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艦隊これくしょんSSのキャラ別まとめブログ


武蔵 長月

【長月・武蔵SS】艦娘達「新しい提督は変わった人」提督「この鎮守府は俺が再興する!」

2016/12/16

三日月「司令官、お客さんです」

元無口提督(以降:無提)「ん?誰だ?」

憲兵「どうも、いつも妹がご迷惑をおかけしてます」

無提「ああ、お前か。どうした?」

憲兵「この度、例の鎮守府に新任の提督が着任予定が入りました」

無提「やっとか」

憲兵「その・・・実は、その新任の提督は少々変わり者でして」

無提「変わり者か。まぁ、提督業をする奴なんて変わり者しかいないだろう」
艦娘達「提督の喜怒哀楽がみたい」【艦これ】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1409762782/

関連性はあまりないけど続編

性的表現はあります

エロシーンはありません
憲兵「それにあたり引き継ぎの事ですが、前任の提督であるKが居ない今、あなたにお願いしたいのです」

無提「そうか。別に構わんぞ。あの鎮守府の子達はカウンセリングで仲良くなっているしな」

無提「それに、あの鎮守府を今一番知っているのは私だからな」

憲兵「新人なので、お手柔らかに」

無提「しかし、本当に新人があそこでやっていけるのだろうか?」

無提「Kが居なくなる前に大破し、こっちの鎮守府に来れなかった重症者も居る」

憲兵「そのようですね。歩くことに関しては支障はないようですけど」

無提「うむ・・・一人で歩けるにしても体は痛むと言っていた」

無提「おそらく、無理をしているんだろうな・・・あの面子なら」

無提「仲間に心配かけまいとするだろうさ」
憲兵「あなたが入渠させてあげるといった処置は出来なかったんですか?」

無提「私は所詮、あちらの鎮守府の人間では無い」

無提「むやみに置いてある資源を使うわけにはいかない」

無提「こちらの資源を使おうとすれば余計なお世話だと突っぱねられる」

無提「私も手が出せないで居るんだ。なんとかはしてやりたいんだがな」

憲兵「・・・そうですか・・・」

無提「困ったもんだよ」

憲兵「・・・それと、少しだけ相談があるんですが」

無提「ほう?」
憲兵「あなたの知り合いに、探偵が居るみたいなんで少し頼みたいことがあるんです」

無提「探偵?何か探りたいのか?」

憲兵「俺の先輩共の素行を調査して欲しいんです」

無提「何かあったのか?」

憲兵「提督と艦娘の恋愛がご法度なのはご存知ですよね?」

無提「ああ、一応な」

無提(そういえば、ほとんどの提督達にはそう伝わっていたな・・・)

憲兵「気持ちはわかりませんが、あなた達提督はどうしても艦娘に恋をしてしまうみたいなんです」

憲兵「それをネタに提督達をゆすりにかけていると小耳に挟みまして・・・」

無提「そうか」

憲兵「ベテランの憲兵殿達は真面目で、そのような事は一切ないんだが」

憲兵「俺より少し前に入った若い憲兵がそういうことをしているらしい」
無提「ふむ・・・私は脅されたことはないが・・・お前がそう言うなら」

無提「三日月、あいつを呼んで来い」

三日月「はい!」

無提「まぁ、うちの艦娘なんだが、使ってくれ。スクープの為にいろんな事を会得したみたいだしな」

憲兵「・・・色んなこととは?」

無提「変装とかもできるようになったとか言ってたな」

憲兵「ふむ・・・」

無提「以前のK事件、潜入捜査したり証拠集めしてくれたのはあいつだからな」

無提「ただし、報酬は自分で払ってもらうぞ。一応危険な事だから」

憲兵「ええ、わかりました」
青葉「司令官、何か御用でしょうか」

無提「ああ、この子がお前に頼みたい事があるって言っていてな」

無提「協力してあげてはくれないか?」

青葉「え!?何かの依頼ですか!」ワクワク

憲兵「依頼については二人きりで話がしたい」

憲兵「提督殿との話はこれで終わりなので、相談が終わり次第戻ります」

無提「そうか。それじゃ、あとは頼んだぞ青葉。行くぞ三日月」

無提「そろそろ深海棲艦達が腹一杯になっているころだ」

三日月「はい!」
数日後

元K鎮守府

大淀「今日は新しい提督が着任する日です。皆さん、無礼が無いようにお願いしますね」

大淀「先ほどお会いしましたが・・・少し変わった提督なので・・・」

艦娘一同「えっ」

皐月「新しい司令官だって、突然だね」

文月「そうだねぇ」

荒潮(前のこともあるし、不安ねぇ・・・満潮ちゃんも朝潮ちゃんも・・・)

荒潮(大潮ちゃんと私は多少吹っ切れたけど・・・)

満潮(・・・今度は、まともな司令官だといいわね・・・)

朝潮「・・・っ」フルフル

大潮「大丈夫だよ朝潮!大潮が付いてるよ!」

大淀「皆さん静かに!それでは提督、お願いします」

ガチャ
提督「・・・」

艦娘一同「っ!?」

提督「これからこの鎮守府を引き受けることになった。新人だが、よろしく頼む」

艦娘一同「よ、よろしくお願いします!」

提督「俺がここに来る前に上の連中から言われた事を伝えよう」

提督「この鎮守府を半年以内に再興できなければ、この鎮守府は潰すと言われた」

提督「だが、俺はここに宣言する。一ヶ月半でこの鎮守府を再興させる!!」

艦娘一同「っ!!」

提督「それで、早速なんだが、君たちには二日の間にこの鎮守府を綺麗に掃除をしてもらう」

提督「こんな汚らしい鎮守府では、君たちの士気に関わるからな」

提督「これでは豚小屋の方がマシだ」
提督「いいか二日だ。二日でどこもかしこも舐められるほど綺麗にしておけ」

提督「俺はその二日間で君たちが世話になった鎮守府に研修に行ってくる」

提督「秘書艦は今日中に決めるつもりだが、少し様子を見るとしよう」

提督「それでは大淀、俺を重症者が寝ている部屋に案内してもらおう」

大淀「は、はい。わかりました!こちらです!」

提督「・・・出来るなら早急に掃除を開始しろ。以上だ!」

バタン

ザワザワ・・・

満潮「中々、骨がありそうな司令官じゃない」

荒潮「そうね。前よりはマシになりそうねぇ」

皐月「でも、変わった司令官だったね。あれのせいで声がこもってたし・・・」

艦娘一同(なんで仮面なんて付けてたんだろう・・・)
提督「大淀、重傷者の部屋に行くまでに少し確認しておきたいことがあったんだが」

大淀「はい?なんでしょうか?」

提督「確か、お仕置き部屋らしきものがあるみたいだが」

提督「それでなんだが、ここの鎮守府の間取りを見たがあまりに部屋が少ない」

提督「今は艦娘自体少ないから困らないが、これから増えることを考えたら一つでも増やしたい」

大淀「ですが・・・今の子達はあそこへ入る事すら拒む子が多いんです」

提督「そうは言ってられまい」

提督「それでも、克服してもらわねばな」

提督「今は亡き者の姿を見て怖がられてもな」

大淀「・・・提督は、あの人の事を知らないからそんな事言えるんです」

提督「・・・わかった。今はいい。とにかく重傷者のところへ行こう」

医務室

コンコン

大淀「皆さん。昨日話した提督がお見えになりました。入ります」

シーン・・・

提督「寝ているのか?」

大淀「いえ・・・この時間はちゃんと起きているはずですが・・・」

提督「勝手に入らせてもらうぞ」

ガチャ

大淀「あっ」

提督「なんだ。全員起きているじゃないか」

提督「起きているなら、返事ぐらいしたらどうなんだ」
武蔵「提督などもう必要ない。提督よ・・・」チラッ

武蔵「んっ!?」

木曾「ん?どうした・・・あっ?」ポカーン

提督「俺が新しく来たお前たちの上司だ。しかし、こちらを見るときのその目」

提督「明らかに俺を敵として見ていたな。手前のベッドに居るお前達は、武蔵と木曾だな」

武蔵「いやちょっと待って貰っていいか?」

提督「なんだ」

武蔵「なんでそんなものつけて居る」

提督「つけちゃいけない決まりなどないからだが」
木曾「・・・なんだ。随分おかしな提督が来たもんだな・・・」

木曾「・・・神通、大丈夫か?」

神通「はい・・・。少し怖いですけど・・・」

???「ふん・・・おかしな司令官だろうが、私は貴様に従順になるつもりはないぞ」

提督「中々威勢がいいな。死にぞこないの癖に」

提督「重傷者はこの四人だけか?」

大淀「はい。大破のまま長い間放置された方達です」

提督「ふむ・・・では、使い物にならんな」

武蔵「なんだとっ!?」ガタッ

武蔵「いっ・・・」

提督「飛び上がることも出来ん奴を出撃させたところで所詮足でまといだ」
武蔵「ふざけるなっ!!私はまだやれる!修理さえすれば・・・」

木曾「俺も武蔵と同意見だ。俺達はまだやれる。体さえ治っちまえばなんとかなる」

神通「・・・どうぞ、お好きにしてください・・・」

提督「神通と言ったか?お前は物分りがいいな」

提督「お前たちは今、戦場に行かせたとしても役に立たん」

???「ならばどうする?解体するか?近代化改修の素材にするか?」

提督「・・・お前は随分冷静なんだな」

???「ふん。この程度なら、前任のクズに比べればなんてことない罵声だ」

提督「ほう・・・威圧感は戦艦であるそこの武蔵よりあるな」

提督「決めたぞ。お前は私の秘書艦にする」

???「なんだとっ!?」

提督「名前は?」

???「・・・長月だ」
提督「結論だけ言う。お前たちは解体も、近代化改修の素材にもしない」

提督「これから四人とも入渠をしてもらい」

提督「その後、他の艦娘の指導者として働いてもらう」

武神木長「っ!?」

提督「実戦経験が豊富であるお前たちと・・・重巡と空母の最も練度が高い二名」

提督「以上六名は、当分指導にあたってもらう」

提督「死にぞこないでも使いようだ。まだまだ楽はさせんぞ」

提督「この鎮守府の現状を考えれば、お前たちのような存在は最重要だからな」

提督「わかったか?」

木曾「役に立てるなら、俺に異論はない。誰かに教えるってのも、楽しそうだしな」

神通「木曾さんに同意します」

武蔵「・・・私は・・・」

長月「私はまだ戦える。私を前線に出せ」
提督「自分の体のこともわからんようなアホではないだろう」

武長「・・・っ」

提督「確かに、お前たちは入渠すれば傷も治るだろう」

提督「だが、何ヶ月ベッドの上で過ごした?歩く時なんてトイレのときくらいだろう」

提督「どれだけ筋力が低下している?痛みを庇う為にどれほど変な癖を体が憶えた?」

長月「貴様も、バカではないらしいな」

提督「自分が出来そうな事はなんでも学んできたつもりだ」

提督「俺だって、簡単に提督になれたわけではない」

武蔵「だがっ!!」

長月「武蔵。もういい」

武蔵「・・・ぐっ」

長月「わかった。今は貴様に従おう。ただし、私が間違っていると思えば、反抗はするぞ」

提督「それでいい」
提督「ならば、お前たちはしっかり入渠しておけ」

提督「入渠後、掃除に参加はしなくていい。その代わり、練習メニューを他二名を加えて考えることだな」

提督「長月には秘書艦の仕事もある。しっかりやるんだぞ」

長月「ああ、わかった」

提督「大淀、お前は空母と重巡にこのことを伝えておけ」

大淀「は、はい!」

長月「ふふ、変な仮面をしている割に、中々やるじゃないか」

提督「ふん。俺の期待に添えられるよう、せいぜい頑張るんだな」

提督「それにしても、入渠ドッグが四つあるのだけが救いだな・・・それじゃ、俺は二日間留守にする」

バタン

武蔵「・・・納得いかん」

長月「まぁそう言うな。少し、付き合ってやろうじゃないか。あの司令官がどこまでやれるか」

木曾「・・・本当に武蔵は長月に頭が上がらないな。俺もだが」

武蔵「私には真似できない事をするからな」

神通「ふふふ・・・そうですね」

長月「・・・あんなこと、二度としたくはないがな」
無鎮守府

三日月「司令官、あちらの鎮守府から司令官がお見えになりました」

無提「お、時間通りだな」

三日月「憲兵さんが言ってた通りって言うのもあれなんですが・・・」

三日月「ちょっと変わった人ですね・・・」

無提「ほう?」

提督「初めまして。引き継ぎ及び、短期間の研修、よろしくお願いします」

無提「・・・」

提督「・・・」

無提「そうだな。突然の研修やら何やらで大変だと思うが、まぁ気楽にやろう」

三日月(ノーコメント!?)
無提「研修についてはあまり期待するなよ」

提督「と、言いますと?」

無提「今は特に仕事とかはしていないんだ。なにせ鎮守府内だけでやることが多くてな・・・」

無提「遠征と演習しか今はしていないからな」

無提「それでだが、まず自己紹介からか?」

提督「いえ、あなたの事は風の噂で色々と聞いているので」

無提「そこまで有名なのか」

提督「ええ、いろんな意味で」

無提「そうか。じゃあ・・・お前の事はなんと呼べばいい?」

提督「ご自由に」

無提「ふむ・・・まぁ、追々でいいか」

無提「それではまず、あの鎮守府の細かなところか」
一時間後

無提「・・・大体こんな感じだ。この書類はそっちで持っていてくれても構わん」

提督「ありがとうございます」

無提「今日、あの鎮守府に行って第一印象はどうだった?」

提督「そうですね。まず、鎮守府全体が汚らしかったですね」

提督「そのせいで艦娘達の元気が半減していたように感じました」

無提「そうか」

提督「しかし、今の話を聞いて、一部を除いては前任の提督が原因もあるのかと」

無提「そうだな。大半の子はな」

提督「あの四人以外は」

無提「お前にもわかったか?」

提督「何故かはわかりませんが、あの四人からは滅入るような気配が感じられませんでした」

提督「どうしてかはわからないですけど」
無提「あの四人には共通点があるからな」

提督「・・・」

無提「まぁ、その共通点はお前が自分で探すんだな。一緒に過ごしていればすぐにでもわかる」

鈴谷「あれー?提督ー?その人誰ー?」ムニュ

無提「例の鎮守府の新しく着任した提督だ」

無提「あと、頭に胸を押し付けるな」

鈴谷「どうもー初めまして鈴谷でーす」

提督「初めまして」

鈴谷「ねぇ提督ー暇なんだけどー」

無提「今は大事な話してるんだ」

鈴谷「どうせ大したことないでしょー?」

無提「とりあえず退け。後で少しくらい相手してやる」

響「私も居るぞ!」

無提「どこから湧いた」
提督「いつもこんな感じなんですか?」

無提「まぁな・・・私も普通の男なんだが、以上に誘惑してくるんで少々困っているんだが」

無提「嫌なわけではないが。とにかく、今は無視してくれて構わん」

提督「大変ですね」

無提「私も年だからアッチの方はもうほとんど使い物にならんからなんとかな」

鈴谷「いいのがあるよ提督」ナマタマゴ

響「あるよ」アカマムシ

三日月「あ、ありますよ・・・うう・・・なんで私まで・・・///」スッポンノイキチ

無提「無視してくれ」

提督「はい」

提督「それでは、今日から二日間よろしくお願いします」

無提「ああ」

鈴響(まぁ、想定内)

