艦これSSまとめ-キャラ別これくしょん-

艦隊これくしょんSSのキャラ別まとめブログ


明石

【艦これ・電SS】提督「何がいなづまだよ、妻になれオラァ!!」

2016/12/21

提督「!?」

飛び起きて辺りを見渡すと、窓の外はまだ日の昇っていない明け方だった
当然、提督が飛び起きた原因の電はいない

提督「本当に言ったら、電はなんて言うんだろうな」

欲望の種が下腹部から解き放たれた提督は虚ろな目で机上の写真を見つめる
写っているのは電と提督だ

鎮守府が設立され、提督が着任したのと同時に来た艦娘。それこそが電である
駆逐艦である電は容姿で言えば女子中学生くらいであり、頑張りに頑張っても女子高生で、低く見れば小学生だ

提督「…………」

そんな子供な容姿に欲情し、あろうことか弾薬を放出したことで
提督の心は中破しているからだろう
汗と汁を拭った提督は顔をしかめると首を振り、俯く

提督「疲れてるんだろうな……」

心なんか大破すれば良い。いや、轟沈して二度と砲撃出来なくなれば良い。そうだ、珍退化改修しよう
思い至った提督は頷いて枕に頭を落とす

明日(今日)にでも妖精に要請して愚息には夭逝して貰おう
提督はやる気だった

でなければ、電に被害が及ぶと思ったからだ

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妖精「養正するべき」

妖精にははっきりと断られた
優しい妖精なのに睨みながら養正しろと
だから提督は激怒した。そして明石が激怒した

明石「流石に露出したまま来ないで!!」

もっともな話だ。提督は一言謝ると、明石が使っていた手袋を愚息に着せて工場から逃げ出す

提督「冷静になれ。KOOLになれ」

提督は自分が焦りすぎていたことに気付き、落ち着くために部屋へと戻った

提督「明石の手袋では燃料漏れすらしない」

提督は酷く困惑した。何故なら部屋に戻る間ずっと工作艦、明石の手袋に包まれていたはずなのに
愚息は涙すら流すことが出来なかったからだ

提督「電では誤射すらしたっていうのに」

そこで提督は明石の手袋が良い匂いであることに気づく
汗の良い匂いではなく洗いたての柔軟剤の仄かに甘い匂い

提督「だからか……」

明石の汗が染み込んだ手袋なら雷撃戦だってできたはずだ
提督は自分が電のような幼児体型を愛するロリコンではないと思い
そう信じて、写真を見る

提督「この手袋は電の……」

そう思った瞬間、愚息は怒張した

元、明石手袋は汚れが落ちきらなかったのだろう
うっすらとではあるが、黒っぽさが残っている

だからどうだという話ではないが、提督は思った
頬に炭をつけ、髪にすすの匂いを染み込ませ、「出来たのです!」と言い
満面の笑みを浮かべる電とか見てみたいと

提督「…………」

しかし、提督に絵心はない。だからだろうか
見てみたいと思い、脳内で描いた電は想像とは違っていた

頬についてるはずの炭は白くどろっとしており、
髪にもそれは振りかけられ、煤臭さなどなくほんのりと生臭さがある

そして電は「はわっ?!? 何か出てきたのです……」と言い顔をしかめる

提督「……ふぅ」

明石の手袋の汚れが汚れによって白くなると同時に、提督の頭の中も真っ白になっていた

提督「……そろそろ、執務室行かないとな」

だから提督は重大なミスをおかしていることに気づかなかったのかもしれないし、頭の欠陥による思考の穴から、本来すべきことが抜けていたのかもしれない

いずれにしても、提督はミスを犯した

提督「はわわっ!?」

その失敗に気付いたのは意外にも早かった。というのも、執務室の椅子に座った際、数時間誰も使わなかったひんやりとした冷たさが肌に直撃したからだ

