!」

提督「うん、えらいぞー」ナデナデ

暁「えへへー…じゃなくって!頭なでなでしないでって!」

提督「ははは、悪い悪い…そうだ、ごほうびってわけじゃないが、これを渡しておかないとな」ペラ

暁「え、なになに!……紙切れ?」

提督「か、紙切れとは失礼な…これはな、サンタさんへの手紙だ」

暁「さ、サンタさん!?」

提督「これに欲しいものを書いてお願いすると、それをサンタさんがクリスマスプレゼントとして届けてくれるんだ」

暁「へえ~…!」キラキラ

暁(サンタさんって、ほんとにいたんだ!司令官とお友達なのかな!)
―宿舎・暁型の部屋―

暁「――ってことなの。欲しいものが決まったらこの手紙に書いて司令官に渡すのよ、いーい?」

「「「了解!」」」

暁「よろしい!」

雷「サンタさんへのお手紙かあ…なんだかドキドキしちゃうわね!」

電「はい!あ…でも、何をお願いするか迷っちゃいそうなのです…」

響(……司令官、粋なことをするね)

暁「あ、手紙はなるべく早めに書くようにね。あんまりギリギリだとサンタさんが大変だし!」

電「はわわ…そんなこと言われたら、ちょっと焦っちゃうのです…えっと…えっと…」

響「電、そんなに急に考えなくても大丈夫だよ。まだ時間はある」

雷「って、私たちの心配もいいけど、暁姉こそ欲しいものがありすぎてなかなか決まらないんじゃない?」

暁「むー、そんなことないもーん!見てなさい、一番に書いてみせるから!」

雷「ほんとかしら?じゃあ私と競争しましょ!」

暁「よーし、その勝負…」

響「ふたりともごめん、もう私が書いてしまった」

暁「う、うそっ!?」

雷「早すぎでしょ!?」

電(……クリスマスプレゼントって、こんなに慌ただしく決めるものなのかなあ)
翌日

―提督執務室―

提督「………」カリカリ

暁「………」ボケー

暁(どうしよっかなー…欲しいもの、ふわふわとしたイメージはあるんだけど、これって感じのものが浮かばない…)

暁(うーん…雷との勝負は流れたけど、あんまり決めるのが遅いと姉としての…いげん?が無くなっちゃうわね)

提督(……ん?暁のやつ……あっ、そうか)

提督「サンタさんへのお願いを考えてるのか?」カタ

暁「ふえっ!?あ、ご、ごめん!今はお仕事よね!」ワタワタ

提督「お、落ち着け。別に手が止まってたことを咎めたわけじゃない」

暁「……へ?」

提督「いいか、クリスマスだぞ?サンタさんへのお願いはものすごく大事だ。仕事より大事だ」

暁「そ、そう…なの?」

提督「ああ、むしろクリスマスプレゼントを考えることが駆逐艦の最優先事項だとさえ言える」

暁(それはちょっと言い過ぎなんじゃ…)
提督「ってことで、俺でよければ相談に乗るぞ」

暁「ほんと?」

提督「任せとけって。それで、暁はどんな感じで悩んでるんだ?欲しいもののイメージはあるのか?」

暁「あ…ある、けど…その…」

提督「それを膨らませればいいんだ。ちょっと言ってみてくれよ」

暁「……ディ……の」

提督「……なに?」

暁「……レディーっぽいの」

提督「………」

暁「………」

提督(ど、どういう反応すりゃいいんだこれ…)

暁「も、もういい!自分で考えるから!」

提督「ち、違う!ちょっと考えてただけだ!そ、そうだな!えー、そう!暁の考えるレディーを参考にしようか!」

暁「私の…考える?」

提督「ほら、憧れの人が使ってる道具とか身につけてる物とか、形から入るのも悪くないだろ?」

暁(憧れ…鳳翔さんとか?料理道具…ううん、私がもらってもしょーがないよね…)

暁(他には…熊野さん?……あ!)
提督「何か思いついたか?」

暁「んと…熊野さんが持ってるみたいなティーカップ…とか」

提督「ああ、あいつはおしゃれなやつ持ってたな。ローズヒップティー…だったか?よく飲んでるよな」

暁「私も、自分のカップを持っていっしょにお茶できたらなー…なんて」

提督「おー、いいじゃないか!絵になると思うぞ」

暁「そ、そうかな?えへ…」

提督「よし、それで決定だな!…っと、すまん、それを決めるのは俺じゃないな」

暁「ううん、ティーカップに決めた!司令官、ありがと!」

提督「いやいや、役に立てたならよかったよ。あとはそれを部屋に戻るまで忘れないように…」

暁「え?なに?」カキカキ

提督「い、いや、別に…」

提督(どっから出したんだよ…てかずっと持ってたのか、可愛い奴め)

暁「……できた!司令官、これサンタさんにお願いね!」

提督「おう、確かに受け取った」
―廊下―

暁(素敵なティーカップがあったら、淑女のお茶会に参加して、優雅なひととき…なんて!)

