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隼鷹

【艦これSS】隼鷹「提督…何で死んじまったのさ……」

2016/12/31

隼鷹「………」
隼鷹「………よっこらしょっと」
隼鷹「ふぃ………提督がいなくなってもこの場所は変わんねえか。ま、当たり前だけどさぁ」
鎮守府の端っこ。倉庫の裏手にあるこの場所は、丁度死角になっていてる。隠れて酒を飲むにはもってこいの場所。海に面しているから眺めも良い。
隼鷹「うーん、良い夕日だねぇ……」
地平線に沈む夕日が眩しい。波がオレンジ色に染まり、キラキラと光っている。

夕暮れを肴に提督と酒を飲むのがあたしの何よりの楽しみだ。

いや、楽しみだった……か。提督はとはもう飲めない。提督は死んじまったからなぁ。
隼鷹「はぁ…何で死んじまうのかなぁ。まったく……」
あたしが着任して丁度3年目。記念に二人でパーっと飲もうかと思ってたのに、その2日前に逝っちまった。せっかくその日まで禁酒してたんだけどねぇ。はぁ。
逝くなら艦娘であるあたしの方が先だと思ってたんだけど、人生分からないもんだ。運が悪かったといえばそれまでだけど。
隼鷹「………」
隼鷹「そういや提督とこの場所で初めてあったのも、夕日が綺麗な海だったな……」
今でも鮮明に思い出せる。3年前のあの日。丁度その日も海がオレンジ色に染まっていた。

ーーーー
ーー3年前
隼鷹「………」キョロキョロ
隼鷹「…よし、誰もついて来てないね」
隼鷹「ふぅ…どっこいしょっとぉ」
隼鷹「いやー、今日も疲れた疲れた。一杯飲まなきゃやってらんないよ」
隼鷹「まったく…どいつも酒を飲まないとはなぁ。しかも倹約倹約っつうから肩身が狭くて仕方がないねぇ」
隼鷹「提督も酒なんか飲まねぇってつらだからなぁ。あれは堅物だよぉ。期待は出来ないねぇ……」
隼鷹(ま、こうやって隠れて1人で飲むのも悪かないけどさ。いい場所を見つけたよ)
隼鷹(万が一見つかったら営倉行きだからねぇ)
隼鷹「……」グビッ
隼鷹「……ぷはぁー! 美味い!」
ガタッ
隼鷹「!?」ビクッ
隼鷹「だ、誰?!」
提督「……隼鷹か」
隼鷹「て、提督…」
隼鷹(な、何で提督がここに……)
提督「一体こんな所で何をしている」
隼鷹「え、えーと……その……」
隼鷹(こんな酒瓶片手じゃ言い訳の仕様がないよう……ど、どうしよ)
提督「……酒か」
隼鷹「え?! それは…そのぅ……はい……」
隼鷹(ああ…営倉行き決定だねぇ。酒も取り上げられるだろうし……はぁ…)
提督「隼鷹」
隼鷹「は、はいぃ…」
提督「この場所は人が来ないのか?」
隼鷹「はい?」
提督「この場所に人は来ないのかと聞いているんだ。今までずっとここで飲んでいたんだろう」
隼鷹「は、はい。今までは誰にも…」
提督「ふむ……。確かに普通ならこの場所には辿り着かないだろう」
提督「おまけに景色も良い。隠れて飲むには持ってこいだな」
隼鷹「それはもう…」
提督「私が使っていた場所よりずっと良い。流石だな、隼鷹」
隼鷹「へ?」
提督「………」
提督「………その、なんだ」ポリポリ
提督「良ければ、私も一杯やっても良いか」スッ
隼鷹「……え」
隼鷹「…えええええええ?!」
何て事はない。提督も酒飲みだったのだ。堅物規則野郎って印象だったのに、人間分からないもんだ。