提督「しまった!」

提督は部屋で着替えるのを忘れてしまっていたのだ。そもそも、部屋に戻ったのに下になにも履いていないのがおかしいのだが

提督は辺りを見渡す。執務室に着替えはない。そして今はもう鎮守府は明石の手袋を着ているだけでは許されないほど、目を覚ました艦娘で溢れている

それはつまり

電「司令官、電なのです」

ノックと共に、秘書艦である電が執務室に来てしまうという事でもあった

電「おは……司令官?」

いつものように挨拶しようとした電は首をかしげて提督を見つめる。提督の愚息を見てしまったからではない

提督「お、お早う。電」

提督が冷や汗をかき、視線をさ迷わせていたからである。提督が
発艦ならぬ発汗している。電は不安に思った

電「具合が悪いのですか?」

それは電の優しさだ。気遣いだ。その気持ちを汚すなど誰ができようか

提督「具合……」

出来る男がそこにいた。提督と書いてクズと読めるその男は考えた。

川内の言う方ではない夜戦中、跨がる電が「具合が悪いのですか?」と心配する姿を

電「…………?」

愚息は力を込めて立ち上がった。見つかればへし折られる可能性を考慮せず、それは電を前にして、ご馳走をおあずけされている犬のように涎を滴らせていた

提督「大丈夫だ。ありがとな、電」

だが、提督はやはり提督。そこで飛びかかるような魚雷ダイブはせずに平静を装う

電「何かあったらかならず言って欲しいのです」

提督の向かい側には机を挟んで電がいる。電の向かい側には机を挟んで提督がいる
しかも、下になにも履かず下腹部を露出したままの提督が

提督「正直、興奮してるんだ」

提督は思わず言ってしまった。イってしまわなかっただけマシなのだろうが、提督は早々に撤回し、首をかしげる電の顔に出したいと、考えを改めた

電「疲れてるなら、暫く電が仕事するので休んでも平気なのです」

見つめる視線に照れながら電はそう言った。しかし、提督は動けるわけがなかった

今、席を立てば愚息を電に見せつけることになるからだ。それはそれで興奮するが、流石に不味いと提督は考え直す

提督「電、スカート貸してくれないか?」

考えを改めた結果がその言葉だった。やはり、提督は提督だったのだ

電「……………………」

電はなにも言えなかった。言えるわけがない。はい、良いですよ。とか、嫌なのです。とか言える言葉はあった。しかし、相手が提督だからこそ、電は思考停止してしまったのだ

雷や響、暁が貸してと言うなら貸し出せるだろう。吹雪達特型駆逐型に対して、北上ら雷巡にも、サイズがあえば貸し出せるだろう

赤城や加賀には着れないからと断れるだろう。瑞鶴にはへそ出しとかになりそうですがと、貸し出せるだろう

電「あ、あの……なぜ、なのです?」

だが、提督だ。普通に考えて着るはずがない。だから着れないから断ることができないのだ。電は信じているが「上官命令だ。脱げ」と言われたらどうしようもない

提督「電のスカートが必要なんだ。これはお前にしか、頼めない」

提督は真剣だった。いっそ無機物の真剣だったら良かったのかもしれないが、そんなのは意味のない希望、絶望への餌やりだ

電「どうしても……必要なのですか?」

電は息を呑んだ。どうしても必要なんだと言うか、ただの冗談と言うか……解らないからだ

提督「あぁ、出来れば今履いてるやつが欲しい」

提督の本音が漏れた。しかし、幸運なことに、電が本音に気づくことはなかった。【必要なんだ→欲しい】という本音よりも、「今履いてるやつ」という言葉のインパクトに思考回路が爆撃大破したからだ