島風「えー!なんでー!?」

天津風「そんなに大騒ぎするようなことかしら…」

暁(あ、島風ちゃんと天津風ちゃん。なんの話をしてるのかな?ちょっと声かけてみよ…)

島風「だって、サンタさんを信じてないなんておかしいよ!」

暁(え?)ピタ

天津風「別にいいじゃない、私の勝手でしょ?」

島風「おかしいおかしいー!だってサンタさんへの手紙書いてたのに!」

天津風「だってあれはきっと、サンタさんに渡すっていう建前で、本当は提督が…」ハッ

天津風(これって、信じてる子には言っちゃだめなこと…かも)

島風「提督が…なに?」

天津風「ううん、なんでもない。やっぱりサンタさんはいるかもね」

島風「やっと天津風も信じてくれた!やったー!」

天津風「……ふう」

暁(天津風ちゃん、さっき…なんて?本当は司令官が…って)

暁(……そんなことないよね?)
数日後・朝

―提督執務室―

提督「………」

コンコンコン

コンコンコン

暁「司令官?入るよ?」ガチャ

提督「……ぐぅ」

暁(うたた寝?司令官、疲れてるのかな)

暁(とりあえず、今のうちに今日の書類とか見せてもらおっかなー…)ヒョイ

暁「どれどれ…」パラパラ

暁(大本営からの任務、遠征スケジュール…あれ?これは…?)

『クリスマスプレゼント一覧』

暁「これって…」ペラ

暁(駆逐艦の名前と物の名前が並んで…はじっこにチェックボックス)

暁(暁型、暁型は…)

『暁:ティーカップ   □』

暁「………」

提督「ん…」モゾモゾ

暁「あ…!」ササッ

提督「……暁?うわ、いつの間にか寝てしまってたのか、すまん…」

暁「い、いいのいいの!私も今来たとこだし!」

提督「ん?どうした?なんかあったのか?」

暁「な、なんでもない!」

提督「?」
―――――――

――――

――

暁(やっぱり、あれは司令官がプレゼントを用意してるってことなのかな)

暁(……でも、手紙、サンタさんに渡してくれるって、言ったのに…司令官、嘘だったの?)

提督「……そろそろ行かないとな」

暁「え?」

提督「暁、今日の仕事はここまでだ。俺は今からちょっと出てくる」

暁「い、今から?どこに?」

提督「まあ、ちょっとした野暮用だよ。暁は気にしなくていい」

暁「ふーん…?」

提督「ここはもう締めてしまうから片づけを頼むよ」

暁「……はーい」

暁(こんな時間から外に出るってことは…つまり…?)

提督「暁ー、どうした?」

暁「あ、ごめん!すぐ片づける!」

暁(……司令官のあとをつけてみよう)
―繁華街―

カランカラン

「ありがとうございましたー」

提督「次は…」スタスタ

暁(し、司令官、歩くの早い…)タッタッ

暁(さっきからいろんなお店に入って、荷物が増えていってる…きっと、みんなのプレゼントなんだよね)タッタッ

… … … … … …

提督(これでここまで終わったから、今日はあと…まずいな、もっとうまく配分しておくんだった)スタスタ

暁(ま、まだ行くの?そろそろ、きつ…)

フッ

暁(あ!人影に…見失っちゃう!)ダッ

ドンッ

暁「ご、ごめんなさい…」

長門「いや、こちらこそ不注意だった…ん?暁か、こんなところで何をしている」

暁「な、長門さん!?わ、私は…その…」

長門「何の用かは知らないが、こんな時間にひとり歩きとは感心しないな。私と一緒に帰ろう」

暁「は、はい…」シュン
テクテク…

暁(司令官、見失っちゃったな…まだお店を回るのかな)

長門「………」スタスタ

暁「……ねえ、長門さん」

長門「なんだ?」

暁「サンタさんって、いるのかな」

長門「ああ、いるさ」

暁(即答…)

暁「……プレゼントは、司令官が用意してるのに?」

長門「……ほう」

暁「ほう、って…」

長門「なるほどな。何かの拍子にそれを悟って、確かめるために提督のあとをつけていたのか」

暁「うっ」ギク

暁(な、なんで今のでそこまで分かるのよ…)
長門「そうだな…プレゼントは提督が用意していた。暁はこの事実に怒っているのか?」

暁(怒ってる…?ううん、それよりも、私は…)

暁「……はじめは少し、裏切られたーって気持ちがあって、怒ってたのかも」

暁「でもね、だんだん、司令官ってすごいなとか、私たちのために申し訳ないなとか…そんなふうに思ってきちゃった」

長門「まあ、あの様子を目の当たりにしてはそう思うのも分かるが、申し訳なく思うよりも素直に喜んでやってくれ」

長門「提督はお前たちに喜んで欲しくてやっているんだ。なのにそんな顔をされては苦労も無駄になる」

暁「それは…うん」

長門(そう簡単に納得はしないか。仕方ないな)