三日月「辱めを受けただけじゃないですか・・・」ショボン
その頃の仮面鎮守府

長月「武蔵が入渠から出てくるまで時間がかかる」

長月「秘書艦に任命された私が掃除について、役割分担を指示する」

長月「まず、妖精達が鎮守府の壊れている所を直しつつ、天井を掃いてくれる」

長月「掃き終わった所から、空母、戦艦達で高い所の掃除を頼む」

長月「数が多い駆逐艦達はとにかく細かい所、及び小物の埃を」

長月「軽巡は駆逐艦達と共に」

長月「重巡は戦艦達と共に行動し、どちらも手が空き次第、各自判断で行動してくれ」

一同「了解!」

長月「・・・それと拷問部屋に関してたが」

一同「」ビクッ

長月「時間が出来次第、私達で何とかする。お前達は手を出さなくていい」

長月「それでは、期間は二日だ!新しい司令官の腰を抜かさせるほど綺麗にするぞ!」
ドック内

武蔵「ふう・・・久しぶりだな。こんなにゆっくりと風呂に入るのは」

木曾「ああ、そうだな」

神通「長月ちゃんはさっさと出て行ってしまいましたけど・・・」

武蔵「どうせあいつが帰ってくるのは明後日なのだからのんびりすればいいものを」

木曾「まぁ、長月の性格じゃ無理だろうな」

武蔵「・・・それで、お前達はどう思う?」

木曾「新しい提督のことか?それとも、長月のことか?」

武蔵「どちらもだ」
神通「・・・新しい提督さんは、優しい人だと思います」

木曾「優しいかどうかは置いといても、あいつならなんとか出来そうな気はするな」

武蔵「ふむ・・・そうか」

木曾「お前はどうなんだ?」

武蔵「医務室でも言ったが、まだ納得はしていない」

木曾「今は、前のクズとは違う事を祈るだけだろ」

神通「すでに大きな違いはありますけどね・・・」

武蔵「うむ・・・しかし」

木曾「どうした?」

武蔵「いや・・・あいつをどこかで見た気がしてな」

木曾「そうか?初対面じゃないのか?」

武蔵「そうなのか・・・まぁ、気に病んでも仕方ないな」
武蔵「それでだが、長月はあの日から明らかに無理をしているように見える」

木曾「そりゃそうだろ。あの日、俺達より仲のよかった朝潮がな・・・」

神通「本当に二人は仲良しでしたよね」

木曾「朝潮があっちで楽しくやってると耳にしてからは多少はマシだけど」

神通「・・・私はそれを聞いたとき心からホッとしました」

武蔵「ここでの奴の扱いは本当にひどいものだったからな」

木曾「報われて何よりだ」

神通「でも、長月ちゃんはまだ心を閉ざしたままです」

武蔵「それが少し気がかりだが・・・」

ガララ

長月「余計なお世話だ」

武蔵「なんだ。聞いていたのか」

長月「最後の方だけだがな」
武蔵「それで?なんの用だ?」

長月「清掃を今日中に終わらせて、明日からの訓練メニューについて話に来たんだ」

木曾「あん?そんなの風呂入ったあとでもいいだろ」

長月「いや、私なりに考えてきた。それでいいかだけ確認しに来た」

神通「え・・・?もう考えたんですか?」

長月「祥鳳と古鷹には話をして確認はした。あとはお前達だけだ」

長月「長い間訓練も何もしてないからな」

長月「最初は全員、体力と筋力を強化する方針で行きたいんだ」

長月「同時に基礎の知識についても進めていきたい」

武蔵「日程は?」

長月「少しの間は午前中に基礎知識に関する授業」

長月「午後より、走り込みや筋トレなどだな」

武蔵「ふむ」
武蔵「まぁ、いきなり模擬戦や実技に手を出しても仕方ないからな」

木曾「ああ、俺達のリハビリにもなるし、それでいいと思うぞ」

神通「えっと・・・誰が勉強を教えるんでしょうか・・・」

長月「それについては、武蔵にお願いしたい」

武蔵「私か。別に構わないが」

長月「よかった。話はそれだけだ。私は、清掃に参加してくる」

長月「お前達はゆっくり風呂に入っておけ。ではな」

ピシャッ

武蔵「・・・焦っているな・・・」

木曾「ああ、焦ってるな」

神通「心配です・・・」
そして日付が変わった夜中

無提鎮守府

提督「・・・」

キィ・・・

提督(ふむ・・・同じ部屋で深海棲艦と艦娘達が一緒に寝てるのか・・・)

提督(随分異様な光景だな)

提督(前から思っていたが、やはりここの提督はレベルが高い)

提督「学ぶべき事は多いが・・・俺には到底真似できないな・・・」

提督「もう少し探索を・・・」

バッ!ガシッ!

何者かが提督の後ろから羽交い締めする

提督「ぐっ!?な、誰だっ!?」

???「こんな夜中に嗅ぎ回るなんて、まるでスパイだね?」

???「用があるならうちの提督に許可をとってもらわないと困るよ」

提督「その声・・・川内か・・・?」
川内「ご明察ー。よくわかったね」

提督「俺は別に怪しいことはしていない」

川内「十分怪しいんだけど」

提督「夜にどんな風に過ごさせているか確認したかっただけだ」

川内「随分勉強熱心なんだね。でも、提督の許可をちゃんと取らないとねぇ」

川内「とりあえず、このまま提督の所へ連行させてね」

提督「くっ・・・わかった大人しくする。あまり強く締めないでくれ」

川内「聞き分けのいい人は好きだよ」

川内「どんな好きな人でも、うちの提督の不利になるようなことしたら」

川内「私達が黙ってないから」

提督「わかっている。俺もそこまで命知らずじゃない」
川内「・・・なんか、嗅ぎ覚えのある匂い・・・あなた何者?」

提督「お前は犬か。俺はただの新人提督だ」

川内「そっか。まぁ、似てる匂いなんて結構あるし、あんまり気にしないけど」

提督「・・・お前はなんで起きてるんだ?」

川内「そんなの決まってんじゃん。夜が好きだからだよ」

提督「夜戦じゃないのか?」

川内「夜戦は大好きだから」

提督「そうか・・・」

川内「それに提督はほっといたらすぐに夜更しするし、それに私も付き合ってるだけ」

川内「一緒に筋トレとかしたりさ」
執務室

川内「提督ー不審者を連れてきたよー」

無提『ああ、入れ』

ガチャ

川内「おおう・・・相変わらずセクシー!」

提督「お年の割に鍛え上げられた筋肉ですね」

川内「でしょー?」

無提「ん?どうした。不審者は」

川内「こいつ。こんな時間にいろんな部屋を開けて回ってたから捕まえた」

無提「ご苦労。お前はもう戻っていいぞ」

川内「えーっ?ご褒美はー!?」

無提「・・・はぁ、冷蔵庫の中に私が作ったプリンがあるからそれを食え」

川内「マジでっ!?やった!」

無提「あと、夜中なんだから声の音量は下げろ」
川内「えへへーそれじゃごゆっくりー」ニコニコ

バタン

無提「それで?何を嗅ぎまわってたんだ?」

提督「・・・いえ、特に」

無提「大方、深海棲艦の事と・・・元々そっちの鎮守府にいた朝潮に関してだろう」

提督「っ!」

無提「それになぁ、お前の正体が私にバレてないとでも思ってるのか?」

提督「・・・」

無提「お前がバラされたくないって言うなら黙っているが」

提督「・・・お願いします」

無提「そうか。お前も、夜中に多少の筋トレはしているだろ?私に付き合ってはくれないか?」

提督「・・・ええ、喜んで」
提督「少しですけど、深海棲艦達の話と朝潮の話を聞きたかったんです」

無提「ほう。話を聞くのと、夜中に嗅ぎ回るのは関係はないと思うが」

提督「・・・少し、どういうふうに過ごしているかも知りたかったので」

無提「だったら、私に許可を取ればいいだろう」

提督「申し訳ありません」

無提「一応ここは私の鎮守府だ。勝手は許さん」

無提「で、何が聞きたい?」

提督「本人達の話が聞きたいんです。特に朝潮には」

無提「沈んだ時の話か?」

提督「沈んだ?大破した朝潮を置いていったという話では?」

無提「それがだな、南方棲戦姫に詳しく事情を聞いたら、完全に沈んで居た時に引き上げたらしい」

提督「どういうことですか?」
無提「確かに、姫達は仕留めそこねたとは言ってた」

無提「だが、ふと気になって見たときは沈んでいたらしい」

無提「なぜ見捨てなかったと聞かれればよくわからないと言っていたけどな」

提督「深海棲艦の言葉を、あなたは信用するんですか?」

無提「まぁな。悪い奴らではないし、今更嘘を言って騙すような間柄ではない」

提督「そうなると、朝潮の言葉も少しおかしくなりそうですが」

無提「・・・そのことは色々と姫達に協力してもらい、少しずつ研究をしている」

提督「はい?」

無提「深海棲艦達の血液採取などをしている」

無提「あいつらの血は普通の物とは違う」
無提「白いんだ。厳密に言えば薄いピンクだが」

無提「解剖したわけでも体内のものを見たわけでもないし、全て推測」

無提「呪いのかかった一部の白い部分は、心臓の役割で」

無提「普通の艦娘よりその鼓動は遅く、その呪いに掛かった艦娘の心臓の鼓動が止まるにつれて」

無提「その心臓からの血が全身に回り、体色も白くなっていく・・・」

無提「という仮説を立てたんだ」

提督「しかし、血と体色はあまり関係ないのでは?」

無提「まぁ、そこが矛盾点なんだがな」

無提「それは置いておくとして、心臓が止まりかけるということは脳にも血が遅れて行くようになる」

無提「少しの記憶障害が起こっても仕方ない。私はそう考えている」

提督「ふむ・・・なるほど・・・」
無提「あの朝潮が嘘をつくとも思えん」

提督「それはそうですけど」

無提「・・・それを踏まえて、あの時何があったのか」

無提「少し、一緒に出撃していたメンバーに話を聞きたかったんだが、誰だかわからなかった」

無提「教えてくれなかったんだ」

提督「つまり、朝潮に聞いたところで、何もわからないと?」

無提「そういうことになるな」

提督「・・・ですけど、俺はまだ聞きたいことがひとつだけあるです」

無提「なんだ?」

提督「沈んだ時、海の中に入った時の気持ちです」

無提「それを聞いてどうする?」

提督「それは・・・」

無提「あまり、あの時の事を思い出させるような事は聞くな。朝潮が話すというなら別だがな・・・」
数十分後

提督「はぁ・・・はぁ・・・う、腕立てをしながら話すのはきついですね・・・」

無提「そうでもないぞ」

提督「・・・あなたは、俺の鎮守府の前任の提督にあれから会ったんですか?」

無提「・・・一度だけ、会いに行ったことはある」

無提「相変わらずだったよ」

提督「俺は、あの提督とは別の方法で」

提督「正義を胸に、あの鎮守府を再興してみせます」

無提「新入りの小僧が簡単に正義という言葉を使うな」

無提「正義という言葉が、どれほどの重みがあるのかわからないのか?」

提督「えっ?」
無提「正義という言葉は、自分の信念を貫き通した人間だけが使える言葉だ」

無提「私の妻は、自分が信念を曲げずに進み、人を助ける事をやめなかった」

無提「助けて船と一緒に海に沈んだ妻の最後の顔は今でも忘れない。素晴らしい笑顔だった」

無提「正義を貫くという事は、自分の信念を守り続けることだ」

無提「まだ自分の信念も持たず、スタートラインにすら立てて居ないお前はK以下だ」

提督「・・・」

無提「Kも、自分の信念を貫き通した男だった」

無提「そこだけは、私もあいつを尊敬していた」

無提「・・・だが、信念を貫くのは並大抵のことではない。無理する必要はない」

無提「お前はお前のやりたいようにやるんだな」

提督「・・・はい」
更に数十分後

提督「にしても、あんなことされてよく性欲を抑えられますね」

無提「ある程度のことならな・・・もう慣れた」

無提「・・・お前は何か性癖はあるのか?」

提督「・・・パンストを履いた内ももに色々したいですね」

無提「気が合うな」

提督「あなたもこういう話をするんですね」

無提「男だしな。友人と飲んでいるときはそういった話はするぞ」

提督「・・・意外です」

無提「よく言われる」
翌朝

無提「今日はずっと付いて私の仕事ぶりをするらしい。多少緊張するかもしれないが大丈夫だろう?」

三日月「会議の時よりはマシだとは思います」ドキドキ

無提「そうだな。しかし、昨日は遅くまで話していたせいか、少し眠い」

提督「俺も少し眠いです」

コンコン

無提「入っていいぞ」

ガチャ

鳳翔「提督、お食事の用意ができました」

無提「そうか。すぐに行く。行くぞ三日月」

三日月「は、はい!」

三日月(盗み聞きしちゃった話で・・・パンスト履いてみたけど)

三日月(そういう目で見て欲しいっていう目的で履いてると意識すると恥ずかしいな・・・///)

無提(三日月がパンストとは珍しいな・・・本格的に寒くなってからなぁ)
それから

提督「今回はありがとうございました。俺はこれで自分の鎮守府に戻ります」

無提「ああ、お前はお前らしく、あの鎮守府をまとめあげるんだな」

提督「はい。それでは」

無提「・・・お前、あんなこと約束してよかったのか?」

南方棲戦姫(以降:南姫)「・・・本当は嫌よ。あまり、戦いは好きではないもの」

無提「嫌なら断れば良かったものを」

南姫「なんとなくよ。それに、あなたにご褒美ももらえるしね」

無提「ちゃんと、出来たらな」

無提「それにしても・・・ふふ、あいつが提督か・・・楽しみだな」

無提が悪戯っ子の様な笑顔を見せる

鈴三響「」キュン

鈴三響(あの笑顔好き)