電「そ、それは出来ないのです……脱いだら隠せないのです」

当たり前である。下着の回りに布を巻いてるだけのようなスカートだろうと、なくなって良いわけではないのだ

提督「……そうか。出撃の正装だからよりしっかりした制服にと、思ったんだが」

提督の言葉、その残念そうな表情に電は首を横に振れなかった。何年も寄り添った提督の自分にしか頼めない願い

電が断りきれるはず、無かったからだ

電「部屋に忘れ物したのです……司令官は、ちゃんとしてて欲しいのです」

電はそう言って、執務室から出ていった

提督「…………あっ」

電の姿が消えた執務室。残香までもが失われると、提督はハッとしたように瞬きして瞳だけを泳がせる

ヤバい、電に変なこと頼んでしまった。なにがスカートが欲しいだ馬鹿野郎。先ずはヘアゴムからだろうに……。提督はそう思い、考えの至らなかった頭を小突く

提督「ヘアゴムで舌をいや、アレを縛るとか……」

ヤバいのは提督の頭である。しかし、誰にも悟られないよう隠し続けていた提督の願望は最早、改二がエリート化したような狂暴さ故に手は出せない

あろうことか、理性鎮守府が壊滅し、一時的にも電に対して変なことを頼んだことからも、それは伺える

提督「電……本当に貸してくれるのか?」

提督は思い出す。電は断れるような子ではないと。そう、つまり自分は命令ではない命令を電にしてしまったということに他ならない

提督が罪悪感に駆られていると、外から「しぃぃぃぃぃぃれぇぇぇぇぇぇぇ!!!」と怒号と激しい足音が聞こえてきたが、提督は無駄なことはしなかった

雷「電になんてこと頼んでるのよ!」

どうやら電は尻尾を忘れて来てしまったようだ。しかし、それは提督にとって感謝してもしきれない吉報を届けた

その姿を見て愚息は意気消沈したのだ。提督は歓喜した。その瞬間、自分がロリコンではないと確信したからである

提督「ありがとな、雷!」

突然の感謝に、雷は狼狽えた。怒鳴られてありがとうとは意味が分からないからである

しかし、提督の心から嬉しそうな顔を見る雷は、なにもしていないのに何かを成し遂げたような達成感を覚えて笑みを浮かべた

雷「もっと私に頼って良いのよ!」

精神面ではまだ子供故に、雷は単純だった。電に関しての怒りは一時的に何処かへと、流れてしまっていた

提督「あぁ、これからも頼りにしてるぞ」

提督はそう言って雷を誉める。下半身丸裸を除けば、提督は提督だったのである

提督「……遅いな」

雷が執務室を出て数分。電が執務室を出て十数分。いっこうに電は戻ってくる気配がなかった

しかし、提督は諦めなかった。諦めずに電が脱ぎたてスカートを持ってきてくれるのを待った。出撃させたあと、帰りを待つより気が楽だったからだ。なにより、諦めたらそこで試合は終了だからである

理性と煩悩が戦う。圧倒的に煩悩が強い。だが、煩悩は残り時間を捨てない。蹂躙する。圧倒的な力で理性を打ちのめす。轟沈しかけたらサルベージし、細部まで大破させようとする

提督「電……電……っ」

思わず下腹部に手が延びる。だが、神はそれを許さなかった

電「し、司令官……戻ったのです」

紙袋を胸に抱き、恥じらいに頬を染める電が執務室に帰ってきたのだ。愚息もまた反った

提督「電……」

電は提督の前で立ち止まると、紙袋を差し出した。その素晴らしき中身に、提督は溜まらず勝鬨の砲撃を放った

提督「……ふぅ」

提督の頭はスッキリしなかった。弾の詰まった拳銃。錆びた刀の切れ味のように不快だった

提督「部屋で、着替えてくれたのか」

紙袋の中には電が今履いてるのと同じスカートが入っている。違う点と言えば、多少のシワがあり、温もりがあり、着用感がある非常に高い付加価値のついているというくらいだ

電は恥ずかしそうに頷く。「はいなのです」と、平然と言えない辺りが提督にはより愛しかった。提督はハイなのだ

提督「ありがとう。これで捗るはずだ」

提督の言葉に、電は頑張って欲しいのです。お役に立てて嬉しいのです。と、照れの残る表情で言った

提督は涙した。愚息は暴発した。電の優しさに、提督は堪えられなかったのだ

電「ど、どうかしたのですか!?」

電の慌てた声に手を振り笑うと「大丈夫だ。問題ない」と答える。何が大丈夫なのかは提督には分からなかったが、電にこれ以上心配させられないと思ったのだ

提督「電、昼はここで取る。悪いが……」

提督が言い終える前に電は「はいなのです」と、可愛らしい声で答えた。電は秘書艦だ。使用人ではなく秘書艦。メイドではなく……メイド服……。提督は考えた。電には執務の時だけメイド服を着てもらってはどうか。と

スクランブルに支障がある。と、提督は許可しなかった

提督「………………」

電が仕事を一段落させて昼食を取りに執務室を出ると、提督は紙袋に頭を突っ込んで深呼吸した。二酸化炭素は白い液体になって下腹部から飛び出して行った

提督「明石に成分分析頼んで香水を……」

考えた提督はすぐにそれは違うと考え直した。万が一同じ匂いや成分を作り出せたとしても、それは電の匂いではない。電の匂いを模倣した人口の香りだ。そんなもので満足出来るはずがないのである

提督「……………………」

電の汗らしき匂いは感じない。しかし、柔軟剤ではないほんのりと甘酸っぱい匂いを提督は逃さず肺に閉じ込めた。スカートだからひらひらしていて、肌に触れる部分が少ないと思ったら大間違いである。むしろずり落ちてしまわないように、しっかりと密着しているのだ。シャツやTシャツを間に挟んでも匂いが付くほどに密着しているのだ