最初は驚いたが、あたしと提督は共犯者。自然に腹を割って話せるようになった。それで分かったんだけど……提督は以外と人間味があったんだ。

提督「なぁ、隼鷹。あの新しく来た戦艦の霧島なんだが……どうやって周りと打ち解けさせれば良いだろう…」
隼鷹「というと?」
提督「いや、彼女は真面目でとても良いんだが……如何せん硬くてな。真面目が服を来て歩いているようでね」
隼鷹(普段の提督の方がよっぽど硬いけどねぇ)
提督「まだ、金剛型も他にいないし……どうしたものか」
提督の悩みは何時も似たような感じ。部下に周りと打ち解け欲しい。特に、真面目で堅物な艦娘は特に気にかけていた。提督曰く、ずっと肩肘張ると疲れてしまうからだとさ。自分がそうだから良く分かるんだろう。

酒を飲みながら、2人で堅物の崩し方を話し合ったもんだ。

 

提督は優秀な奴だった。まぁ、顔も優秀そうな司令官って感じだしねぇ。着々と任務をこなし、艦娘も増えていった。……つまり酒飲みも増えていったってこと。

提督「うーむ…」
隼鷹「ん、どうしたのさぁ」
提督「新しく来た、重巡の那智なんだが…あいつも中々難しくて……」
隼鷹「…………」
提督「隼鷹?」
隼鷹「提督、あたしの勘が囁いているんだ」
提督「?」
隼鷹「那智。あいつは…かなりの酒飲みさぁ!」
提督「ええ?! うーむ、見た目からは想像もつかんなぁ」
隼鷹(アンタには負けるって……)
提督「じゃあ、サプライズで酒でもプレゼントしてみるか」
隼鷹「ええ、いきなりかい? 冒険だねぇ……」
提督「まあ、部下と打ち解けるサプライズ術に関しては勉強したからな。安心しろ」
隼鷹「何だそりゃ…」
提督「隼鷹にもいつかサプライズしてやるからな」
隼鷹「それ言っちゃダメじゃないかい」
提督「……あ」
隼鷹「以外と阿呆だねぇ……」
那智、そして千歳。酒飲みがどんどん鎮守府に増えていった。お金にも余裕が出来たのもあるだろうが、酒飲みは市民権を得ていったのだ。艦娘のバーがで来るくらいにはねぇ。
要するに、もう隠れてコソコソ飲まなくて良くなったのだが………あたしと提督はちょくちょく倉庫裏で飲んでいた。
隼鷹「………」
隼鷹「……」グビッ
隼鷹「ふぅ……」
提督「隼鷹、早いな」
隼鷹「お、提督。遅いよう」
特に集まる約束をするわけではない。あたしが先に来る時もあれば、その逆もある。でも、2人が集まらない事は滅多になかった。
提督「随分出来上がっているな」
隼鷹「だぁからぁ、提督が遅いからだよぅ」
提督「何だ、俺のせいなのか」
隼鷹「そうだよぉ、えへへ…。さ、飲も飲も!」
提督「ああ」
触れるか触れないかの距離に座り、静かに飲む。皆と飲むのも好きだけど、提督との時間はもっと好きだった。

あたしが先に飲んでいて、提督が後から必ず来てくれる。提督が先に飲んでいれば、あたしは必ず行く。

そんな関係がたまらなく心地よくて暖かかったんだ。まぁ……つまるところ、あたしは提督の事が――。
ーーーー
ーーーー
ザザーン
隼鷹「………」
隼鷹「夕日が落ちちゃったかぁ……戻らないとね」
隼鷹「あはは………こんな時間になって。また、飛鷹に怒られちゃうねぇ…」
隼鷹「…………」
隼鷹「うっ……く……ぅ」グスッ
隼鷹「うぐっ……うあ………うああああ……」グスッグスッ
隼鷹「うう……提督……何で死んじまったのさぁ……」
隼鷹「あたし、寂しいよぅ………」
隼鷹「頼むから……帰ってきておくれよぅ……」
隼鷹「うう……うあああああああ…」
ーーーー
ーー
隼鷹「……」トボトボ
千歳「あっ…」
那智「むっ……おい、隼鷹」
隼鷹「あ…那智に千歳。どうしたのさ」
那智「今夜、一緒に飲まないか。良い酒が入ったんだが…」
隼鷹「あはは……ごめん。遠慮しとくよぅ」トボトボ
那智「あっ……お、おい」
千歳「………」
千歳「……隼鷹!」ガシッ
隼鷹「ど、どうしたのさ…」