無提「しかし、異例だ。まずありえない。上の連中は何を考えてるんだ」
仮面鎮守府

提督「予定よりも遅くなってしまったな。もう日付が変わりそうだ」

提督「ん?あれは・・・」

長月「・・・」ペラッ

鎮守府の出入り口で、椅子に足を組んで座り、何かを読んでいる長月の姿

提督「・・・」カシャッ

長月「ん?ああ、戻ってきたか」

提督「こんなところで何している」

長月「貴様を待っていたんだが」

提督「何か用事か?」

長月「・・・秘書艦として、司令官が戻ってくるまでここで待つべきだと思ったんだが」

提督「・・・いや、別に待ってなくていいぞ。冷えるし、風邪引かれたら困る」

長月「しかし、前任の秘書艦である朝潮はいつまでも待っていたぞ?」
提督「俺と前任の提督を一緒にするな」

提督「とにかく、別に待っている必要はない。用事があるときは呼ぶ」

長月「そうか・・・それより、さっきの音はなんだ?盗撮か?」

提督「あまりに絵になる光景だったものでな。写真を撮ってしまった」

提督「クールな文学少女のようだったぞ。足を組んでいて見えた太ももは素晴らしかった」

提督「パンストも、街路灯の灯りもいい仕事をしていた」

長月「・・・変態か?」

提督「ああ」

長月「そうか。一応、貴様が居ない間の事を報告しようと思っているんだが」

提督「そうだな。とりあえずこんなところで話していたくない」

長月「執務室の方でするとしよう」
長月「執務室に行く間に聞きたい事があるんだが・・・なぜ私を秘書官に選んだ」

提督「お前の魅力に惹かれただけだ」

長月「ほう」

提督「こいつとなら楽しくやれそうだと思ったんだ」

長月「そうか。楽しくなるといいな」

提督「そんなお前にプレゼントだ」ポンッ

提督が手から突然、花を出した

長月「・・・手品師みたいだな」

提督「俺の気持ちだ。お前を幸せにしてやろう」

長月「愛を囁く相手は間違いないでもらいたいな」

長月「残念だが、私は少し気になる男も居るのでな」

提督「ふむ、振られてしまったかな」
長月「それより、手先が器用なんだな」

提督「ああ、自分が出来ることはなんでもチャレンジしたからな」

提督「それに、俺は誰かの驚く顔と、片想いの人間が好きな人の話をするときの顔が好きなんだ」

提督「テーブルマジックに関しては大体のことはできるぞ」

長月「そうか」

提督「それで?気になる奴とは誰だ?」

長月「聞くのか・・・」

提督「そりゃあ」

長月「・・・こちらの鎮守府に何度か来たことのある男でな」

長月「若い憲兵と言えばわかるか?私達を気にかけて訪れた奴んだが」

提督「・・・あいつか。あのクソ真面目な奴のどこがいいんだかわからんな」
長月「なんだ?嫉妬か?」

提督「そう思ってもらっても構わんが」

提督「ひとつだけ忠告しておく。あいつはお前が思っているような人間じゃない」

長月「貴様にあいつの何がわかるんだ?」

提督「お前もあいつの何がわかるんだ?」

長月「それは・・・」

提督「まぁ、あくまで忠告だ。恋路を邪魔しようなんて思ってはない」

長月「・・・貴様は、あいつとどういう関係だ?」

提督「深い関係ではないが・・・ただの友人みたいなものだ」

長月「そうか」
執務室

提督「ふむ。掃除もだいぶ行き渡ったようだな」

長月「ああ、みんなをまとめあげて一日でやるのは多少骨が折れたがな」ペラッ

長月「掃除は早めに終わらせて今日より訓練メニューを実践している」ペラッ

長月「予定では、一週間は勉学と基礎体力の訓練にした」

提督「・・・ふむ。では、俺は朝からその訓練風景を見学しよう」

提督「一週間後には本格的な訓練に入るんだろう?」

長月「予定ではな」

提督「その時の部下の振り分けは?」

長月「まだ考えていない」

提督「そうか。その振り分けは俺が考えよう。お前達は訓練に集中してくれ」

提督「そのためにも、何回かは訓練風景を見て観察しなくてはな」

長月「・・・ああ、そうだな」
提督「お疲れだったな。明日に備えて今日はもう眠れ」

長月「ああ、そうさせてもらおう」

提督「っと・・・忘れていた。これをお前にやろう」コトッ

長月「・・・これは?」

提督「あちらの提督の手作りプリンだ。お前も女だろ?」

長月「・・・ありがたくもらっておこう」スッ

長月「それじゃあな。おやすみなさい。司令官」

パタン

提督「・・・さて、もらった資料にでも目を通すか」

木曾「どんな資料もらったんだ?」

提督「艦娘達の性格や性能、人間関係の資料だ・・・」

木曾「ふーん」

提督「っつーか。いつの間に来た」

木曾「長月が出てく時に忍び込んだ」
提督「・・・そうか」

木曾「なぁ提督」

提督「なんだ?」

木曾「お前は、本当に一ヶ月半でこの鎮守府を再興させるつもりか?」

提督「当然だ。そうでなければあのように宣言なんかしねーよ」

木曾「そーかい。でもよ、お前が考えてる再興ってどこまでの事を言うんだ?」

提督「・・・落ちぶれる前の鎮守府に戻し」

提督「それ以上の鎮守府にするまでだな」

木曾「なるほどねぇ」

提督「まぁ、再興するにはお前達の頑張りが必要不可欠だ。期待してるからな」

木曾「期待しとけよ」

提督「ああ、とりあえず寝るんだな」
木曾「・・・俺にプリンはないのかよ」

提督「あ?これは俺のプリンだ。お前にはやらん」

木曾「なんでだよぉ。俺にもプリンくれよぉ」

提督「・・・はぁ・・・わかったよ。半分ずつだからな」

木曾「やったぜ」

プリンとスプーンを手に取りすぐに食べ始める

木曾「うめぇ」

提督「それ食ったら歯を磨いて寝ろよ」

木曾「おうよ!んー濃厚でうめぇな・・・」

提督「ちゃんと残せよな・・・」
翌朝

授業前

提督「さて、今日から本格的にお前達に提督として接することになるんだが」

提督「今日、俺はお前達の訓練風景を見学させてもらおう」

提督「まぁ、難しい話を長々としても仕方ない」

提督「そんなことより、訓練の方が先だ。長月」

長月「ああ。ということだ。これより、昨日の続きをしていきたいと思う」

長月「頼んだぞ。武蔵」

武蔵「ああ。わかった」

武蔵「では、これより授業を開始する」

提督「長月、なんで武蔵は教師が着てるようなスーツを着てるんだ?」

長月「・・・形から入るタイプなんだ。気にしないでやってくれ」

提督「にしても、エロい身体してんな・・・」

提督「俺が男子中学生だったら勃っちゃって立てなくなるね」

長月「心の底からどうでもいいと思ったのはその発言が初めてだ」
一時間後

武蔵「ということになる。軽巡洋艦に関しての知識はこの程度でいいだろう」

武蔵「何か質問はあるか?」

摩耶「ちょっと質問してぇんだけど」

武蔵「なんだ?」

摩耶「昨日は駆逐艦、今日は軽巡。なんで重巡のあたしらや戦艦達がこんな講義聞かなきゃなんねぇんだ?」

摩耶「おかしいだろ?」

武蔵「おかしいところなんてあるか?」

武蔵「仲間の性能を知ることも強くなる秘訣だ」

武蔵「そんなこともわからないようじゃ、戦場では生き残れんぞ」

摩耶「でもよ・・・一番重要なのは自分のだろ?」

武蔵「本当にそう思うか?他のやつにも聞いてみよう。そう思っている奴、手を上げろ」

何人もの艦娘がその手をあげる

摩耶「ほらみろ。他の奴も同じように思ってる奴だっていんだぜ?」

摩耶「その艦はその艦だけの話を聞きゃいいだろうよ」
提督「・・・ここまでひどいとはな・・・」

長月「これがこの鎮守府の現状だ」

長月「自分以外を信用することを知らない連中が集まった鎮守府」

長月「間違えれば、自分さえ信用していないやつも居る」

提督「・・・武蔵をこの役に当てたのはお前だったな」

提督「なんでだ?」

長月「理由は簡単だ。あいつは心が強い。おそらく、この鎮守府一だ」

長月「それに、しっかりとあのように反抗してきたやつを口で大人しくさせる」

長月「最初の頃は感情的だったがな・・・」
武蔵「・・・それは違うな」

摩耶「なんだと?」

武蔵「それでは、いつまでたっても使い物にはなれないぞ」

摩耶「ああっ!?」

武蔵「いいか。戦場では、一人の力ではどうしようもないんだ」

武蔵「出撃はほとんどが一人ではない。一緒に戦う仲間がいる」

武蔵「その仲間の事も理解せず、一人で突っ走るような奴、ここには必要ない」

武蔵「役立たずだ。戦場に出る資格はない」

武蔵「役に立ちたい。戦績を伸ばしたいというなら、仲間の事を理解することだな」

武蔵「もちろん、自分の命も大切ならな」

武蔵「・・・他に、何かあるか?」

摩耶「ぐ・・・」
提督「さすがだな。お前達はその辺をちゃんと分かっているようだ」

長月「当たり前だ。何人の仲間が私達の目の前で沈んできたと思うんだ」

提督「お前達が言うと、重い言葉だな・・・」

長月「貴様には言っておくが、もう仲間が沈む姿は見たくないぞ」

提督「・・・」

木曾「頼むぜ提督。あんな仲間の顔・・・見たくない」

提督「自分の身は自分で、お互いの身はお互いに守るものだ」

木曾「んなことはわかってるけどよ・・・あんたの指揮も大事なんだぜ」

提督「そうか。なら、俺も頑張ろう」

長月「・・・」

長月(一人だけ・・・穏やかな顔で、お礼まで言って沈んだ奴もいたんだがな)
午後

執務室

外からバタバタと走る音が聞こえる

提督「ん、始まったか」

大淀「昨日から、皆さんほとんど走り込みですよ」

木曾『遅くても全員の足並みを揃えろ!!速く走る必要はない!!』

提督「走りながらよくあんな大声が出せるな」

大淀「あはは・・・木曾さんは皆さんのムードメーカーで、いつも元気ですから」

提督「そのようだな・・・」

大淀「提督は見に行かなくてもよろしいのですか?」

提督「ああ、訓練内容は聞いているからな。それにあの声を聞けば察せる」

提督「俺が見てても訓練に何か貢献できるわけでもないし・・・」

提督「午前中は俺の勉強にもなったしな」
提督「・・・大淀、お前は任務娘で、本部の艦娘だ。俺の事、多少なりとも聞いているだろう?」

大淀「・・・はい。何故突然?」

提督「俺のことは、あいつらには秘密にしていて欲しい」

大淀「わかってますよ。大体、その怪しげな仮面をしている時点で」

提督「む、そうか」

大淀「ですけど、意外です。あなたがそういう人なのも」

提督「・・・そういうもんさ。心を持つものは皆裏がある」

提督「特に、普段がいいやつならいいやつほどな」
コンコン

提督「ん?誰だ?」

???『憲兵だ。入っても大丈夫か』

提督「ああ・・・いいぞ」

ガチャ

憲兵「調子はどうだ?」

提督「順調だ」

憲兵「そうか。にしても不気味な仮面だな」

提督「そうだろう?気に入ってるんだ」

憲兵「話がある。例の話だ」

提督「あれか・・・大淀、席を外してもらえないか?」

大淀「は、はい!」

木曾「15分休憩だ!」

神通「しっかりとした水分補給も忘れないで!」

長月「ふう・・・」

祥鳳「流石に厳しすぎませんでしょうか・・・」

古鷹「いえ・・・神通さんにしてはまだ優しい方ですよ」

神通「ど、どういう意味ですか!」

武蔵「はぁはぁ・・・さすがだなお前ら。息切れなしか」

長月「だいぶ体力が落ちているな」

武蔵「ああ・・・怪我を理由に多少怠けてしまったからな」

木曾「まぁ、しょうがねぇだろ。怪我がひどかったってのもあるし」

長月「そうだな。怪我を理由で怠けたとは言えないだろう」
大淀「皆さん、調子はどうですか?」

長月「大淀か。どうした?司令官と一緒に居るんじゃなかったのか?」

大淀「いえ、それが・・・憲兵さんがいらして」

長月「・・・若い憲兵か?」

大淀「はい。何度か来ていただいた人でしたよ」

長月「そうか」

木曾「なぁ長月。告白とかしねーの?」

長月「するつもりではいるんだが、迷惑をかけないだろうか」

祥鳳「あれだけ出来た人ですから、早くしないと・・・」

武蔵「そうだ。早めに唾をつけとかなければ誰かに取られるだろうな」

長月「しかし、色恋沙汰にうつつを抜かせる状況ではない」

木曾「んー・・・難しいところだなぁ」

大淀(えっ・・・平然と恋バナしてる・・・)
木曾「んー」ウズウズ

長月「どうした?」

木曾「二人で何話してるか気になるなぁ・・・ちょっくら行ってくる!」

長月「あ、ちょっと待て!」

武蔵「時間までには戻って来い」

木曾「おう!」ダッ

木曾はそのまま走って言ってしまった

長月「はぁ・・・しょうがないやつだな」

祥鳳「ふふふ・・・楽しそうでしたね」

長月「・・・あいつが来て数日だが、木曾は少し変わったな」

武蔵「どこがだ?いつも通りだと思うが」

長月「いや、気にしなくてもいい」
執務室前

木曾「はぁはぁ・・・ふう・・・っと」ピタッ

ドアに耳をくっつけた

憲兵『胸が苦しいな・・・』

提督『俺の前では女に戻ってもいいぞ』

憲兵『だが・・・』

提督『ずっと男だと疲れるだろう』

憲兵『じゃあ、そうさせてもらいます。さらし苦しいんですよね・・・』

提督『まぁ、胸でかめだからな』

憲兵『ふう・・・楽になりました』

提督『俺の前で、普通にさらしを取るのはどうかと思うが』

憲兵『仕方ないじゃないですか。他の人に見られるわけにはいきませんから』
提督『まぁ、お前の体には興味も無いがな』

憲兵『失礼ですね』

提督『さて、本題はもう話終わったしこれからどうするんだ?』

憲兵『少し休んだらすぐに戻ります』

提督『そうか。俺とあちらの提督しかお前の秘密を知らない』

提督『誰かにバレないよう、気をつけるんだな』

憲兵『はい』

提督『にしても、化粧ってのは怖いな。男っぽく見せる化粧もあるんだな』

憲兵『そうですね。試しにやってあげましょうか?』

提督『遠慮しておく』

木曾「・・・知ってはいけないことを知ってしまった」

木曾(長月に言うべきか・・・どうしよう)

木曾「・・・」

長月「どうした?そろそろ再開するぞ」

武蔵「何かあったのか?」

木曾「いや・・・」

長月「・・・私と目を合わせないな。私に何か言いたいことがあるのか?」

木曾「・・・知らぬが仏」

長月「なんだと?」

木曾「再開するぞ!」

古鷹「何かあったのでしょうか?」

神通「・・・」

執務室

提督「明石、少し頼みたいことがある」

明石「はいなんでしょう」

提督「あいつらの体の歪みを治したいと思ってるんだ」

明石「あいつらとは?」

提督「もちろん、ベッド生活していた四人の体だ」

提督「つまり、俺とお前で、四人の整体を行いたい」

明石「はぁ」

提督「心得はあるだろう?」

明石「ありますけど・・・提督にはあるんですか?」

提督「ああ、一応な。免許は取れるほどの知識は持っている」

明石「すごいですね!それでは・・・いつから開始されるのですか?」

提督「今日からだ」
明石「えぇ!?突然ですか!?」

提督「・・・外をみろ。あそこに、こんな時間に赤ジャージで走っている奴がいるだろう」

明石「長月さん・・・?」

提督「早めに実行しなければならない」

提督「体が歪んだまま無理されても困るからな」

提督「明石、医務室のベッドの用意をしておいてくれ」 

提督「俺はあの四人を呼んでくる」

ガチャ

明石「え!?ちょ!提督!」

提督「頼んだぞ」

パタン

提督は出て行ってしまった

明石「・・・何ものなんでしょうか・・・」

長月「はぁ・・・はぁ・・・」

木曾「おう。大丈夫か?」

長月「木曾か・・・どうした?こんな時間に」

木曾「こっちのセリフだ。ほら、スポーツ飲料だ」ポイッ

長月「ありがとう」パシッ

木曾「あんまり無理すんなよ。体だってちゃんと治ってないんだからよ」

長月「んっんっ・・・ぷはぁ・・・ああ、甘えてる暇も、遊んでいる時間もない」

木曾「それにしても赤ジャージとポニテが相変わらず似合ってるな」

木曾「武蔵なんて恐ろしい程似合ってないのに」

長月「くだらない話をしに来たのなら私はまた走るが」

木曾「・・・憲兵のことで話したいんだが」

長月「ああ・・・どうした?」
木曾「あいつはやめておけ」

長月「・・・お前も、そういうのか」

木曾「お前も?」

長月「・・・いや、あいつも少しな」

長月「直接否定をしなかったがな。明らかにやめておけと言っていた」

木曾「・・・そうか」

提督「ん?木曾も丁度居たか」

長月「なんだ?なんの用だ」

提督「二人共、医務室にて整体を施させてもらう」

長月「整体だと・・・?」

提督「他の二人も呼んでくる。先に向かっていてくれ」

木曾「ああ、わかった」

長月「・・・どうしたんだ?突然・・・お前も、あいつも」
医務室

明石「それでは順番に・・・まずは武蔵さん、ここに仰向けで寝てください」

武蔵「ああ」

提督「こっちは長月が先だ」

長月「貴様がやるのか・・・」

提督「何か不満か?」

長月「・・・変なところ触るんじゃないぞ」

提督「さぁ、変なところ触っちゃうかもしれんな。早く仰向けで寝ろ」

長月「はぁ・・・わかった」

木曾「俺達は待ってればいいのか?」

提督「ああ、待っててくれ」
数分後

提督「何か違和感があるところはないか?」サスサス

長月「そうだな・・・いつまでも太ももをさすっている事に違和感を感じる」

提督「気のせいだろ」サスサス

長月「・・・まぁいい。そうだな。背中に違和感がある」

長月「足も少し・・・」

提督「ふむ」サスサス

長月「・・・」

提督「・・・」サスサス

長月「・・・ふん!」

ドッ!

提督「うっ!!」
提督「上官の・・・腹に・・・加減なく蹴りを・・・」プルプル

長月「やるならちゃんとしろ」

提督「気になる女の太ももが目の前にあるのに我慢しろという方が無理な話だ!!」

長月「黙れ!ちゃんとやらんならもう部屋にもどるぞ」

提督「ふう・・・わかったわかった。真面目にやろう」

長月「まったく・・・本当に貴様は・・・」

提督「それじゃ、真面目にやるか」

木曾(楽しそうだな)
数十分後

提督「これでよし」

長月「終わりか?」

提督「ああ、最初の一週間は毎日やるからな」

提督「その後は週一で行う」

長月「ふむ。了解した」

提督「さて、次は木曾」

木曾「お、やっと俺の番か」

木曾「で、どうだった?」

長月「ふむ・・・認めたくはないが、中々よかった」

木曾「おお、楽しみだな」

提督「早くしろ」

木曾「おう」
木曾「・・・なぁ提督」

提督「どうした」

木曾「提督に謝らなきゃいけない事があるんだけど」

提督「なんだ?」

木曾「憲兵と提督が話、少し盗み聞きしちゃったんだけど」

木曾「・・・その、憲兵が女だってこと。聞いちゃってさ・・・」

提督「・・・それで?」

木曾「俺、どうしたらいいと思う?長月に、言うか言わないか」

提督「いずれ、知る時が来る。別にお前が気負いすることはない」

木曾「そうかな」

提督「仲間の恋で悩むなんて、お前は優しいな」

木曾「そんなんじゃねぇよ。俺は優しくないって」
木曾「で、さっきのセリフで気になったんだけど」

提督「なんだ」

木曾「長月の事、好きなのか?」

提督「ああ、一目惚れだ」

木曾「そっか・・・色々大変だな」

提督「まぁ、今は色々考えるのも俺の仕事だ」

提督「ただ、あちらの提督のように万能ではないぞ」

提督「あの人は化物だ」

木曾「化物は言いすぎだろ。間違っちゃいないんだろうけど」

提督「化物と思う感覚は、同じ人間だからこそ感じる違和感だ」

提督「お前も少しは感じたことはあるはずだ」
数十分後

提督「今日はこれで終わりだ。ゆっくり風呂に入って睡眠を取るように」

木曾「明日からも頼むぜ」

神通「・・・」

提督「む、長月と武蔵はもう戻ってしまったか」

提督「明日の朝、長月には話すか・・・」

木曾「なにか用事か?なんなら言っておくぞ」

提督「いや、大丈夫だ」
木曾「そうか。じゃ、また明日な」

提督「ああ、おやすみ」

神通「・・・あの、提督」

提督「なんだ?」

神通「えっと・・・」

木曾「神通?どうしたー?」

神通「あ・・・なんでもありません・・・それでは、おやすみなさい・・・」

提督「・・・ああ、おやすみ」

木曾「じゃあな!」

提督「また明日な」

木曾「・・・何を言おうとしたんだ?」

神通「長月ちゃんもう出撃が出来ないと思います・・・」

木曾「出撃?なんでだ?」

神通「・・・一緒に出撃していたあの時以来、私も出撃が怖いんです」

木曾「ああ、だから出撃したいか聞かれた時、曖昧な返事をしたのか」

神通「木曾さんは、怖くないんですか?」

木曾「・・・正直、怖い」

神通「一緒に居ただけの私達が怖いんです。長月ちゃんはもっと・・・」

木曾「そうだな・・・まぁ、今は訓練のことを考えて、日が経ったら一緒に相談しに行こうぜ」

木曾「お前一人だと吃りそうだしな」ニコッ

そう言いながら木曾は神通の頬を突っつく

神通「あう・・・はい、その時はお願いします」ニコッ
四日後

早朝

朝潮「・・・おはよう」

満潮「おはよ」

荒潮「あら・・・朝潮ちゃん大丈夫?少し顔色悪いわよ?」

朝潮「うん、大丈夫。少しフラつくだけだから」

大潮「無理は禁物だよ朝潮!」

満潮「大潮は朝からうっさい」

満潮「無理して倒れてもめんどうだし、今日の訓練は休んだら?」

朝潮「大丈夫よ!本当に少しだけだからやれる!」

荒潮「ダメそうだったらちゃんと言うのよ?」

朝潮「ありがとう。とにかく準備して早く朝ごはん食べに行こ!」
午後

ダダっダダっダダっ

提督「始めてから20分、ずっと走りっぱなしか」

提督(走り込みが主体とは聞いていたが、ここずっと走り込みばかりだな)