提督「こ、これを履けば……」

明石の手袋より布面積は広い。だから軽く腰に巻いて部屋に向かえるのではないか。と、考えたのだ。しかし、提督は絶望することになった

提督「は、履けないだと……っ」

当たり前である。中身がどうであれ、成人の体つきである提督が電のような子供体型が使うスカートを正規の使い方出来るわけがない。正規に使えないが、精気を発散出来るのだから質が悪い

提督「くっ……」

執務机の内側はべとべとで異臭がしかけている。しかし、拭くものがない。提督は考えた。「拭けないなら……舐めとるしかないのです」もじもじする電が机の前に屈んで、白い燃料を舐めとる姿を

愚息は艦載機を飛ばした。着艦出来ないと知りながら、いつか母艦に辿り着くことを信じ、英雄達は机に神風特攻を行った

提督「っ……く……」

提督は悲しんだ。報われない彼らが頑張り続ける姿を見ているだけだったからだ。提督は認めることにした。自分が電のような幼児体型に性的興奮をしているのではなく、幼児体型であっても、長年連れ添い、頼り頼られる関係の電に性的興奮をしているのだと

電「お待たせして申し訳ないのです」

神の采配か、提督が認め、スカートをしまうと同時に二人分の昼食を手にした電が戻ってきた。提督は困惑した。というのも、電には向こうでみんなと食べてきて良いと言ってあったからだ

電「今日の司令官は一人にしたくないのです」

電は心配そうな顔でそう言った。提督の分を提督の机に置くとその正面に自分の分を置き、電は一緒が良いのです。と、呟く

提督「あ、ああ……」

提督は無下に出来なかった。断れなかった。目の前に来たことで充実した電成分の供給、つまり充電ができているからではなく、断れば不安にさせると思ったからだ

電「司令官と食べるの、電は久しぶりなので嬉しいのです」

電は少し寂しそうな笑顔でそう言った

提督「そう言えば、最近は別々だったな」

電は秘書官だからといって出撃しないことはない。しかし、この鎮守府において最強の能力ではない。能力で言えば金剛や大和など大型の艦には勝ち目がないからである。それでも電が旗艦として出撃するのは、助けるためだ。味方だけでなく、敵も含めて

その出撃に加えて、仕事の件もある。だから、提督と電が昼を揃って取るのは約1ヶ月ぶりだった

電「…………………………」

電は箸を握ったまま窓を見つめて顔をしかめた。机を挟んで提督の前に座ったことで、気づいてしまったのだ。提督から漏れ出した燃料の臭いに

電「司令官……変な臭いがするのです」

提督は電の言葉に、魚雷を発射した。電が臭いを嗅いでいる。いや、嗅いだからだ。くんくん、くんくんと空気の臭いを嗅いで顔をしかめて言う「なんだか、生臭い感じなのです……司令官は感じないですか?」と

提督は首を横に振る。気のせいだろうと否定する。認めるわけにはいかなかった。開けた窓から入ってきてるなんて言ったら閉めることになる。そんなことになれば、瞬く間に臭いが充満するからである

提督「い、電。最近は別々だったしどうだ? 夕飯も一緒とか」

提督は必死だった。ここから感じるのです。と言われて机の中を見られたら終わるからである

その必死さに産み出された言葉は、電のことを止めた。臭いの元を探すのを止め、電は提督を見て照れ臭そうに目を伏せたのだ

電「……誘われると、なんだか恥ずかしいのです」

そう言いながらも、電は頷く。夕飯を一緒に食べることが決まったのだ

提督は目を見開いた。夜、艦娘が寝静まるまで残業し、事なきを得る作戦だったからである

しかし、嬉しそうな電にやっぱりとは言えなかった。そしてなにより、食べるために開く電の小さな唇。そこから覗く健康的な舌に包まれたいと。欲望で頭が一杯だったからだ

提督「……デザートはクリームだな」

提督の言葉を電は理解出来ず、楽しみなのです。と、純粋無垢な笑みを浮かべた

提督「なあ、電」

小さな口の小さな食事を眺めていた提督は、おもむろに声をかけた。その声は平坦で、風のない海のように穏やかだ

提督「良いな、出撃がない1日ってのはさ」

備蓄は充分、演習依頼無し、鎮守府近海は完全に制圧済。ゆえに、提督は今日を完全に休みにした。遠征は禁止、府内の演習は自主的に、出撃は軽く見張りと出撃艦隊を事前配備。なにもなければ何もない1日だ