千歳「どうしたのじゃないわよ! 貴方最近おかしいわよ!」
那智「おい、千歳…」
千歳「提督がいなくなって悲しいのは分かるわよ! でも、いつまでもそんなんじゃ、提督も悲しむわ!」
隼鷹「………」
千歳「飛鷹も那智も千代田も心配しついるわ。お願いだからしっかりしてよ! このままじゃ、貴方も死んじゃうわよ!」
隼鷹「………」
隼鷹「お酒、飲みたいよ」
千歳「じゃあ飲めば――」
隼鷹「味がしないのさ」
千歳「え……」
隼鷹「味がしない……どんなお酒飲んでも……味がしないんだよぅ」ポロポロ
千歳「隼鷹……」
隼鷹「ダメなんだ…もうダメなんだよぅ」ポロポロ
隼鷹「あんなに好きだったのに……味が……味が……」
隼鷹「うっ……うう……」
千歳「そんな……隼鷹……」
ーーーー
ーー

ザザーン
隼鷹「………」
隼鷹「……今日は、3周年で2人で飲もうと思ってた酒を持ってきたよぅ」
隼鷹「提督、来ないからもう1人で飲むね」
隼鷹「………」グビッ
隼鷹「………」グビッグビッ
隼鷹「………」
隼鷹「……」ポロポロ
隼鷹「やっぱり……駄目だぁ。味がしないねぇ………」ポロポロ
隼鷹「提督……アタシ、提督と飲む日まで禁酒してたんだ」ポロポロ
隼鷹「だから、きっと提督と飲まないと味がしないんだよぅ……」ポロポロ
隼鷹「……帰ってきておくれよ……提督のお酒……飲ましておくれよぉ…」ポロポロ

ガタッ

隼鷹「?! 提督!」
隼鷹「………」
隼鷹「何だ、ガラクタが物音立てただけか……」
隼鷹「ふふっ…そもそも死んだ提督が戻って来るわけないよぅ。阿呆だね、あたしも…」
隼鷹「………ん?」
隼鷹「何だあれ。ガラクタの物陰に何かある……」
隼鷹「………」ゴソゴソ
隼鷹「何だこの木箱。ガラクタにしては綺麗だねぇ……」
隼鷹「あ、開いた…………え」
隼鷹「何だこれ、酒? ………ん、何か紙が――」
《3周年おめでとう。これからも頑張ってくれ》
隼鷹「は?」
隼鷹「て、提督の字だ……」
隼鷹「3周年って…………」
隼鷹「………」
隼鷹「サプライズであらかじめ隠しといたのかな」
隼鷹「………」
隼鷹「……ふ、ふふ。提督、渡す前に自分が死んでどうするのさ」
隼鷹「阿呆だね……抜けてる所はあったけど」
隼鷹「………本当に……阿呆だよ」
隼鷹「………提督、あたしにくれるやつだよね。いただくよ」
隼鷹「………」
隼鷹「………」グビッ
隼鷹「………あ。美味しい……」
隼鷹「………美味しいよ」
隼鷹「そっか……提督からのお酒だもんね…」
隼鷹「………」グビッ
隼鷹「………美味しいなぁ」
隼鷹「ふふ、なんだよぅこれからも頑張ってくれってさあ」
隼鷹「仮にも女にプレゼントを渡すんだ。もう少し、気の利いた言葉をかいておくれよ。まったく……」
隼鷹「………」グビッ
隼鷹「提督。あたしはあんたの事、好きだよ」
隼鷹「あんたはどうだったの?」
隼鷹「………」グビッ
隼鷹「ぷはぁー……美味い」
隼鷹「………」
隼鷹「提督、あんたの事。好きだったよ」
隼鷹「お酒、ありがとね」
隼鷹「また、美味しく飲めるようになったよ」
隼鷹「だから……提督の言うとおり、これからも頑張ってやるよ」
隼鷹「…………」グビッ
隼鷹「………」
隼鷹「さよなら、提督」

ーー完ーー
短いですが終わりです。ありがとうございました

 

 

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