提督(合間に合間に筋トレなどを行っているようだが・・・)

武蔵「朝潮!遅れているぞ!」

朝潮「は、はい!すみません!!」

荒潮「大丈夫?」

朝潮「大丈夫・・・」

武蔵「私語は慎め!訓練に集中しろ!」

木曾「武蔵、そこまで厳しくする必要なんてないだろ。少し落ち着けよ」

武蔵「む・・・」

木曾「大体、走ってるだけなんだしつまんなくなるのは仕方ないだろ」
長月「あと五分走ったら休憩二十分だ!もう少し頑張れ!」

艦娘一同「はい!」

神通「・・・」チラッ

神通(・・・朝潮ちゃん、辛そうな顔してる・・・体調悪いのかな)

神通「な、長月ちゃん」ボソッ

長月「ん?なん・・・」

ズシャッ

荒潮「きゃあっ!?朝潮ちゃん!?」

木曾「どうした!?」

大潮「朝潮が倒れました!」

長月「大丈夫か?」

朝潮「はぁ・・・はぁ・・・大丈夫です・・・転んだ・・・だけです・・・」

長月「転んだだけとは言え、膝から出血している。すぐに手当をする」

長月「武蔵、私は朝潮の手当をしてくる。その間のことは任せたぞ」
武蔵「貴様ら!ここで休憩とする!各自二十分後にここへ集合だ!」

朝潮「ごめん・・・なさい・・・朝潮のせいで・・・」

長月「気にするな。立てるか?」

朝潮「はい・・・肩を貸して頂けませんか・・・?」

長月「ああ、しっかり掴まれ」

提督「大丈夫か?」

朝潮「ひ・・・!?」ビクッ

提督が近づくと、朝潮の体が少しだけ跳ねた

提督「・・・」

木曾「提督、気を悪くしないでくれよ」

木曾「よし、長月、俺も手伝う。しっかりつかまってろよ朝潮!」

朝潮「は、はい・・・」
医務室

長月「よし、手当は終わった」

朝潮「ありがとうございます」

木曾「熱も測れ」

朝潮「えっ!?ね、熱はありませんよ?」

木曾「体が熱かった。念のためだ」

朝潮「それは運動していたからで・・・」

木曾「少し落ち着いてからでいい。ちゃんと測れ」

木曾「朝から調子悪そうなのは俺も長月も知ってた」

朝潮「うっ・・・」

木曾「いいか?ちゃんと測れよ?俺は戻って続きをしてくる。長月、任せたぞ」

長月「ああ」
朝潮「・・・すみません」

長月「・・・体調管理をしっかりしろとは言わないが」

長月「こういう時だし、始まったばかりで体も慣れていないだろう」

長月「だが、調子が悪い時は無理をするな」

長月「こんなふうになられた方が困る」

朝潮「・・・はい」

朝潮「あの・・・長月さん。一つ聞きたいことがあるんですけど」

長月「さんは付けなくていい。それでなんだ?」

朝潮「私が秘書艦になる前に秘書艦をしていた私について教えていただけないでしょうか」

長月「・・・知ってどうする?」

朝潮「少しでも近づきたいと思っています」

長月「いくら話したところで、お前はあいつにはなれない」

朝潮「で、でも!同一艦ですし!私も頑張れば・・・!!」
長月「同一艦だとしても、だ」

朝潮「・・・」

長月「まったく同じ人物というのはこの世に存在しない」

長月「何かしら違うところは必ずある」

長月「それは、艦娘だって変わりはない」

長月「あいつは私をさん付けでは呼ばないしな」

朝潮「・・・はい。くだらないことを言ってすみませんでした・・・」

長月「・・・気にするな」
ピピピッ

長月「むっ。やはり熱があるな。今日はこのまま休め」

朝潮「・・・はい」

長月「あとは明石に任せよう。呼んだら私も戻る。大事にな」

朝潮「・・・はい」

長月「・・・」

ガチャ
パタン

朝潮「・・・うっうう・・・」グスッ

朝潮「もっと強くなって・・・みなさんの力になりたい・・・!」

「力が欲しいか?」

朝潮「っ!?だ、誰!?」

スッ

「強く、なりたいか?」

朝潮「ひぃっ・・・!?」ビクゥ
朝潮の目の先にはカーテンの隙間から顔だけ出した提督が

提督「元気か?んなわけねぇか」

朝潮「さ、先ほどから声をかけていたのはし、司令官・・・?」

提督「まぁな。いや、すまない。お前には少し配慮が足りなかった」

提督「いくら違うと言っても、提督に辛い思いさせられたんだ」

提督「こんな仮面野郎のことなんて信用できないし怖いよな」

朝潮(カーテンの隙間から顔だけ出てたのが一番怖かった)