提督「電を見ながらの食事が出来る」

提督がさらっと言うと、聞き逃さなかった電は箸を止めゆっくりと見開いた瞳を反らし恥ずかしそうに、しかしどこか悲しそうな笑みを浮かべる。ただ一緒の食事という意味ではなく、電の可愛らしい食事を見れるというある意味言葉通りの意味しかないことを、電は知らない

電「……そう言って貰えると嬉しいのです」

だから電は、そう言った

提督「電は可愛いなぁ」

電の笑みに提督は本音を漏らす。何もない、ただ異臭のする静かな日常。提督としての職を失うかも知れないが、提督はそれが嬉しかった。そして、その平和で優しく穏やかな日常の象徴こそ電であると、思っている

電「…………電は可愛いのですか?」

電の表情に恥ずかしさがない。提督はそれにすぐさま気づいた。提督にとって電の変化に気付くのは白紙に垂らした墨よりも容易だからである

しかし、提督は追及しなかった。なぜそんな顔しているのかと言わなかった。「最初、電と書いてかわいいと読むくらいには」と、笑う

実際、提督は着任し、電と初めて顔を合わせたとき、「いなづま」ではなく「かわいい」と言ったのだ。それを思い出して、電は笑みを浮かべる

電「もう10年近く前の話なのです」

それでも、電も提督も鮮明に覚えていた。それはその記憶が10年近い年月を経ても色褪せることのないほど大切が記憶だからだ

それはつまり、最初から一目惚れしているということなのだが、出撃、演習、遠征の毎日でそんなことを考える暇もなかった。そのツケが今さら来たんだな。と、提督は溜め息をつく

電「お待たせして申し訳ないのです」

ようやく食べ終えた電はそう言ったが、提督は「自分のペースで構わない」と、謝罪を一蹴する。満腹に眼福だったからである。やはり提督は提督なのだ

電「食器を下げてくるのです」

電がそう言って部屋を去ったあと、提督は椅子を抱えた。椅子よりも頭を抱えるべきだが、電の小振りで愛らしいヒップの温もり優先することなど無いからだ

提督「……あったかあったか」

その温もりは冬場の朝の布団の温もりよりも手放しがたかった。愚息はいきり立った。しかし、提督は首を振った。今ここで出したらバレるからだ

提督「……ウラー!!」

提督は雄叫びをあげ、椅子を戻し、自分の椅子に座り込む。提督は堪えきったのだ。轟沈した理性の再建造に成功したのだ

理性は考えた。「ヤバい、パンツかズボンが必要だ」と。今更になって、提督は今一番の問題について考えることにしたのだ

提督「……パンツ」

そこで提督は考えた。電のパンツが見たいと。だが、率直にパンツが見たいと言うことはできても響に響ックされて頭蓋に皸入って終わるだけだ

提督「ふむ……」

提督は窓の外を見た。良い天気だ。外で遊ぶには申し分ない。だから提督は気づいた。最優先事項である電のパンツだけでなく、指を差し込みたくなる臍を見た上で、ついでに下半身露出問題を解消する作戦を

提督「……簡単だったな」

提督は理性を入渠させ、溜め息をついた

電「今はもう、冬なのです」

安堵も束の間、提督の作戦は敗北に終わった。水着を着て海に行く。そうすれば電に合法的にパンツのような水着を履かせたうえで露出させる事ができ、提督の水着を持ってきて貰うことで、自分の露出を終わらせる事が出来たのだが

提督「朝はポカポカで忘れてた」

提督は笑って誤魔化した。そして考えた

提督「電、明石を呼んできてくれ」

明石に水着を作らせる作戦だ。そしてそれを電に試着して貰う。提督の露出が解消されないという問題は提督にとって些細なことだった

電が明石を呼んだあと、電には席を外してもらい、提督は明石と二人きりになった。その瞬間、明石は激怒した

明石「提督! わたしの手袋返してください!」

明石は泣いていた。ただ、持っていかれたからではなく、愚息に着せていくというなんとも卑劣な行いをしたからである。手袋は建造等で用いているだけのものではあるが、工作艦ゆえに物に対してしっかりとした愛情があるのだ