長門「では、暁と提督の立場を公平にするというのはどうだ?そうすれば、引け目を感じることも無くなる」

暁「公平?どうやって?」

長門「……先ほど、サンタさんはいるかと聞いたな」

暁「う、うん…」

長門「暁、覚えておけ。サンタさんというのはな、この時期には大量発生するんだ」

暁「は、はあ…?」
12月24日・夜

―食堂―

~♪~~♪

青葉「さあさあ始まりましたクリスマス会!司会はもちろんこの…」

「わー、ケーキすごいっぴょん!」

「こんなに大きいの見るの初めてっぽい!」

青葉「前もってお伝えしてある通り、ちょっとしたゲームや…」

「紅茶ー!紅茶はどこネー!」

「え、えっと…あ、あそこです、お姉さま!」

青葉「………」

「だれが七面鳥よ!」

「……五航戦」

「なんですってぇ!」

青葉「司令官、青葉、久しぶりに心が折れそうです…」

提督「他に頼めるやついないんだよ、頼むよ…」

暁(そっか、クリスマス会なんてあったんだ…プレゼントに気を取られててすっかり忘れてた)

暁(司令官がひとりになるタイミング…あるかな)
―――――――

――――

――

電「見てください!お菓子もらっちゃいました!」

雷「やったわね!」

響「私も惜しかったんだけどね…姉さんは?」

暁「……えっ?あ、電おめでとー」

響「そうじゃなくて、姉さんはリーチとかなかったのかい?」

暁「リーチって…」

暁(あ、ビンゴゲームしてたんだった)

雷「どうしたの?ぼーっとして」

暁「あ、ううん、なんでも…」

提督「………」スッ

暁「あっ…!ちょ、ちょっと私トイレ!」ダッ

雷「えっ、ちょ…」

タッタッタッ…

電「……暁お姉ちゃん?どうしたんでしょう」

響(姉さん、ぼーっとしていたというよりもどこかを集中して見ていたような…)
―資材置き場―

提督(よし、誰にも見つかった様子はないな)

ガサガサ…

提督(睦月型はこの山、白露型はあっちの山、吹雪型がそっちの山で…)ゴソゴソ

提督(さて、運ぶ際の効率を考えると、最適な順番は…)

ガチャ

提督「!?」

暁「……司令官、ごきげんようです」

提督「あ、暁!?どうした?こんなとこに用は無いだろ?」サッ

暁「うん、ここには用は無いけど、司令官に用があるの」

提督「お、俺?」

暁「サンタさん、お疲れ様…って言いたくて」

提督「な…!気付いてたのか!?」

暁「うん。ごめんね、プレゼントのために頑張ってるところ、この目で見ちゃったの」

提督(は…はは、マジかよ、ここまでやっておいて、一番知られたくない子に…大失敗だ)
提督「……期待させてごめんな、暁。俺はサンタさんにはなりきれなかった…夢を壊してしまった」

暁「そんなことない」

提督「……え」

暁「目をつむってくれる?」

提督「あ、ああ…まあいいけど」

暁「………」スッ

ボフッ

提督(……マフラー?)

暁「えへへ…メリークリスマス!これで私も司令官と同じサンタさん!」

提督「………」ポカーン

暁「あのね、物語に出てくるサンタさんはいなかったけど、私にとっては司令官がサンタさんだって気付いたの」

暁「だ、だから…私も司令官のサンタさんになりたくて…」

提督「暁…」

暁「マ、マフラーなのは…司令官が好きなものとかよくわからなかったし、とりあえず無難な…あっ!そ、そうじゃなくて!えーと…その…」

提督「……は、あっはっは!」

暁「な、なんで笑うのー!?」

提督(こんな歳になって、俺のところにもサンタさんが来てくれるなんてな…笑うしか…)
提督「ははは……ちょっと待ってろ」ゴソゴソ

暁「し、司令官?」

提督「お前らが寝てから枕元に置いてやるつもりだったんだがな…ほら、クリスマスプレゼント」

暁「……!」

提督「俺のセンスだから、気に入ってもらえるかはわからないけど…おしゃれなカップを選んだつもりだ」

暁「あ、ありがとう!」ニコ

提督「よしよーし、お礼を言える暁は良い子だなー」ナデナデ

暁「なによー、お礼ぐらい言えるってば!」

提督(わかってるよ、それぐらい。でもこうやってふざけてないと涙がこぼれそうなんだよ)

暁「……あ」

提督「どうした?」

暁「司令官、マフラーのお礼言ってない…」

提督「あ、あれ?そうだっけ?」

暁「司令官、悪い子!」

提督「わ、わかった!ちゃんとお礼言うから!」

提督「………」スゥ

提督「ありがとう暁……メリークリスマス」

暁「うんっ!メリークリスマス!」

おしまい
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