提督「どうだ?食欲はあるか?りんごでも食うか?蜜がたっぷり入ってて美味いぞ」

提督「北斗という品種らしい」

朝潮「えーっと・・・で、では・・・」

提督「丸かじりか?」

朝潮「えっ」

提督「冗談だ」
シャリシャリ

朝潮「上手ですね・・・」

提督「料理はよくやっていたからな。下手だが」

提督「・・・力が欲しいとか、強くなりたいとか言っていたが」

提督「それは、俺が与えられるものではない」

提督「焦らず、ゆっくり強くなっていけばいい」

朝潮「・・・はい」

提督「ほら、食え」

朝潮「ありがとうございます。それでは、いただきます」シャク
一方その頃

無鎮守府

コンコン

無鎮守府朝潮(以降:無朝潮)『司令官・・・少し、二人きりでお話したいことが・・・』

無提「二人きりで?いいぞ」

無提「・・・三日月、私の机の下に隠れろ・・・」ボソッ

三日月「ええっ?つ、机の下ですか・・・?」

無提「いいから」

三日月「は、はい・・・」

ガチャ

無朝潮「失礼します」

無提「ああ、話とはなんだ?」

無朝潮「その・・・記憶が・・・」

無提「記憶?なんの記憶だ?」

無朝潮「沈む寸前の記憶と、その前の記憶です・・・」
無朝潮「その!謝ったりお礼を言わなきゃいけない人の事を思い出して・・・」

無提「そうか」

無朝潮「私はどうしたらいいでしょうか・・・」

無提「お前はどうしたんだ?会いたいのか?」

無朝潮「でも、あんなこと頼んで、またのうのうと会うのは・・・」

無提「私は、その事に関して、一切手を出すつもりはない」

無提「それはお前の問題であり、私は関係ないからだ」

無朝潮「・・・そんな・・・」

無提「・・・お前、旗艦にされないのが不満だと、前に訴えてきた時があったな」

無朝潮「はい」

無提「お前には旗艦は任せられない。真面目すぎるから」

無朝潮「・・・どういうことですか?」
無提「お前は命令を一人で遂行するという癖がある」

無提「・・・まだ、あっちの鎮守府での生活の習慣が抜けてない」

無提「融通がきかないのもお前の欠点だ」

無提「響や初霜のように、根は真面目だが少しおちゃらけてたほうが旗艦やリーダーに向いている」

無提「わかるだろう?」

無朝潮「・・・はい」

無提「・・・分かったなら、この問題は自分で考えろ。考えがまとまったら報告しろ」

無朝潮「わかりました・・・」

無提「・・・今のお前には、たくさんの仲間が居る」

無朝潮「・・・っ!!」

無提「まぁ、前も居たんだろうが、心に余裕が無くなっていただろうしな」

無提「それを忘れるなよ」

無朝潮「はいっ!」
無提「と、いうことだ」ギィ

無提「相談されたら、協力してやれ」

三日月「は、はいぃ・・・///」

無提「どうした?」

三日月「と、とてもイケナイことしてる気分になりました・・・///」ドキドキ

無提「・・・お前もだんだん、響や鈴谷に似てきたな」

三日月「えっ!?あ、あのち、痴女二人と一緒にしないでください!」

無提「・・・頭が痛い」
仮面鎮守府

提督「今まで辛かったろ?」ナデナデ

朝潮「・・・はい」ウルッ

提督「俺に変わっても、辛いことに変わりはないが・・・」

提督「さて、俺はそろそろやることがあるのでな」

提督「あと、辛い時はすぐに誰でもいいから言うんだぞ。それじゃあな」

朝潮「あ・・・はい・・・」

ガチャ

明石「あれ?提督、どうしたんですか?」

提督「ん、丁度来たか。なんでもない。ちゃんと見てやれよ」

明石「はぁ・・・わかりました」
明石「よくわからない人ですね・・・」

朝潮「・・・」

明石「具合はどうですか?少し顔が赤いですけど」

朝潮「えっ!?ち、ちょっと熱が・・・」

明石「微熱みたいですけど、そういう時こそ安静にしているべきですよ」

朝潮「はい・・・」

明石「提督と何かあったんですか?」

朝潮「いえ!!何も!!」

明石「・・・そうですか・・・何かセクハラでもされたのかと」

朝潮「そんな事されてませんよ!」

明石「ならいいんですけど」
その夜

提督「今日はこれで終わりだ」

木曾「だいぶ体の調子が良くなってきてる気がする」

提督「ならよかった」

神通「ありがとうございます」

明石「いえいえ」

木曾「武蔵も長月も先に戻ったか・・・なら丁度いいだろ。神通」

神通「あ、はい・・・あの提督・・・少しお話があるんです」

提督「話?俺にか?」

木曾「おう」

神通「提督のお考えの再興するという事ならば、耳に入れておかなければいけないことなんです」

提督「特にこのあと用事もない。聞こうか」
提督「ふむ・・・お前達は出撃が怖いと?」

神通「あの日、私と武蔵さん・・・」

木曾「あと、俺と長月と朝潮、祥鳳で出撃したんだ」

提督「それが、朝潮が沈んだ時の編成か」

木曾「旗艦は長月だったな」

提督「・・・それで?」

木曾「俺達は朝潮の表情まで見たわけじゃないが」

神通「聞き取れた会話だけでも、私・・・」ウルッ

提督「・・・どんな、会話だった?」

木曾「ああ・・・確かな」
木曾「大破し、海の上に浮かんでいた朝潮と」

神通「朝潮ちゃんを起き上がらせようと手を差し伸べる長月ちゃんは・・・」

無朝潮『・・・私、あの鎮守府に戻りたくない・・・』

無朝潮『お願い長月、私を沈めて欲しい』

長月『馬鹿を言うな』

無朝潮『こんなこと、ひどいお願いだとは思うけど・・・』

無朝潮『・・・あんな人に、使い捨てられるくらいなら・・・』

無朝潮『親友で、ライバルの長月に沈めて欲しい』

長月『・・・』

無朝潮『・・・』

木曾「そんな会話を聞いて少し経つと大きな音がして」

神通「唖然として居た私達を、長月ちゃんの一声で目を覚まし」

木曾「五人で鎮守府に帰投した」
神通「私は、その会話がトラウマで・・・怖くて出撃できません・・・」

木曾「俺も同じさ。仲間にあんな事言われて、沈められる自信はないし」

木曾「聞きたくもない」

神通「ですから・・・」

木曾「おそらく・・・長月も少しは怖いと思う。たくさんの仲間が目の前で沈むのは目の当たりが・・・」

木曾「もし沈められても、あんな平然としてられない」

神通「・・・うっ」ポロポロ

提督「・・・その話は本当なんだな?」

木曾「ああ」

提督「そうか・・・そこまで追い詰められてたんだな。前の朝潮は」

木曾「・・・助けてやれなかったのが心痛いがな」
提督「・・・なら、俺も努力するようだな・・・」

木曾「・・・は?」

提督「再興に必須なのはお前らの頑張りだけだった。俺の頑張りは雀の涙ほどにしか必要ではない」

提督「だが、その話が本当なら、俺の頑張りも必須になるな」

提督「神通、もう泣くな」スッ

神通の涙を自分のハンカチで拭い取る提督

神通「あ、ありがとうございます・・・」

提督「・・・俺自身の認識が甘かった。それほど、お前達の心に傷が深く入っていたか」

提督「特に、お前は普段から明るいやつだから騙されたぞ」グリグリッ

木曾「乱暴に撫でんなよぉ・・・」

提督「言ってくれてありがとう」
提督「お前達の話はよくわかった。それなら、少し長月にも話を聞かないとな」

提督「お前達が話してくれたことは言ってもいいのか?」

木曾「俺は構わんぞ」

神通「私も別に・・・」

提督「了解。話はそれだけか?」

神通「私はこれだけです」

木曾「ああ、そうだな」

提督「そうか。それじゃあ、お疲れ様、もう戻っていいぞ」

木曾「おやすみ提督」

神通「おやすみなさい提督」

提督「ああ、おやすみ」
提督「はぁ・・・朝潮自体の生存は確認されて居るが・・・中々、根が深いな」

明石「そうですね・・・心の問題は私達にはどうしようも・・・」

提督「いや、この問題は俺が、俺だからこそ解決できる問題だ」

明石「それはどういう・・・?」

提督「解決法を考え出すのは簡単だ。実行するには難しいがな」

明石「それって・・・」

提督「いくら傷つこうがあの提督のところに戻りたい」

提督「・・・そう思えるような提督に、俺がなる事だ」

提督「そうすれば、死を選ぶような事を言う不安はなくなる」

提督「そうなるのが大変なんだけどな」

明石「ただの変態仮面だと思ったんですけど、少しは考えてるんですね」

提督「お前今すごく失礼なこと言ってるぞ」

明石「知ってます」
翌日の夜

長月「・・・うむ。前の感覚を思い出したてきたぞ」

提督「そうか。それは良かったな」

長月「・・・感謝している」

提督「いい心がけだ」

長月「それより、今日は何故私が最後なんだ?いつも木曾か神通が最後だろう」

提督「今日はお前と話をしたかったんだ」

長月「セクハラ発言以外だったら、受け付けるぞ」

提督「・・・」

長月「・・・」

長月「おい」

提督「冗談だ」
提督「明日より、本格的な訓練に入るんだろう?」

長月「ああ、勉強の時間を削って午前中に勉強と基礎運動、午後に訓練に入る予定だ」

提督「ふむ」

長月「もう班の割り当てはできているのか?」

提督「もちろんだ。演習、及び遠征を経験している者は神通と武蔵が」

提督「遠征も演習も経験のないものは、木曾、祥鳳、古鷹の三人に任せる」

長月「・・・私はどうすればいい?」

提督「お前は俺の秘書艦だ。なるべく俺と共に行動してもらう」

提督「そして、二組の指導内容を把握して、間違っているところを指摘するんだ」

長月「・・・指導者の指導者になれというのか?」

提督「ああ、簡単に言えばな」

長月「私には荷が重いと思うんだが」

提督「この鎮守府ではお前以上に練度が高い奴は居ない」
長月「・・・ああわかった。やってみよう」

提督「それでなんだが、俺と共に行動するにあたって、一つ提案がある」

長月「なんだ」

提督「俺と同じ部屋で寝泊りをしてもらう」

長月「却下だ!!」

提督「何故だ!」

長月「貴様の様な変態と同じ部屋で寝れるものか!!」

提督「大丈夫だ!初めては任意の上でしか襲わん!」

長月「信用できるかぁ!」
提督「まぁ、襲うとかそういう事はしない。変態行動もなるべく慎もう」

長月「・・・本当か?」

提督「ああ」

長月「・・・わかった。とりあえず同じ部屋で寝てやる」

長月「だが、少しでも変な動きすれば、貴様を追い出すぞ」

提督「話は決まりだな」

提督「それから、あの拷問部屋?だったか。あそこはどうしようか迷っている」

長月「あまり聞きたくない話だな」

長月「あの部屋から、何人の仲間の悲鳴を聞いたと思う」

提督「だが部屋の少ないここではなるべく使える部屋を増やしたい」

長月「それはわかるが・・・」

提督「今はまだ皆の教育が行き届くまで新しい娘を迎える気はないが」

提督「迎えるまでに使える部屋を全部開放したいんだ」
長月「・・・貴様はどうしたいんだ?」

提督「あの部屋を遊戯部屋にしたい」

提督「仲間同士の仲をよくするためのものを置きたい」

長月「・・・」

提督「お前達四人は特にな。仲間の絆を大切にしている」

提督「前任の提督に洗脳されず、抵抗していた四人だと資料で読んだ」

提督「自分たちの心を奮い立たせながら支えあったんだろう」

長月「・・・」

提督「まぁ・・・朝潮はあいつの一番近くに居たんだろうから、救えなかったんだろう」

提督「そして、大破の時の痛みで洗脳が解け、帰りたくないと・・・そう言ったんだろう」

長月「何故そのことを知っている・・・?」
提督「出撃が怖いんだろう?」

長月「・・・っ」

提督「一応、木曾と神通のタレコミだ」

提督「長月、これだけは教えておく」

長月「なんだ・・・」

提督「仲間に心配させるのはいいが、不安にはさせるな」

提督「・・・怖いなら怖いって言え。不安なら不安って言え」

提督「木曾達はお前を心配してるが、信頼されているのかと不安にも思っているはずだ」

提督「わかるか?お前も気持ちがわかるだろ」

長月「ふざけるな!!私のことでこれ以上仲間に心配などさせるわけには・・・!!」

提督「耳付いてんのかお前」

少し怒った口調で圧力をかける

長月「・・・」
提督「俺は、仲間と思った奴は今まで居ない」

提督「俺は人を信用するということはしなかったからな」

提督「・・・だが、まだここに来て一週間だが、俺はお前達が好きだ」

長月「・・・」

提督「正直、楽しい。お前達と一緒に居るのは」

提督「相談はしてくれ。信頼されていないようで寂しい」

長月「・・・考えておく」

提督「それから、お前の出撃の恐怖の原因はわかっている」

提督「仲間のあんな姿、見たくないんだろう?殺すようにお願いする姿なんて」

長月「・・・ああ」

提督「その点は俺に任せておけ」
提督「俺が、この提督の下でしか働きたくないと思わせるような提督になる」

長月「っ!」

提督「そうなれば、戻りたくないと言う奴は居なくなる」

提督「そうすれば、不安はなくなる。だろう?」

提督「まだ一週間だから信用できないとは思えんが」

提督「・・・俺を信じてみてくれ。必ず、お前らの為になるように動こう」ナデナデ

長月「」ドキッ

長月「・・・子供扱いか」

提督「まだ強情な子供だよ。嫌がらないのか?」ナデナデ

長月「抵抗するのも馬鹿らしい・・・好きにしろ」

提督「えっ?好きにしていいのか」

長月「やはり貴様は信用できん」

提督「ははは」
提督「まぁ、それだけだ。俺のことはまだ信用しなくてもいいが」

提督「自分の信用している仲間だけにはちゃんと話をしてやれ」

長月「ああ」

提督「いい子だ」ナデナデ

長月「・・・最近、いろんなやつに手を出しているという噂を耳にしてたが」

長月「こういうことか」

提督「とんでもない噂が流れてんのな」

提督「話はこれで終わりだ。今日はとりあえず戻っていい」

長月「ああ、いつ一緒の部屋になるんだ?」

提督「もう少し準備出来たらな」

長月「そうか・・・ではな」

提督「ああ」
ガチャ

長月「・・・で?立ち聞きしてたのか」

木曾「おっす」

神通「ごめんなさい・・・」

長月「いや・・・むしろありがとう。今まで不安にさせて悪かったな」

木曾「吹っ切れたのならそれでいい」

神通「よかったです。すこし、表情が明るくなって」ニコッ

長月「ああ、ありがとう」ニコッ

長月「今日はすこし疲れた。明日からまた訓練がきつくなる。早めに休もう」

神木「おやすみ」

長月「おやすみ」

長月(・・・しかし、先ほど司令官にすこしときめいてしまった)

長月(気が多いのはいけない。私が好きなのは憲兵だ・・・)

長月(好きなのは憲兵だが・・・何故だろう。すこしあいつに惹かれている自分が居る)

長月「提督と言う人種は、嫌いなんだがな・・・」ボソッ
翌日

ダッダッダッダッ

提督「ふむ・・・だいぶ綺麗な足音になってきたな」

大淀「にしても、昨日はかっこよかったですね提督」

提督「なんだ。見てたのか」

大淀「ええ。絆と言う言葉を使うのもちょっと意外ですけど」

提督「・・・ふん、絆なんてくだらん」

大淀「えっ」

提督「あんなもの、あいつらを安心させるための言葉に過ぎない」

提督「俺自身、そんなのも信用していない」
大淀「過去に、何かあったんですか?」

提督「なんてことはない。親に見捨てられたことがあっただけだ」

大淀「えっ」

提督「親に見捨てられた時点で、俺は誰も信用しないことにしている」

提督「さて、俺にもすこしやらなければいけないことがある」

提督「部屋の掃除を取りかからなければ」

大淀「提督・・・」

提督「・・・このことは、あいつらには伝えるな」

提督「俺には、この鎮守府を再興する以外に興味はない」
ピピピピピ

提督「ん?」

ガチャ

提督「はい。こちら・・・なんだ。あなたでしたか」

無提『どうだ?調子は』

提督「ええ、順調ですよ。何か御用で?」

無提『いや?ただ、隣の奴がうるさくてな』

無提『たまには孤児院に顔を出せと騒いでいてな』

提督「・・・」

無提『まぁ、たまにでいいから顔を出してやってくれ』

無提『姉さんも、お前を息子だと思ってるからな』

提督「・・・あなたに、すこし聞きたい事があるんですけど」

無提『なんだ?』
無提『ふむ・・・絆、か・・・』

提督「俺は信用していない。あなたは、どうなのかと思いまして」

無提『そうか。お前は親に見捨てられたんだったな』

無提『親子の絆は大切なものだからな。そう思うのは仕方ない』

提督「・・・はい」

無提『・・・お前は、私を信用していないのか?』

提督「・・・いえ」

無提『誰かとの絆なんて簡単に壊れるものだ』

無提『逆もまた然り』

無提『徐々にその繋がりを強くしていくのは大変だが』

無提『肉親だけが、確実な絆を持っているわけではない』
無提『他人でも家族になれる。そう考えるんだ』

提督「・・・」

無提『お前のことは私も息子や弟みたいなものだと思っている』

提督「ありがとうございます」

無提『まぁ、じっくり、ゆっくり絆を深めていけ』

無提『提督なって一週間、好きな子もできたんじゃないか?』

提督「えっいやっそんなことは・・・」

無提『ははは、お前はわかりやすいな』

無提『その仮面をつけたお前は、本当のお前なんだろ』

提督「顔が見られない分、本当の自分を出せますから」

無提『ああ、お前は今までマジメくんを演じてきていたからな』

提督「かなり居心地はいいです」

無提『それはよかった』
孤児院

無提「ああ、それじゃあな。何か困ったらすぐに連絡しろ」

提督『はい。それでは』

ピッ

三日月「はぁ・・・はぁ・・・あ、あの子達相変わらずの体力・・・」

無提「お疲れ様」

三日月「はい・・・お話は終わったんですか?」

無提「ああ、子供達はもう寝たのか?」

三日月「はい、疲れて寝ちゃいました」

無提「そうか。ありがとう三日月」ニコッ

三日月「えっ///」

三日月「い、いえ、私も子供は好きなので・・・えへへ」

無提(あいつの心は変にねじ曲がってしまったな・・・)

無提(まぁ、艦娘と戯れて、少しくらい心が晴れるといいな)
数十分後

三日月「スー・・・スー・・・」スヤスヤ

無提「・・・疲れて寝たか」ナデナデ

無提姉「おや、随分可愛らしくも懐かしい光景だね」

無提「そういえば・・・よく妻に膝枕をしていたな」

無提「ふふ、こうやって頭を撫でてな・・・」

無提「普段はしっかりものだが、こういうところはまだまだ子供だ」

無提姉「・・・いつになったら、この子達の気持ち、応えてあげるの?」

無提「・・・妻の代わりとして愛することは出来ん」

無提「そう見てしまっている自分が嫌になるがな・・・」
無提姉「抱いてあげる事はできるんじゃない?」

無提「馬鹿を言うな。私はもう勃たん」

無提姉「鈴谷ちゃんが言ってたけど、それは嘘だそうじゃない」

無提姉「朝勃ちはしてるって言ってたよ」

無提「あいつは朝からどこを見てるんだ」

無提姉「知ってる?あんたが連れてくる女の子、うちの男の子が好きになっちゃったみたい」

無提姉「何人も告白してる見たいだよ。断られてるみたいだけど」

無提姉「大体が、あんたに一度でも抱かれたら考えるって言ってたみたい」

無提「・・・通りで、高校生の子も中学生の子も私に少し冷たかったのか」

無提姉「あんたの子達の為にも、こっちの男の子達の為にも、少しはけじめつけたら?」

無提「・・・この子も、告白はされていたか?」

無提姉「されてたわよ。まぁ、鈴谷ちゃんや響ちゃんみたいな理由ではなかったけど」

無提「そうか・・・」
無提「・・・」ナデナデ

三日月「ん・・・」

無提姉「あいつはもう、部下と体の関係は持ってるって聞いてるけど」

無提「ああ、知ってる」

無提姉「あいつもあんたと同い年、それでもそうやってるんだから」

無提姉「ね?」

無提「ああ・・・少し、検討しておこう」

無提「さて、三日月が起きたら私は帰るとしよう」

ミー「・・・」ドスドスッ

三日月「うぅ・・・く、苦しい・・・」

無提「こいつに乗っかられたらそりゃ苦しいだろうな」

無提姉「こいつは私が信用した相手にしか懐かないみたいだぞ」

無提姉「ペットは飼い主に似るとよく言ったもんだな」

無提「そうだな」
一時間後

無提「起きないな・・・しょうがない。背負って帰るとしよう」

無提姉「ああ、ちゃんとあいつにも来るよう言っておいてくれ」

無提「・・・よっと、もう言ってある。それじゃあな」

無提姉「頑張れよ」

無提「姉さんも」

少し歩いて

無提「・・・朝潮の事をあいつに話すのを忘れたな・・・」

無提「ああ、青葉にも少し話があるんだった・・・」

無提「ああ・・・奴にも電話をして理由を聞きたかったんだ・・・」

三日月「ん・・・司令官・・・好きです・・・」スヤスヤ

無提「・・・よいしょ。まぁ、今はいいか。ゆっくり帰るとしよう」
仮面鎮守府

提督「・・・それで、だが」

長月「ふむ、どうするんだ?」

提督「正直、あまりやることがない」

長月「そうか。建造とか開発はしないのか?」

提督「戦力を増やすのは今居る人材を戦力にしてからだ」

提督「装備も一緒だ。結局使える者がいなければ宝の持ち腐れだ」

長月「そうか」

提督「そうだ。お前達四人の艤装についてだが、解体させてもらうぞ」

長月「どういうことだ」

提督「誰も整備していないので錆だらけだ。使い込まれてガタも来ている」

長月「むう・・・少し残念だ。愛着はあったんだがな・・・」
提督「訓練の様子はどうだ?」

長月「まぁ、心配は無用だ」

長月「神通、武蔵は厳しいがビシバシやっている」

長月「教えられている方も必死に付いて行っている」

長月「他はゆっくりだが基礎中の基礎を教えている」

長月「今のところ、私から支持することは無いな」

提督「そうか・・・」

長月「・・・やることが無いのなら、相談したいことがあるんだが」

提督「なんだ?」

長月「憲兵に告白したい」

提督「」
提督「どうした突然」

長月「・・・やはり、浮ついた気持ちのままでは訓練に身が入らない」

長月「今度、憲兵が来るとき、時間を作って欲しい」

提督「告白は、するんだな?」

長月「ああ」

提督「そうか」

長月「頼めるか」

提督「どういう結果になってもいいんだな?」

長月「・・・正直、振られる覚悟は出来ているが、もし受け入れられたら・・・」

長月「どうしたらいいかわからない」

提督「変なやつだな」
長月「貴様に変なやつ呼ばわりは心外だ」

提督「お前はあいつと付き合いたいのか付き合いたくないのかはっきりしていない」

長月「・・・」

提督「そんな状態で告白してどうするんだ」

長月「それは・・・」

提督「俺が告白を遮るつもりはない」

提督「お前のことはお前で決めろ」

長月「自分がおかしい事を言ってるというのは分かっている」

長月「だが、中途半端な気持ちでこれ以上、過ごして行くのは嫌なんだ」

提督「中途半端な気持ち?」

長月「・・・貴様には関係ない」

提督「・・・そうか。好きにしろ」

提督「それで、憲兵だが、一週間後に来る予定になっている」
長月「はぁ!?」

提督「お、珍しく取り乱したな」

長月「あ、いやすまん。言っておいてなんだが、憲兵はこの鎮守府に入り浸ってはいないか?」

提督「俺の事が好きなんじゃね?」

長月「そういう冗談はやめろ」

提督「はっはっはっ、安心しろ。憲兵とはそういう関係ない」

提督「ただ、ちょっと裏でやっていることがあるんだ」

提督「内緒だがな」

長月「・・・気になるぞ」

提督「・・・私が着任してから一ヶ月半にはわかるさ」

長月「貴様が決めた日付の日か」

提督「それまで待て。その時に秘密を教えてやる」

長月「そうしよう」
それから三日後の夜

長月(あと四日のうちに覚悟を決めなければ・・・)

長月(しかし、告白なんて初めてだし、どうしたものか・・・)

木曾「ん?長月!」

長月「木曾か・・・どうした?」

木曾「いや、なんかすげー難しい顔してるから気になって」

長月「あー・・・そうか。そんなに難しい顔していたか」

木曾「この間からずっとその調子だろ?他の連中も心配してたぞ」

長月「ああ、うん。まぁ・・・気にするな」

木曾「提督と同じ部屋で寝てるらしいけど、それが原因か?」

長月「いや、そうではない」
長月「それはあまり関係ない。むしろあいつが大人しすぎて不気味だが」

木曾「そうなのか。普段の提督ってどんな感じなんだ?」

木曾「俺達って訓練でほとんど話さないし、あいつの事よく知らないんだ」

長月「私も詳しいわけではない。一緒の部屋に寝るようになってわかったんだが」

長月「あいつはいつ寝てるかわからん」

長月「私が寝る前に寝ることはないし、私が起きる頃には起きている」

木曾「えっ。長月も結構夜遅いし、朝早いよな?」

長月「夜と朝の時間も有効に活用しなければならないからな」

長月「それ以外に、あいつはほとんど本しか読まない」

木曾「どんな?」

長月「知らん」

長月「私と話す事なんてほとんどない」

長月「たまに思い出したかのようにセクハラ発言するくらいだ」
木曾「・・・あいつ、本当にお前の事好きなのかな」

長月「さぁ・・・今は憲兵にしか興味がない」

木曾「」ドキッ

長月「ああ、そうだ。四日後に憲兵に告白するつもりなんだ」

木曾「うぇっ!?」

長月「どうした?」

木曾「い、いやっ!?い、いいんじゃないか!?」

木曾(言ったほうがいいのかな?いやでも・・・)

長月「告白する練習に少し付き合ってもらえないだろうか」

木曾「えーっとあー・・・武蔵が相手の方がいいんじゃないか?」

木曾「あいつの方が男前だし!」
長月「・・・お前の方が男前だと思うが」

木曾「そんな事ないだろっ!?」

長月「いや?」

長月「まぁ、恋愛に関する雑誌を読んでいる乙女でもあるがな」

木曾「なんで知ってんだ!」

長月「布団の下に隠してあるのを知っているぞ」

木曾「イケメンって言われたりもするけど俺だって年頃の女なんだし・・・」

木曾「そ、そういうのに憧れるのは当然だろ?」

長月「クスッ・・・ああ、そうだな」

木曾「・・・くぅ///」

長月(可愛いなこいつ)
長月「バラされたくなかったら協力してもらおうか」

木曾「わかったよ!誰にもバラすなよ?」

長月(神通と武蔵も知っていることは黙っておこう)