提督「すまん……あいつはもう駄目だ」

提督の容赦ない言葉に、明石は目を伏せた。手袋の最も屈辱的な最期を悟った上に、提督の頭の中がもう駄目だと思ったからだ

しかし、明石にも優しさはある。だから明石は提督の頭の中が終わってるとは言わずに、涙を拭って提督を見つめた

明石「提督。何か話があるんですよね」

提督「あぁ、電用のエッチな水着を作ってくれ」

明石は耳を疑った。自分が疲労感に頭をやられてわけの解らない夢を見ているとさえ疑い、頬をつねる。痛い。現実だえっ、なにこれが現実? 明石は酷く困惑した

提督「あ、すまん。間違えた」

提督が恥ずかしそうにそう言ったので、明石はそうですよね。と、困ったように笑った。きっと、「エッジのきいた水着」と言いたかったんだろう。と、考えた

エッジのきいた水着が理解できなかったが、そんなことはもはやどうでも良かったのだ

提督「電用って言ったら駄目だな。第六駆逐隊用のってことにしてくれ」

明石は考えるのを止めた

明石「作るのは良いですが、結構時間かかりますよ」

装備などの作成ももちろん時間がかかるが、水着を作るのにも時間がかかるのだ。しかも、布地ゆえに、装備などの金属系高速建造材は使えない

明石「早くても……3日」

明石は自分で言って絶望した。3日も正気の沙汰ではない物を作り続けなければいけないからだ。普通の装備なら高速建造材使って半日で終わらせるのに……そうだ、金属製の貞操帯を作ろう。そう考えた明石は机に頭を打ち付けた

第六駆逐隊……もとい、電に貞操帯をつけさせるなど深海棲艦より酷い行いだからである

提督「頭……大丈夫か……?」

提督の心配そうな声に、明石は「スッキリしますよ。提督もいかがですか?」と、額から血を流しながら笑う。頭がおかしくなるくらいなら、迷惑をかける前に頭を壊そう。明石は心に決めた

提督「いや、3日かかるなら作らなくて良い。今日必要でな」

提督の言葉に明石は満面の笑みで「なら仕方ないですね!」と、返した。作りたくなかった。いくら工作艦でも絶対に嫌だったからだ。込み上げる歓びを、明石は隠せなかった

そして明石は手袋を返して貰おうと部屋に行ったときのことを思い出した

明石「そう言えば、提督。部屋にズボン掛かったままでし……」

明石は言葉を止めた。提督があからさまに目を反らしたからだ。何かあるとすぐ焦ってボロを出す提督に、明石は溜め息をついた

明石「仕方ないですね。提督、間宮さんの料理なんでも1食。それで持ってきます」

女神のような明石の言葉に、提督は涙した。2食にするからパンツも頼むと、頭を下げた。明石はもう一度仕方ないですね。と、困ったように言うと、次やったら朝のお願い、実行しますよ? と、言って去っていく

提督「……ふぅ。やっぱり、明石には無反応だったか」

提督は微笑を浮かべ、青空を眺めた

明石「下着とズボンです。あと……」

明石は執務室に戻ると、紙袋を机に置き、中身の確認をした。下着、ズボン、オマケにトイレットペーパー、雑巾、机用洗剤、タオル、消臭スプレー、そしてビニール袋

明石は異臭に気づいていたのだ。それが何による異臭であるのかも。明石は大人だったのである

明石「掃除まではしません」

愚息を見た明石であろうと、生命のなりそこない達が眠る白き墓場を荒らす勇気はなかったのだ。明石は羞恥混じりの困り顔で笑う。それはまるでやんちゃに遊ぶ困った息子を見る母親のような穏やかさだった

提督「いつもすまないな」

机に隠れながら下腹部を手入れし、身なりだけは提督になった提督はそう言った。本心だ。明石にはいつも助けられている。でも、明石を性的に見ることは出来なかった

明石「気にしてません。貴方は私達の提督ですから」

明石は困った笑みのまま答える。ここまで頭がおかしくなったのは初めてだが、頭のおかしさがあっても、明石にとって提督は提督なのだ

それは何があろうと揺るぎない。変わらない。提督は永遠に提督だ

提督「なあ、明石」

明石とは中々に長い付き合いである。電が最も長いとはいうが、その次と言えるほどには長い。電が秘書艦だと言うのであれば、明石はその補佐と言える

だから提督は、言った

提督「俺は、電じゃないと魚雷装填出来ないんだ」

明石は笑顔で「知りません」と、会話を轟沈させた。もっともである。真面目な話ならば付き合っても良かったが、提督が装填出来ないなど知ったことではないのだ

しかし、優しい明石は目を背けながら問う

明石「わたしでも、ですか?」

明石は言われる言葉をわかっていた。それでも聞いた。言われたくない言葉を言われなければ、提督の助けにはなれないと思ったからだ

提督「ああ、明石でも無理だ」

知ってか知らずか、提督ははっきりと答えた

明石「そうですよね」

明石は笑みを浮かべてすぐ、提督に背中を向けた。硝煙や煤といったい工作艦らしい匂いがふわりと舞う

提督はそれを嫌な匂いだとは思わない。初めて会ったときもそうだ。工作艦ゆえに女の子らしくない匂いがしたはずなのに、提督は「気にするな。俺は好きだよ」と、言った

あの時はなに言ってるんですかと、少し怒ったが、今はどうだろうかと考えて。明石は首を振った

明石「だったら、もっと真面目な言葉であの子に言えば良いんです」

自分への答えは聞いた。提督の想いはずっと前から知っている。だから明石は言う

明石「提督なら気づいてますよね? あの子の状態に」

明石は提督の反応を聞かない。聞く必要がないほど、明石は提督を信頼しているからだ

明石「吉報、待ってますね」

明石はそう言って、執務室を出ていった

そして、明石のお陰で異臭を処理できた執務室で執務をすること数時間。ようやく、その時がやって来た

提督「悪い。待たせたか?」

提督の声に、電は大丈夫なのです。と、笑みを浮かべる。愚息は発艦しようとしたが、セーフティが働き、止める

スクランブルを覚悟していた飛び散るだけの生命の欠片達は安堵し感謝し、時が来たら芽吹くことを誓った

提督「誘いを受けてくれて嬉しいよ」

提督がそういうと、電は困ったように首を振る。電自身も話したいことがあったのだ。だから、お礼を言われても、電は素直に受け答えが出来なかった

提督も電も、似た者同士だった

間宮「いらっしゃいませ……あら、久し振りの組合せですね」

提督が電を連れてきたのは甘味処だった。甘味処とは言うが、頼めば朝食、昼食、夕食なんでもござれだ

提督が「奥の部屋」と、間宮に耳打ちすると間宮は困った顔で首をかしげる。残念ながら、奥の部屋なんてものはないからである

提督は格好つけるのを諦めた。普通にオープンな席ではなく個室に通して貰うと、電を先に座らせ、その横に並んで座る

電「司令官さん?」

電は執務中は司令官と呼び、プライベートでは司令官さんと呼ぶ。それは誰が言ったわけでもなく、電自身が決めたことだった

提督「すまん、癖だ」

提督はそう言いながら、電の対面に座り直した。改めて向かい合う気恥ずかしさに沈黙していると、間宮が水を持って表れた

提督「ママのアジカレーで」

提督がそう言うと間宮は「私は母の味は出せませんよ」と、言いながらも、愛情は込めてますが。と、笑う。一方で電は悩みに悩んだ末に、日替わり間宮家の夕食を注文した

間宮が居なくなると、途端に静かになったが、提督は水を飲んで息をつく。散々ふざけた半日だった。勢いで決まった食事だった

しかし、提督はそれを使って言う

提督「あんまり無理するな。秘書艦に旗艦、遠征、出撃、演習全部やれとは言ってないぞ」

どうしても。そう志願するから電にやらせてはいるが、提督としては秘書艦だけで良かった

怒られることかもしれない、提督としてあるまじきことかもしれない。しかし、提督は秘書艦に従事し、出撃で傷ついて帰ってくることが無くなって欲しいと思っていた

おもに、提督自身の胃腸等内臓が緊張とストレスで大破しないために

電「でも、電はそれしか出来ないのです」

いや、正しくはそうするしかない。と、電は思っていた。戦艦や重巡、軽巡に電は勝てない。頑張れば多少は並べるかもしれないがやはり、地力が違うからだ

だからこそ駆逐艦という速度で攻撃を回避して入渠資材の消費を避け、その小柄な体ゆえの燃費の良さで連続で稼働し続ける。自身の体の疲労さえも押し隠して

提督「なら俺は言う。電には他に出来ることがある。と」

しかし、電は首を振る

電「電は駆逐艦なのです。艦娘なのです。それ以外はないのです」

提督は溜め息をついた。単縦陣形でならび続けるつもりはないのである。だから提督はお前の連度は幾つだ。と、給料いくらだと聞くくらいの迫力で問う

電「150なのです」

電は質問の意味が解らなかったが、正直に答える。相手は提督だ。知っているのだから嘘の意味はない

提督「なあ電。今はもう、誰もお前の志を否定しない」

むしろ電の掲げる敵味方分け隔てなく救う。それがこの鎮守府全体の志だ。誰も否定しない。誰も笑わない。電の能力だけではない強さをみんなが認めているからだ

提督「そろそろ俺と代われ。今度はお前が帰りを待ってるんだ」

提督は散々待たされた。長すぎるほどに待たされることもあった。提督はそれを今度は電にさせようとしていた。戦争に送り出す恐怖もある。不安もある。そんな待機命令を提督は差し向ける