木曾「それで・・・俺はどうすればいいんだ?」

長月「私の告白がどれだけ心惹かれるか見て欲しいだけだ」

木曾「俺が判断すればいいんだな?あんまり期待すんなよ?」

長月「分かっている。もし、気づいたことがあれば、アドバイスして欲しい」

長月「恋愛に関する本で学んだ知識でな」

木曾「俺を恥か死にさせるつもりか」
その頃、執務室

朝潮「司令官、お茶どうぞ」

提督「ああ、ありがとう」

朝潮「・・・」ソワソワ

提督「・・・何か用か?」

朝潮「な、何かご命令はありませんかっ!?」

提督「特にはない。訓練で疲れてるんだから休んでおけ」

朝潮「・・・はい」ショボン

朝潮はトボトボと執務室から出て行った

武蔵「・・・あいつに何したんだ?」

提督「何もしてねぇよ」
武蔵「それより、私達はいつになったら出撃出来るんだ?」

武蔵「このままでは腕が鈍ってしまって仕方ない」

提督「安心しろ。それ以上鈍ることはない」

武蔵「・・・で?いつ出撃させるつもりだ?」

提督「お前は怖くないのか?」

武蔵「何の話だ?」

提督「カクカクシカジカ」

武蔵「私は別になんとも思っていない」

武蔵「戦場に居るのだ。それくらいの覚悟は必要だ」

提督「本当にそう思ってるのか?」

武蔵「何が言いたい」
提督「そんな覚悟があるのなら」

提督「駆逐艦である長月に戦艦であるお前が何故従う?」

提督「初めて会った時からだ。ずっと不思議に思っていた」

武蔵「・・・」

提督「俺の事はまだ信用してないようだ。話す気もないだろう」

武蔵「ふん。よくわかってるじゃないか」

提督「話さなければ出撃は一生させんが」

武蔵「脅迫か!」

提督「どうかな」
武蔵「はぁ・・・」

武蔵は難しい顔をしてため息を吐いた

武蔵「・・・少し、考える」

提督「なんだ。そんなに恥ずかしいことなのか」

武蔵「いや、そうではないが・・・貴様の性格が掴めんからな」

武蔵「貴様の事がよくわからん以上、こちらの事を話す気にもならん」

提督「ふむ。一理ある」

提督「なんとなくでお前の考えはわかってるが」

提督「確認してみてもいいか?」

武蔵「・・・ほう。言ってみろ」
提督「俺も長月に会った時、感じた威圧感。恐怖感」

提督「そして、自分が前任に洗脳されかかっていた事に対する罪悪感」

提督「それに怯えているんだろう」

提督「この鎮守府での経験は長月が一番らしいじゃないか」

提督「それに、お前の態度にも他と比べて少し違和感があったしな」

武蔵「・・・好かんな」

提督「ん?やはり図星だったか?」

武蔵「もういい。その通りだ」

武蔵「四人の中で、私だけがあのクズに心を蝕まれていた」
提督「その時、間違ったことを言って長月にしばかれたんだろう」

それを聞いて目を見開く武蔵

武蔵「何なんだお前は・・・奴に聞いたのか?」

提督「いや?長月に聞いたとして、お前の許可なしで教えると思うか?」

武蔵「・・・無いな」

武蔵「まぁ、何にせよ、私の問題はさほど重要ではない」

提督「もちろんだ」

武蔵「そこまではっきり言われるとさすがに腹が立つな」

提督「ははは、恐怖感を拭うのは無理だ」

提督「それに、長月の威圧感もな」
武蔵「・・・ふふ、不思議な奴だ」

武蔵「どうしてそこまで人の心見透かす?」

提督「さぁな。小さい頃の環境によって得た特技が、今役に立っているだけだ」

武蔵「詳しくは興味ない」

提督「でもまぁ、考え方自体前任の提督に間違いはない」

提督「間違いはないし、感謝せねばな」

武蔵「どういうことだ?」
提督「恐怖は統率には必要な物だ。それは間違いない」

提督「だが、前任は必要以上にそれを使ってしまった」

提督「度をこさなければあの化物の逆鱗に触れることもなかったしな」

提督「そして、必要以上に使ってもらったおかげで、どうだ」

提督「ちょっと優しくしたくらいでコロッと俺に懐いただろ?」

武蔵「・・・朝潮の事か?」

提督「俺としては、ツンツンした女をじっくりと懐かせる方が好みだが」

武蔵「・・・前言に他意はないようだな」

提督「何のことだ?」

武蔵「いや、こっちの話だ」
武蔵「貴様の考えはよくわかった」

武蔵「ふむ・・・」

武蔵「異性と話してて、楽しいと思ったのは久しぶりだ」

武蔵「感謝する。それではな」

提督「何かあったらすぐに相談しろよ」

武蔵「ああ、検討しておこう」

そう言うと、武蔵は執務室を出て行った

提督「・・・ふう。まだまだだが」

提督「この鎮守府の連中は徐々に心を開いて来て居る」

提督「一番重要な長月の心を開きたいものだな」
そして三日後の告白前夜

提督・秘書艦の部屋

提督「・・・」ペラッ

長月(告白の準備は整った。木曾を相手に練習もした)

長月(・・・だが、心の準備はまだ出来ていない)

長月(本人を前にして、私は正直に話せるだろうか)

提督「長月」

長月「っ!?」ビクッ

長月「なんだ!?急に話しかけるな!」
提督「おっと、それはすまん」

提督「まだ顔に困惑の影があるからな。まだ心の準備が出来ていないのかと思って」

長月「・・・正直、まだ出来てはいない。だが、貴様には関係ないだろう」

提督(俺が場を設けてやるのに何言ってんだこいつ)

提督「言っておくが、お前は玉砕するぞ」

長月「なんだとっ?」

提督「あいつも、人の顔をよく見る奴だ。そんな不安な顔をしてたらダメだ」

提督「まぁ、じゃなくても玉砕するだろうがな」

長月「・・・言ってくれるな・・・絶対に明日、憲兵には首を縦に振ってもらう」
提督「ほう。ならば賭けをしよう」

長月「いいだろう」

提督(不安と怒りで周りが見えなくなっているな)

長月「私と憲兵が付き合うことになったら、その仮面を剥ぎ取ってやる」

提督「いいだろう。ただし、玉砕したら」

提督「俺のオフトゥンで一緒に寝てもらおうか」

長月「」

提督「安心しろ。エロいことは太ももや髪を撫でるぐらいに止めてやる」

長月「貴様の自制心は信じていいものなのか?」

提督「マッサージの時に我慢したことを評価するべき」

長月「はぁ・・・一回だけならそれでいいが」

提督「やった!!」グッ

長月「貴様、ここに来た時にはガッツポースをするキャラではなかっただろう」

長月「普段二人きりの時には、こんなに喋らないくせに」

提督「やっと打ち解けてきただけだ!」

提督「最初の頃は緊張してたしな」

長月「意外だな」

提督「この仮面がなかったらお前達の前にすら出れなかっただろうな」

長月「・・・ふふ、ありえんな」

提督「なんだと」

長月「なんにせよ明日だ。今日は早めに寝させてもらうぞ」

提督「ああ」
提督(徐々にだが、長月も笑顔がこぼれるようになった)ペラッ

提督(だが・・・)

提督(まだ愛想笑いよりはちょっといい笑顔ぐらいだ)

提督(こいつもこいつで心に小さな不安の種が根を張っているんだろう)チラッ

提督は、長月の方を見つめて、呟く

提督「もし・・・こいつが轟沈したら、その種は花開くのだろうか」

提督「・・・確かめようがないことだな」

読んでいる本に再び目を落とした

提督「・・・賭けは俺の勝ち確定だがな・・・」

そして翌日の夜
執務室

提督「ふむ、順調か」

憲兵「はい。はぁ・・・あなたとあの人の前じゃないと」

憲兵「さらしが外せないのが辛いですね・・・」

提督「・・・それでなんだが、少し頼みたいことがあるんだ」

憲兵「なんでしょうか?」

提督「この鎮守府の出入り口で、待ってる人が居るんだ」

提督「時間は大丈夫だろう?」

憲兵「ええ・・・もしかして・・・」

提督「お前には、少し辛い事をさせるが」

憲兵「・・・前々から話は聞いていましたし、覚悟はしてましたよ」
提督「すまんな」

憲兵「いいえ、大丈夫です」

憲兵「・・・それでは、行ってきます」

憲兵「次に、会うときは・・・一ヶ月後ですね」

憲兵「あなたが、提督としての与えられた最後の日・・・その時に」

提督「・・・ああ、そうだな」

憲兵「それでは・・・」
鎮守府出入り口

長月「・・・さすがに緊張するな」

長月「何人か野次馬が来ているみたいだしな」

武神木「」ギクッ

長月「邪魔さえされなければ別にいいか・・・」

憲兵「・・・」

長月(ん、来たか・・・)

長月(木曾と練習した事をやればいいんだ。うん、大丈夫)

憲兵「長月、あいつから聞いたぞ。俺に話があるんだって?」

長月「あ、ああ・・・とても、大切な話なんだ」
憲兵「それで?」

長月「回りくどいことは嫌いだ。だから単刀直入に言う」

長月「実は・・・私は、あなたの事が」

長月「・・・っ!?」

長月(・・・なんだ。この気持ち)

憲兵「どうした」

長月「・・・いや、やはり、特に話もなかった」

憲兵「えっ?」

長月「・・・わざわざ呼び止めてすまなかった。なんでもない」

長月「それではまた」

憲兵「・・・」
武蔵「ふん・・・やはりダメだったか」

神通「告白はやっぱり勇気がいるものですからね」

木曾「あの長月が、自分の都合で何もせずに走り去るなんてありえん」

木曾「俺と練習したんだ。その苦労を蹴るわけがない」

武蔵「・・・練習したのか?お前と」

木曾「えっ!?あ、ああ、うん」

木曾「何も理由無く、あんな事するわけがない」

神通「・・・何か腑に落ちない事があったのでしょうか」

木曾「んー・・・今は落ち着くまで放っておくしかないだろうけど」

武蔵「・・・くだらん」
提督、秘書艦部屋

ガチャ

提督「ん?話は終わったのか?」

長月「・・・告白は、していない」

提督「ほお」

長月「何故だか知らんが、あいつを目の前にしたら」

長月「今までの好きだという気持ちが無くなった」

長月「・・・どうしてだか、あいつがあいつには見えなくなった」

長月「雰囲気がまるで違った。そんな事で冷める私は最低な女だが・・・」

提督「女心と秋の空という言葉もある。気持ちが変わるのは仕方ない」

長月「・・・昨日の賭けは私の不戦敗だ。実行すらできなかったのだからな」

長月「しなきゃいけないんだろう?添い寝」

提督「おう」
布団の中

提督「・・・」ペラッ

長月「・・・」

長月「触らないのか?」

提督「触って欲しいのか?」

長月「そんなわけじゃないが」

提督「恋愛のことで落ち込んでる女を触るほど、無神経な男ではない」

長月「最初からそのつもりだったのか?」

長月「・・・貴様は私の事が好きなんだろう?」

提督「まぁな」
長月「よっ・・・」モゾモゾッ

提督「ん・・・どうした?」

長月「・・・」ピトッ

提督「っ!?」

長月が提督の背中にピタッとくっついた

長月「・・・少し、このままでいさせてくれ」

提督「・・・」

長月「意外に、背中が広いんだな」

提督「男だからな」
長月「・・・一度だけ、憲兵に背負ってもらった事があるんだ」

長月「ベッド生活の時、トイレの帰り道で足を挫いて動けなくなっていると」

長月「偶然あの人が、手を差し伸べて、背負ってベッドまで連れて行ってくれた」

長月「背中が広くて、とても安心した」

長月「それが好きになったきっかけだった」

提督「・・・俺の背中はどうだ?」

長月「・・・安心する」

提督「それはよかった」

そのまま、しばらくすると小さな寝息が提督の後ろから聞こえた
提督「・・・」

提督「色々と予定が崩れたな・・・」

提督(女の勘というのは恐ろしいな)

提督(あの憲兵が本物ではないと感じてしまったか)

提督「・・・はぁ」

長月を起こさないように布団から出る提督

提督「・・・仕方ない」

提督「予定を組み直さなければな・・・」

提督(・・・俺が、本気で長月に惹かれつつあることも、予定外だが)

提督(しかし、長月が俺に心を開いてくれるのなら)

提督(これで二週間は縮められる)

提督「化物と、憲兵とあの人に連絡をしておかなければな・・・」

提督「南方棲戦姫との打ち合わせもある」

提督「遠征や演習も開始せねばならん・・・明日から、更に忙しくなるな」
それから更に一週間後

執務室

木曾「帰ったぞ。今回も大成功だ」

提督「おかえり。三日前より、遠征を行っているが、調子はどうだ?」

皐月「普段の訓練に比べれば余裕だよ余裕!」

満潮「まだまだね。全然手応えがないわ」

提督「お前達がやる気まんまんなおかげで、随分と資材が溜まっていくぞ」

木曾「連続大成功なんだ。そろそろ褒美とかはないのか?」

提督「ふむ。ご褒美か。大したものは上げられんぞ」

提督「喜ぶかわ分からないが、文月から順にこっちに来てくれ」

文月「はい?なんですか?」

提督「よく頑張ったな」ポン

文月の頭を優しく撫でた
文月「ふぇぇ!?こ、これなんですか?なんですか!?」

提督「化物提督が、頭を撫でてやると喜ぶって前に言っていたんだが」

提督「嫌だったか?」

文月「そ、そんなことは・・・もうちょっとして欲しいかなぁ?なんて・・・」

提督「そうか!それならよかった!」グシャグシャ

文月「えへへ、髪の毛ぐちゃぐちゃになっちゃうよぉー!」

提督「次は皐月だな」ワキワキ

木曾「なんか、手がエロいな」

提督「頭を撫でるだけだ。エロいことなんてあるもんか」
提督「さて、皐月、文月、満潮、荒潮、大潮の五人は部屋に戻った」

提督「さぁ、木曾の番だ!」

木曾「いや、俺はいいよ。遠征なんて慣れたもんだし」

木曾「久しぶりに海に出れただけで褒美だしな」

提督「・・・そうか。じゃあ、俺の仮面コレクションの一つをやろう」スッ

木曾「仮面、それだけじゃなかったのか・・・」

提督「時風の仮面と言うものだ」

木曾「・・・」カチャ

提督「うむ。似合っているぞ」

木曾「めちゃくちゃ視界悪くなるんだなこれ」

提督「うん」
木曾「ありがとう。これはこれでかっこいいから貰っておくよ」

提督「ふむ。喜んでもらえてよかった」

木曾「それより、先週からずっと長月の元気がない」

提督「ああ、そうだな・・・」

木曾「原因は大体分かるんだけどな」

提督「覗いてたんだろ?知ってるぞ」

提督「・・・それで、今日は少し長月と出かける」

提督「化物と少し待ち合わせしてるんだ」

提督「元々こちらに居た朝潮が、長月に会いたいと言っていたらしい」

木曾「朝潮が・・・ふふ、そうか」
提督「ということで、少し留守にする」

木曾「長月は知っているんだろ?」

提督「ああ」

木曾「そうか。なら、言うことはない」

木曾「それじゃ、長月を・・・」

提督「もう出入り口で待たせて居る」

木曾「なんだ。呼ぼうと思ったんだが」

提督「気遣いありがとう。それじゃ、行ってくるぞ」

木曾「ああ」

ガチャ

執務室を出た所、武蔵と遭遇

木曾「よっ武蔵」

武蔵「ん?うわぁっ!?何なんだ貴様ら!?」
鎮守府出入り口

長月「遅かったな」

提督「うむ。遠征組にご褒美を上げていたら少し遅くなった」

長月「何をやったんだ?」

提督「頭を撫でてやった」

長月「そうか。喜んでたか?」

提督「喜んでいた」

長月「それならよかった」

提督「では行こうか」

長月「どこへ行くんだ?」

提督「着いてからのお楽しみだ」
無口鎮守府

無提「南方棲戦姫、あいつとの約束はちゃんと守るんだろう」

南姫「ええ、もちろんよ。ただ、その約束を二週間も早めるなんて・・・」

南姫「どうしたのかしら・・・」

無提「色々な予定が早まったんだろう」

無提「あいつは色々なプランを考えるからな」

南姫「約束については、問題はないだけれど」

南姫「・・・前からちょっと耳にする。私が目撃される情報よ・・・」

無提「お前は一人ではないのか?」

南姫「よくは知らないけど、私だって元は艦娘だったはず」

南姫「私は私しかいないけど、南方棲戦姫と言う深海棲艦内の種族としては一人ではないと思うわ」

南姫「深海棲艦のイ級やヲ級、その他の艦だって複数居るもの」

無提「なるほど」
南姫「私が居た海域に目撃証言があるのよね」

無提「ふむ」

南姫「私ではなく、その私に鉢合わせしなければいいけど・・・」

無提「そうだな・・・」

三日月「司令官、そろそろお時間です」

無提「む、もうそんな時間か」

無提「朝潮の準備は?」

三日月「出入り口で待つほど万端です」

無提「そうか・・・ふふ、随分吹っ切れたもんだな」

三日月「それもこれも司令官のおかげですよ」

無提「だといいな。さて・・・それじゃ、行くとするか」

無提「それでは、留守番を頼むぞ」

南姫「ええ。わかったわ」
提督「そうだ。少し寄って行きたいところがあるんだ」

長月「ん?どこだ?」

提督「あそこへ行くのに恒例な場所なんだ」

長月「ほう?」

駄菓子屋

駄菓子屋「おや、久しぶりだねぇ」

提督「お久しぶりです。おばあちゃん」

鈴谷「ありゃ?あちらの提督さんじゃん。チーッス」

提督「何故お前がここに居る?」

鈴谷「そりゃ、お菓子買いに来たんだよ。頼まれてさ。ああ、もう提督ならついてるよ」

提督「早いな・・・」

駄菓子屋「二人共知り合いかい?」

鈴谷「まぁねー。うちの人の知り合いらしい」
長月「今から行くところに駄菓子を買っていくのか?」

提督「ふむ。まぁな」

鈴谷「長月が秘書艦なの?だいぶ印象違うなぁ」

提督「どういう意味だ?」

鈴谷「いや、こっちの鎮守府の長月とは全然違う感じだからさ」

長月「・・・そういうものか?所詮同じ艦だ。大体同じだろう」

鈴谷「んーなんていうかなぁ。まぁ、いいじゃん。買い物済ませて提督のところ戻りたいからー」

長月「・・・変な奴だ」

提督「おばちゃん。いつものセット」

駄菓子屋「あいよ。自分用のは買っていかないのかい?」

提督「今日は遠慮しておきます」

駄菓子屋「いやぁ、小さい頃に一度来てその後大人になるまで来なかったのにねぇ」

提督「ちょっ、その話はあんまり人前では話さないでください・・・」

駄菓子屋「そうかい?」
提督「それじゃ、またきますよ。おばあさん」

駄菓子屋「相変わらず呼び方に統一のない子だよ」

提督「はは、変な奴だと思われるのもまた一つの楽しみなので」

駄菓子屋「小さい頃から、変わらないね」

提督「・・・そんな事ありませんよ。俺だって成長してるんです」

駄菓子屋「はっはっはっ!それもそうだね!!ではまた来なさい」

提督「はい」

提督「あ、おい鈴谷。あの人の好物は買ったのか?」

鈴谷「え?何が好物なの?超知りたい」

提督「金平糖」

鈴谷「やばい可愛い」
鈴谷「それにしても、鈴谷より身長小さいよね。男のくせに」

提督「うるせぇ。お前がでかいんだよ。大体ちょっとしか変わんねぇだろ」

鈴谷「まぁ、そのほうがあの鎮守府の子達の警戒心はないかもねー!」

提督「全くだ。小さいのをカバーするためにも筋トレを惜しまないようにもしないといけないし」

提督「正直、身長が小さいとロクなことはないな」

提督「女は身長小さいほうが可愛いがな」

鈴谷「わかるわー」

長月(二人が身長の話をしている・・・)