電「でも、電は艦娘なのです。電は戦うべきなのです」

それでも電はそう言った。今やこの鎮守府の目標、目的、夢、理想そして願いは、元々電が抱いている思い。だからこそ、電は言う

電「電が言い出したことだから、最後までやり通さなければいけないのです」

電「だから、電は司令官さんの指示に従えません」

電は

電「これは電が絶対にと、決めたことなのです」

電が

電「電ーーーー」

電は否定する、拒絶する。その度に電は。電が。と言う。提督は我慢の限界だった。もう耐えきれなかった

電は本気で言っているのに、真面目に話しているのに。洗脳するような電ボイスで電、電と言う。提督には嫌、妻と聞こえてしかたがなかった

提督はクズと読めるような提督で、他人の手袋を愚息に着せるような人で、処構わず主砲を放ち、生命の資材を無駄にする人である

そんな提督が空気を読めるか。否、読めるわけがない。察してくれるわけがない

提督「何がいなづまだよ、妻になれオラァ!!」

提督はいきり立って怒鳴って直ぐに目を見開いた。確か、夢もこんな感じだったな。と、思い出したからだ

真面目な空気、重苦しいシリアス調の空気を撃沈させた提督はもはや止まらない

提督「俺はお前と結婚するって決めたんだ!」

電が戦い続けることを自分が決めたことだとするのなら、提督も自分が決めたことをしようと決めた

提督「戦いたければ俺を倒してみろ! 俺の艦載機の爆撃をかわしてみろ!」

提督は呆然とする電にそう言い放つ。そしてカタパルトを取り出そうとして思い止まった

出撃の連続をしたのに補給をしていなかったからだ。例え命中精度が高かろうと、発艦出来なければそれはただの棒なのだ

電「……電は司令官さんとケッコンカッコカリはしたのです」

もう何年か前の話。忘れているのかもしれない。そう思った電が左手の指輪を見せると、提督はその指をくわえた

電「!?」

電が慌てて指を引き抜くと、そこに指輪は無くなっていた

提督「婚約って知ってるか?」

提督はそう言ったが、電が悲しそうな顔をし、泣きそうだった。提督は慌てて自分の口から指輪を取り出すと、電の指に嵌め直す

電は号泣した。当たり前である

電「知らないのです! もう知らないのですっ!」

唾液まみれの指輪を見つめ、電が声を張り上げると、提督はおしぼりで左手を包み、電の顔を上げさせた

提督「婚約だってカッコカリなんだよ、電」

そう、つまり

提督「婚約じゃなく結婚しよう。いや、してくれ電」

提督は真面目な顔でそう言った。号泣から啜り泣きへと変わった電は、提督を見つめて言った

電「嫌なのです」

ムードも何もないだけでなく、婚約指輪を唾液まみれにされたのだ。それは当たり前の答えに違いなかった

この日の提督の目の前は真っ暗になったが、翌日、ストレスを発散した真面目な提督の真面目な告白により、電は旗艦を金剛に譲ったのだった

電「それでも秘書艦だけは譲れません。なのですっ」

笑顔で言う電。それを聞いた明石はそうですよね。と、残念さの欠片もなく、むしろ満足そうな笑みを浮かべて言う

明石「提督は任せます。だからこっちは任せてください」

二人三脚。それが、それこそが明石と電だった。二人が話していると、遠くから提督の声が聞こえてきた

電「電はここにいるのです。もう、遠くにはいかないのです。でも」

電はそう言いながら、窓から飛び降りて来ようとする提督に困った笑みを向けた

電「そんなことしたら、提督がどこか遠くに行くことになるのです」

提督は冗談だと言ったが、愚息から漏れた燃料で足を滑らせ落下した。怪我は無かった

終わり。
正直何を書いてるのか分からなかった
次は何もない、異臭のない日常が書きたい
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