長月(そうだな。そういえば、身長がないおかげで、感じる威圧感は大したことなかったな)

提督「自分のコンプレックスですら仕事に絡むなら利用する」

鈴谷「提督から聞いていた通りの人だったわ」
孤児院

長月「ここは・・・」

子供達「あ!お面のお兄ちゃん!」

男の子達「とエロい姉ちゃん!」

鈴谷「なんだとっ!」

提督「ようお前ら、いい子にしてたか?」

子供達「ねぇねぇお兄ちゃん。新しいマジック見せて!」

提督「ん?ああ、少しの間俺のマジックショーでも見せてやろう」

提督「長月、中で朝潮と化物が居るはずだ。行ってこい」

長月「あ、ああ・・・」

長月(なんだあいつ・・・性格がコロッと変わったぞ・・・)
孤児院の中

無提「ん?外の子供達が賑やかになったな」

三日月「来たんでしょうか」

無朝潮(緊張してきた)ドキドキ

無提「少し見てくる」

出入り口

無提「・・・来たか。心の準備はいいか?」

長月「言われるまでもない」

無提「ふむ・・・随分根が深いな」

長月「・・・?なんのことだ?」

無提「いや、なんでもない・・・こっちだ。案内しよう」
無朝潮「っ!な、長月ちゃん!!」

長月「姿自体は久しぶりではないが」

長月「お前に会うのは久しぶりだな・・・朝潮」

長月「雰囲気も変わったな。どうだ。そちらの鎮守府は楽しいか?」

無朝潮「・・・うん。すごく楽しい」

長月「そうか・・・それなら良かった」

無朝潮「それで・・・私、長月に謝らきゃいけないし、お礼を言わないと」

長月「・・・」

無朝潮「・・・あの時、動けるのに雷撃処分をあなたに強要してごめんなさい」

三日月(・・・そっか。そんなことがあったんだ)
長月「その事か。もう気にしていない。お前の気持ちも、理解できるしな」

長月「あの時、私がお前の立場だったら、お前と同じ事をしただろう」

長月「・・・なぁ、お前は、こちらの鎮守府に戻ってくる気は無いのか?」

無朝潮「・・・ごめんなさい」

長月「いや・・・」

無朝潮「長月が、私のお願いを聞いてくれたおかげで」

無朝潮「今の司令官に出会えたし、一緒に居て楽しい仲間が出来た」

三日月「」ニコニコ

無朝潮「ありがとう」

長月「・・・そうか」

無提(一瞬、長月が暗い顔をした)

三日月「・・・えーっと長月さん」

長月「ん?なんだ?」
長月「お前は・・・秘書艦の三日月だったな」

三日月「はい・・・何か引っかかることでもあるんですか?」

長月「何のことだ?」

三日月「先ほど、朝潮にありがとうと言われた時、暗い顔していたので」

無提(やはり三日月も気づいていたか)

長月「・・・よく、人の顔を見ているんだな」

三日月「半年位前でしたら全くわからなかったと思います」

三日月「ただ、ずっと表情がわかりにくい人と一緒に居たので・・・」チラッ

無提「ふふ」

三日月(なんで得意気なんだろう・・・)

無朝潮(私には表情の変化がわからないよ・・・)
長月「・・・正直、ありがとうと言われるのは少し抵抗がある」

無朝潮「え・・・」

長月「ありがとうと聞くと、私がお前を撃ったときの姿が浮かび上がってくるんだ」

長月「・・・それまでには見たことのない笑顔で」

長月「ありがとうと呟いたお前の姿がな」

無朝潮「ご、ごめ・・・」

長月「いや、謝らなくてもいい。これは私の問題だ」

無朝潮「でも・・・」

長月「・・・それでは、時々でいい。私の訓練に付き合ってくれるか?」

無朝潮「えっ!?わ、私はいいけど・・・」

無提「報告さえしてくれれば私も大歓迎だ」

無朝潮「やったぁ!ありがとうございます司令官!!」
長月(・・・随分、いい笑顔をするようになったな)

提督「お、話は終わったか?」

長月「ああ、丁度終わったところだ」

鈴谷「疲れるよ全く。っと、買ってきたよ提督」

無提「ああ、ご苦労様」

提督「そうだ。少し、話したいことがあるんです」

無提「私にか?」

提督「ええ、二人きりで話したいので、お付き合い願います」

無提「そうか。三日月、少し留守番を頼む。私達は少し出る」

三日月「はいっ」

提督「長月も頼む」

長月「ああ」
三日月「私、長月ね・・・さんとは今回が初顔合わせですよね」

長月「ん?ああ、そうだな」

長月「お前のところにも私が居るはずだ。呼び易いように呼んでくれ」

三日月「いえあの、こっちの長月姉さんと長月さんだとイメージが違いすぎて・・・」

長月「・・・そこの鈴谷にも言われた。どれほど違うんだ?」

三日月「うーん・・・こっちの姉さんの方が女の子・・・な感じですか?」

長月「女の子・・・か」

三日月「長月さんが女の子じゃないと言うわけじゃないんですけど」

三日月「・・・表情もコロコロ変わりますし、可愛い服とか」

三日月「姉妹の中で話してることとかよく見かけますししますから」

長月「私は、したことが無いな。そんな話は・・・お前は、そっちの私は好きか?」
三日月「シスコン気味で、過干渉な部分もありますけど」

三日月「とてもいい姉さんで、私は好きです」

三日月「ただ、弥生姉さんと夜な夜な、菊月姉さんと望月ちゃんのどっちが可愛いか」

三日月「そんな話をするのはやめて欲しいですけど」

長月「そんな話もしているのか・・・」

三日月「最終的にとばっちりで私でいいだろうと・・・」

三日月「結論付けるのも本当にやめてほしいです」

長月「嬉しくないのか?」

三日月「完全に間を取ってるだけなんですよっ!」

長月「お前も大変だな」
長月「・・・」サワッ

長月がスっと三日月の髪に触れる

三日月「どうしたんですか?」

長月「いや、なんとなく、心地が良さそうだったんで触ってみたくなってな」

三日月「えっ」

長月「さらふわだな・・・心地よい」

三日月「あ、ありがとうございます」

鈴谷「気持ちーよねぇ三日月の髪の毛」ワシャッ

三日月「ちょっ!ボサボサになっちゃいますよ!」

長月「・・・」

長月(こんな賑やかなのに囲まれていたら、悩むのもバカらしくなるな)ニコッ

三日月(あ、笑顔がこぼれた)ニコッ
三日月「私なんかより望月ちゃんの方がさらふわだと思うんですけど」

鈴谷「まぁね」

無朝潮「私は三日月の方が好きだよ!」

三日月「嬉しいけど・・・なんか悲しい」

長月「・・・ふふ、少しだが、お前達の方の私の気持ちは少しでも分かるな」

長月「こっちの姉妹艦はやかましいのしか居ないんでな・・・」

三日月(皐月姉さんと文月姉さんと卯月姉さんかな・・・)

長月「姉より、妹の方がいいかもな」ナデナデ

三日月「・・・姉さんより、少し手が大きく感じます」

長月「そうか少し嬉しいな」
その頃提督二人

無提「で、計画は順調か?」

提督「ええ、今のところは」

無提「そうか」

提督「はい」

無提「・・・では、鎮守府のほうは、どうだ?」

提督「それも順調です」

無提「あの海域には別の南方棲戦姫が出没するという報告がある」

提督「そうですね」

無提「もし、そちらに出くわしたらどうするつもりだ?」
提督「もちろんそれも想定済みです」

提督「むしろ、それが大本命です」

無提「あの子達は多少なりともブランクがある」

無提「もしそうなったら、一人が沈むかもしれないことは覚悟しておくことだな」

提督「・・・南方棲戦姫にはこう頼みます」

提督「あいつらを助ける価値があるなら、助けて欲しい」

提督「その判断はお前に任せる・・・っと」

無提「・・・お前も、あいつのことを信用しているのか?」

提督「あなたが信じているなら、俺も信じてみます」
提督「南方棲戦姫ならば違いが分かるはず」

提督「多くの艦娘を相手にしてきたあいつなら」

提督「俺のところの艦娘と他の艦娘違いが」

無提「ふむ」

提督「・・・あなたも大体の見当はついているのでは?」

無提「ふふ、お前も勘が鋭くなってきたな」

提督「勘ではないですよ。あなたは、自分が思っている以上にわかりやすい」

無提「そうか」

提督「南方棲戦姫がその違いに気付いたのは、あなたの鎮守府に入り浸り始めてから」

提督「簡単に考えつきます」

無提「相変わらずだな。幼い頃から、頭の回転が早い」
無提「もし、南方棲戦姫が助けるに値しない場合、どうするんだ?」

提督「もちろん、沈んでもらうしかないでしょうね」

無提「そうか」

提督「邪魔しますか?」

無提「いや、お前が私を敵に回すような事するとは思えん」

提督「よくわかってますね」

無提「・・・まぁ、お前の好きなようにやれ」

無提「それより、あと一週間だが、そのあとはどうするんだ?」

無提「提督業を続けるのか?」
提督「・・・まだ考え中です」

無提「もし、続けるなら、私もあいつに頭を下げよう」

無提「私が頭を下げれば、あいつの硬い頭も少しは柔らかくなる」

提督「あなたはあの人とはどういう関係なんですか?」

無提「なんてことはないさ。私の妻の友人の夫だったんだ」

無提「妻の友人に何回か料理を教えて居たら仲良くなってな」

提督「へぇ・・・」
提督「・・・そろそろ戻りますか。話も終わりでしょう」

無提「そうだな」

無提「口が悪いままの方が、お前らしかったんだがな」

提督「俺ももうこの年です。敬語ぐらい・・・」

無提「昔みたいに、あの呼び方でもいいんだぞ?」

提督「そんな事できませんよ」

無提「素直になってもいいんだぞ」

提督「考えておきます」

そして

提督達は、秘書艦達が待つ孤児院へと帰った
孤児院

提督「それでは、また一週間後に」

無提姉「ちょこちょこ顔出しなさいよ」

提督「そのうち、また落ち着いたらきますよ」

無提「そうだな。それじゃあ、頑張れよ」

提督「ええ」

提督「・・・あなたも、少しは素直になるべきですよ」

無提「・・・どういう意味だ?」

提督「深い意味はないです。では」
無提姉「成長したなぁ」

無提「そうだな」

無提姉「あんたもいい加減、いい人作りなよ」

無提姉「あの二人も、それを望んでるよ」

無提「・・・そうかな」

無提姉「私があんたの奥さんで、あんたより先に死んだらそう思うよきっと」

無提「・・・私も帰ろう」

無提姉「また来なさいよ。お金だけ送られても困るから」

無提「ああ。帰るぞお前ら」

鈴谷「はいはーい」

真面目二人「はいっ!」
六日後

提督「さて、明日はいよいよ出撃だ」

提督「今、出撃メンバー一人一人に話す予定なんだが」

提督「お前は大丈夫か?朝潮」

朝潮「・・・わ、私なんかで足でまといにならないでしょうか・・・」

提督「何を言っている。お前でなければならないんだ」

提督「明日、打ち勝つにはお前の力が必要だ。期待してる」

朝潮「あは・・・あはは・・・なんだか、嬉しいです」グスッ

朝潮「そんなに・・・私を信用してくれてるなんて・・・」ニコッ

提督「だろう」
朝潮「前の司令官に、役立たずと言われ続けてて」

朝潮「自信が無くなってました・・・」

朝潮「私でも・・・司令官のお役に立てるでしょうか?」

提督「それはお前の頑張り次第だな!」

朝潮「えっ!?」

提督「まぁ、期待はしている。が、無理だけはするなよ」

提督「自分の能力以上に頑張る必要はない」

提督「周りの話を聞く限り、お前は頑張りすぎるのが欠点だからな」

朝潮「司令官・・・」

提督「今日はゆっくり休め、それではな」

朝潮「はいっ」
元拷問部屋、改め多目的交流部屋

ガチャ

提督「お、丁度三人集まってるか」

提督「元拷問部屋のここを有効活用出来るようになったか」

提督「・・・随分と意外なメンバーで遊んでいるのだな」

木曾「おう!提督もどうだ!ジェンガやろうぜ!」

神通「何か御用でしょうか・・・」

武蔵「木曾に無理矢理な・・・それで、用とはなんだ?」

提督「お前達三人、明日の出撃メンバーだから」

武蔵「っ!やっと出撃できるのか!」

神通「出撃・・・ですか」

提督「無理はしなくてもいいぞ」

神通「いえ、大丈夫です。お気遣いありがとうございます」

木曾「まぁ、俺も大丈夫だな」
提督「・・・まぁ、あれだ。お前達はこの一ヶ月」

提督「色々と頑張ってくれた」

提督「訓練は厳しくても、終わったあとは優しく接する神通」

提督「教えている奴らの話を聞くと尊敬しているといつも言っていた」

神通「な、なんだか恥ずかしいです・・・///」

提督「訓練は厳しく、普段も素っ気ないが」

提督「的確に間違った所を指摘してくれる武蔵」

提督「怖いけど頼りになるとあいつらは言っていた」

武蔵「・・・ふんっ」
提督「訓練はそこそこに気さくで話しやすい木曾」

提督「友達感覚で楽しく訓練が出来たと言っていた」

木曾「教官としてはどうかと思うがな」

提督「お前達三人を教官にしたのは間違いではなかった」

提督「信用して良かったよ」

木曾「ふふん。そうだろう?」

神通「いえいえ・・・私はまだまだですよ・・・」

武蔵「お前、意外と色んな奴の話を聞いていたりしていたのだな」

提督「当然だ。俺はこの鎮守府のいわばトップだ」

提督「お前達の悩みや意見、そして能力」

提督「これらを正しく頭に入れておかないといけないからな」
武蔵「前の提督とは大違いだな」

木曾「最初は警戒したけど、なんてことない提督だったな」

提督「割と失礼なこと言うのな」

神通「ふふふ・・・提督、あなたが私達を信用してくれるように」

神通「私達も、あなたを信じています」

武蔵「私は信用などしてないぞ」

木曾「武蔵が否定するときは図星の時だからな」

武蔵「うっ・・・」

提督「ははっ。そうか。嬉しいね」

提督「それじゃ、俺は後のメンバーにあってくる。今日はしっかり休めよ」

神通「はいっ」
武蔵「ああ」
木曾「おう」
廊下にて

提督「さて、次は祥鳳だが・・・」

祥鳳「提督?どうしたのでしょうか?」

祥鳳「こんなところで・・・」

提督「ん?おお、丁度いいところに」

祥鳳「はい?」

提督「・・・そういえば、あまりお前と話したことは無いな」

祥鳳「そうですね・・・それで、何かご用でしょうか?」

提督「ああ・・・明日の事なんだが」
祥鳳「はぁ・・・出撃ですか?」

提督「ああ、大丈夫そうか?」

祥鳳「艤装の手入れは欠かさずやっていますし、問題はありませんけど・・・」

提督「ふむ。さすがに真面目だな。そこで、お前には少し頼みごともあるんだ」

祥鳳「・・・なんでしょうか?」

提督「お前を信用しての頼みごとだ。聞いてくれるか?」

祥鳳「提督のお役に立てるなら」

提督「そうか・・・実はな・・・」
祥鳳「っ!?そ、そんな・・・」

祥鳳「そんな事・・・」

提督「いいか祥鳳。この作戦は無謀とも思えるかもしれないが」

提督「やらなくてはいけないことなんだ」

提督「この先、この鎮守府を上へと行かせるにはな」

祥鳳「・・・本当に、私はお役に立てるのでしょうか?」

提督「ああ、少しどころではないぞ」

提督「ほんの少しの火種は俺が撒いておいた」

提督「あとは、燃料を注ぎ込んで、現場で燃え上がらせてほしいんだ」

祥鳳「・・・はい、わかりました」
提督「これが成功すれば、格段にこの鎮守府は変わる」

祥鳳「・・・提督」

祥鳳「私は・・・陰ながら提督のお役に立てる事を望んでいました」

祥鳳「あまり話したことはありませんでしたが」

祥鳳「皆さんがいい人だと言っていましたし、私もそう思っています」

祥鳳「前任の提督のせいで、思う以上に美化されてるのかもしれません」

祥鳳「でも、それでもいいと思えるんです」

祥鳳「・・・改めて、皆さんの代わりに、お礼を言わせてください」

祥鳳「この鎮守府の提督になっていただき、ありがとうございます」

深々とお辞儀をする祥鳳

提督「・・・ああ、こちらこそ」
提督と祥鳳はその場で別れた

提督「・・・調子が狂う」

提督「全ては俺の計画通りに勧めている」

提督「そう計画だけはちゃんと進んでいる」

提督「・・・心の方が中々うまくいかない」

提督「あの化物の高性能さが」

提督「ここに来て本物と実感できるとはな・・・」

提督「・・・本当に、読めないものだ」

提督「気持ちや心がどう動くかなんて・・・」

提督(特に、自分の心が・・・)
執務室

提督「さて、長月。他のメンバー達には教えていないが」

提督「これが明日の出撃メンバー一覧だ」パサッ

長月「・・・」

長月「却下だ。明らかに朝潮が足でまといだ」

提督「ほほう。中々毒舌だな」

長月「確かに、朝潮の頑張りは認める」

長月「訓練での成績の伸びも文句はない」

長月「しかし、この練度が高いメンバーの中で一人」

長月「実戦経験がほぼ無い朝潮を入れて行くのは無謀すぎる」
長月「チームの輪を乱すことは目に見えている」

提督「ふん。お前たちが守ればいいじゃないか」

長月「・・・貴様は出撃しないからわからないだろうが」

長月「私達は命をかけて戦っているんだぞ」

長月「命をかけている場で、そんな甘い考えでは生き残れない」

提督「俺はメンバーの変更はしない」

長月「私たちに死ねと言っているのか?」

提督「さぁな」

長月「変えろ!」

提督「くどい。俺は変えないと言っている」

長月「・・・ぐっ!勝手にしろ!」

バタン!!

長月は乱暴にドアを閉め、執務室から出て行った
提督「はぁ・・・」

ガチャ

提督「ん・・・大淀か。久しぶりだな」

大淀「お久しぶりです。先ほど長月さんとすれ違いましたよ」

大淀「・・・すごい剣幕でしたけど」

大淀「何かあったのでしょうか?」

提督「気にするな」

大淀「期間変更のお知らせは受けてます。明日ですね」

提督「ああ・・・」

大淀「どうするんですか?残るのか、残らないのか」
提督「明日次第だな」

大淀「そうですか・・・出来れば残って欲しいです」

大淀「あなたが来てから、この鎮守府は前より明るくなりました」

大淀「あなたは既に、この鎮守府にはなくてはならない人です」

大淀「そう、皆さんから聞いております」

提督「・・・ああ、考えておく」

大淀「ええ、お願いします」

そして、翌日
提督「長月を旗艦とし、出撃をしてもらう」

長月「・・・何を企んでいる」

提督「何のことだ?」

長月「昨日から気になってはいたが」

長月「このメンバーに心辺りがないとは言わせないぞ」

提督「・・・特に意味はない。それから、出撃前に明石が居る工廠へ迎え」

提督「準備が出来次第、即出撃だ」

提督「俺からは以上だ。必ず打ち勝てよ」
長月「何を考えているんだあいつは」

木曾「・・・まぁ、今は信じようぜ」

神通「ええ、そうですね」

武蔵「特に何も考えてはいないだろうな」

朝潮「・・・」

祥鳳「どうしたんですか?暗い顔してますけど・・・」

朝潮「えっ!?い、いえ・・・何でもありません・・・」

朝潮(昨日の長月さんと司令官の会話を聞いてしまったなんて・・・)

朝潮(・・・足でまといにならないよう、精一杯頑張ろう)
工廠

明石「おや、皆さんお揃いで」

長月「司令官より、出撃前にここへ寄れと言われたんだが」

明石「あーはいはい。ちょっとだけまっててくださいね」

数分後

明石「・・・こちらです。出撃までには綺麗に直しておけと言われていたんですよ」

長月「これは・・・」

明石「皆さんの、前の艤装です。新品同様とまではいかなくても」

明石「ちゃんと使えるよう、安全点検もお手入れも欠かさずしておきました」

明石「新しいものより、ずっと使っていた艤装の方がいいだろうと」

明石「提督からのご好意です」
武蔵「・・・ふむ。体にしっくりとくる」

木曾「力がみなぎっている気がする。気がするだけ」

神通「・・・なんとなくホッとしますね」

祥鳳「心地がいい気がします」

明石「朝潮さんにはおニューの艤装ですよ」

朝潮「わ、私に?」

明石「私が朝潮さんの体に合うように調整もしておきました」

明石「訓練で用意された艤装よりは使いやすいと思いますよ」

朝潮「こ、これも司令官が・・・?」

明石「もちろんです」
長月「・・・不思議な感じだ」

長月(あの時の出撃を再現しているとしか思えない)

明石「燃料も弾薬も満タンです。心置きなく出撃してください」

長月(・・・考え過ぎか・・・)

長月「さぁ皆、準備はいいか?」

木曾「ああ!」
武蔵「もちろんだ!」
神通「はい!」
祥鳳「大丈夫です!」
朝潮「出来る限り努力します!」

長月「よし・・・それでは行くぞ!」
執務室

提督「無事出撃したか・・・」

明石「はい。皆さん、元の艤装で気合が入ったみたいです」

提督「そうか・・・さて・・・俺も連絡しなければいけない所がある」

提督「ご苦労だったな。休んでいいぞ」

明石「はい」

提督(・・・化物と憲兵に連絡しなくてはな)

提督(南方棲戦姫にもだが)

提督(準備が出来次第、連絡をしよう)

提督(・・・祥鳳と朝潮、あの二人が今回の出撃の鍵だ)

提督(鍵としての仕事、しっかりとしてもらいものだ)
無提『ああ、お前か。出撃はさせたんだな』

提督「ええ、準備のほど、よろしくお願いします」

無提『了解。南方棲戦姫にも通信機は持たせて待機させて居る』

無提『すぐにでも連絡をしておくんだな』

提督「おせっかい焼きのあなたのことです。俺の考えはもう伝えてあるのでしょう?」

無提『まぁな。何にせよ、あいつも少しお前と話したがっていた』

無提『連絡してやれ』

提督「・・・はい。わかりました」

無提『それでは、すぐに支度をしてそちらへ向かう』
南姫『・・・あなたね』

提督「話がしたいと聞いたのでね」

南姫『ええ、少しだけ聞きたいことがあったのよ』

南姫『どうして私なんかを信用するのかしら?』

南姫『いくら入り浸ってるとは言っても、所詮、私は深海棲艦』

南姫『あいつを裏切ることだって簡単に考えが付くと思うのだけれど』

提督「いや、お前はあの化物を裏切らないし、裏切れない」

南姫『・・・』

提督「あの化物に不用意に近付いてはいけない」

提督「近付けば、相当なひねくれ者以外はあっさりとその魅力に取り憑かれる。男も、女も」

提督「艦娘や深海棲艦も例外ではない」
提督「俺もその中の一人だ」

提督「その一人としても実感はしてる。だからこそお前を」

南姫『私を信用できる・・・そういうわけね』

南姫『ふふふ・・・納得したわ』

南姫『それで、助けるかどうか。それは私の判断でいいのね』

提督「ああ」

南姫『もし助けなくても、責めないでよね』

提督「責めはしない。その時は、そうできなかった俺の責任だ」
南姫『・・・わかったわ。私も、あなたを信用してみるわ』

南姫『あいつがあなたを信用するようにね』

提督「そうか」

南姫『それじゃあね。あとは、あなたの出来ることは祈る事だけよ』

それだけ話すと南方棲戦姫との通信を絶った

提督「祈ることだけ・・・そうだな・・・」

提督「まぁ、今回の出撃はほとんど茶番だが・・・」

提督(それでも、あいつらの心で全てが決まる)

提督(それは、俺にも祈ることしか出来ん)

提督「さて本格的に準備しなければな。化物が来る前に」
海上にて

長月「皆!まだ大丈夫か!?」

木曾「ああ!余裕だぜ!」

武蔵「こんなところで中破していては話にならんだろう!」

神通「油断は禁物ですよ。気を引き締めて行きましょう」

祥鳳「神通さんの言う通りです」

長月「朝潮、お前は大丈夫か?」

朝潮「はいっ!」

長月「・・・そうか。では次だ!我に続け!!」
朝潮(すごい・・・訓練とは違う死と隣り合わせの緊張感)

朝潮(皆さんのチームワークもさる事ながら、私へのフォローも・・・)

朝潮(それなのに私・・・)

長月『明らかに朝潮が足でまといだ』

朝潮(・・・っ!)フルフル

首を横に振り、雑念を振り払う朝潮

朝潮(ダメっ!司令官が私に期待してくれているのに・・・)

朝潮(暗い方へ考えちゃダメ!私ができることだけをしよう!)キッ

祥鳳「・・・」
長月「・・・敵の動きがおかしい・・・」

武蔵「どうした?」

長月「いや、明らかに朝潮が重点的に狙われ」

長月「祥鳳にはわずかしか攻撃がいかない」

木曾「相手が意思を持って何かを狙っているということか?」

武蔵「考えすぎだ。そういうこともあるだろう」

長月「だといいがな」

長月(出撃メンバーといい元の艤装といい・・・)

長月(何やら不吉な予感がする。何も起こらなければいいが)

長月(・・・あいつは何を企んでいる?)
南方海域、G地点付近

ザザァ

タ級「南方棲戦姫様」

南姫「どうしたの?」

タ級「例の艦隊、順調に進撃中のこと」

南姫「そう」

タ級「・・・そして」

南姫「ええ、わかっているわ。どうやら目撃情報は本当だったようね」

タ級「はい。そして、中々力をつけている模様。もしかしたら・・・」

南姫「・・・以前の私より、強いかもね・・・」
金剛「ヘイ!南ちゃん。他の深海棲艦達は信用出来るんデスか?」

加賀「私は、提督に言われるままあなたの護衛をするけれど」

加賀「納得はしていないわよ」

南姫「安心して、もう一人の私とその取り巻き達以外の子達は私の部下」

南姫「言うことは聞いてくれるわ」

タ級「南方棲戦姫様のことは信用して欲しいわね」

金剛「テートクが信用してるから信用はしていマス」

加賀「・・・そうね」

南姫「ホント、あいつは罪作りな男ね」

金剛「テートクの事をあいつ呼ばわりは許さないヨ」

南姫「はいはい」
南姫「いい?もし助けることになるなら、私とタ級、金剛と護衛ちゃんが敵を引き付ける」

南姫「その間、あなた達二人は負傷した子達の手当て」

金剛「なんでミーが戦闘要員!?」

加賀「私も、あまり治療は得意ではないのだけれど」

南姫「明石が心得があるでしょ」

無明石「多少の手伝いをしていただくだけで結構ですよ」

加賀「そう・・・よかった」

南姫「加賀には索敵の仕事もあるもの」

加賀「そうね。彩雲が頑張ってくれているわ」
金剛「そういえば、どうしてもう一人のタ級じゃなかったんデスか?」

金剛「護衛艦ちゃんよりは戦力に・・・」

南姫「・・・一緒に行くってほっぽちゃんがだだをこねるもんだから・・・」

タ級「遊び相手として一緒に置いて来ちゃったのよ!」

金剛「oh・・・」

加賀「平和なんだかどうなんだか・・・よくわからないわね」

南姫「そうね・・・っと話してる間にすぐそこまできてる見たいよ」

南姫「相手の私は、おそらくただでは足止め出来ないわ」

南姫「少しでも気を引き締めて行くわよ」

タ級「はっ!」
金剛「OK!」
加賀「わかったわ」
無明石「腕がなりますねぇ!」
護衛艦「・・・!」ピョンピョン
D地点

長月「ふう・・・」

武蔵「だいぶやられたな・・・」

木曾「大破1隻、中破3隻、小破1隻、このまま進撃は少し辛いな」

神通「私は小破です。もし行くのであれば、私が盾になります」

祥鳳「私も同じく盾に」

朝潮「そんな・・・盾にはならなくても・・・」

木曾「お前は大破してるんだ。甘えておけ」

武蔵「・・・指示を仰ぐしかないだろう」

長月「・・・しょうがない。あいつに指示をもらおう」
提督『ふむ』

長月「帰還するか?」

提督『進撃だ』

長月「なんだとっ?」

長月「こちらには大破が一人出ているんだぞ?」

提督『問題ない。行け』

長月「ぐっ・・・」

提督『・・・いい加減理解しろ。俺は、一度言ったことは曲げない』

提督『それではな。いい報告、待ってるよ』

長月「・・・」
武蔵「・・・進撃か?」

長月「・・・ああ」

木曾「あの提督も無茶するな・・・」

朝潮「・・・」プルプル

長月「あのクソ司令官が・・・」

長月「これでは、前任と変わらんぞ・・・」

武蔵「私達の目も、少し曇っていたな」

神通「今更悔いてても仕方ありません。先に進みましょう」

長月「朝潮、大丈夫か?」

朝潮「・・・はい」

長月「・・・行くぞ。お前達」
G地点

南姫「ナンドデモ、ミナソコニオチテイクガイイ・・・」

長月「気合を入れて行け」

武蔵「ああ、もちろんだ」

朝潮(怖い・・・)

祥鳳「朝潮さん、出来る限りは私が守ります」ポンッ

祥鳳は朝潮の肩に手を置く

祥鳳「なので・・・ほんの少しでも怯えず、落ち着いてください」ニコッ

神通「その通りです。私達は仲間を見捨てたりしません」

朝潮「・・・はいっ」
数十分後

南姫「オロカナ・・・」

長月「くっ・・・やはり、無理か・・・」

長月「お前達、大丈夫か?」

武蔵「いや・・・もう立てん」

木曾「あっはは・・・立てなくなるほどなんて、あの日振りだ・・・」

木曾「あんときは、長月に無理くり起こされたな・・・」

神通「そうですね・・・海に倒れこむなんて・・・」

朝潮「・・・」

長月「・・・敵は次の攻撃準備に入っている」

長月(・・・このまま沈めたら、どれだけ楽だろう・・・)

武蔵「ああ・・・もう少し早く・・・」

木曾「こうなっていればよかったんだけどな・・・」
G地点付近

南姫「・・・あの時と、何にも変わってないわね」

金剛「助けなくても良いんデスか!?」

南姫「私が頼まれたのは、助ける価値が有るなら助けてくれ」

南姫「そう言われたのよ。だから助けない」

加賀「随分・・・薄情なのね」

タ級「南方棲戦姫様は約束は守るよ。例え、それが薄情な選択でも」

南姫「見捨てるのに納得はしてないけどね・・・」

南姫「時間さえかければ、更に成長するだろうし・・・」
南姫「・・・残念ね。少しは期待していたのだけど」

南姫「前の私と変わらない」

無明石「・・・ふむ」

南姫「もう帰りましょ。もう用はないわ」

金剛「納得いかないなら、助ければいいのデスっ!」

南姫「あなた達の提督も、このことは知っているのよ」

加賀「っ!?嘘よねっ?」

南姫「本当よ。だから・・・助ける理由がないわ」

無明石「もう少し、待ってみましょうよ」

南姫「無駄よ」

無明石「あの子達が沈むまで見守るのも、せめてもの慈悲では?」

南姫「・・・しょうがないわね」
G地点

祥鳳「皆さん、本当に立てませんか?」

長月「どうした?もう体も動かんが」

祥鳳「・・・あの提督が、本当に前任の提督と一緒だとお思いですか?」

武蔵「こんな無茶な進撃させるなんて、そうそういない」

木曾「ああ、信用しすぎたな・・・」

祥鳳「今までの提督の言葉、行動を思い出してください」

神通「でも・・・」

朝潮「・・・」

そんな話を聞きながら、朝潮は虚ろな目で空を見上げていた
朝潮(結局、足でまといになっちゃった・・・)

K『お前は役立たずだ。だからこうして、秘書として使ってやってるんだ』

K『ふん、まともにコーヒーも入れられんとは、役立たずが』

K『いい加減に仕事を覚えろ。使えん奴だ』

K『本当に役に立たんな。娼婦にでもなった方がマシなんじゃないか?』

朝潮(・・・役に立てないなら・・・生きていても仕方ないよね・・・)

朝潮(いっそ・・・このまま・・・)

提督『食欲はあるか?りんごでも食うか?蜜がたっぷり入ってて美味いぞ』

提督『打ち勝つにはお前の力が必要だ。期待してる』

提督『お前は頑張りすぎるのが欠点だからな』

朝潮「・・・っ!?」
祥鳳「私達はずっと・・・」

朝潮「ぐっ・・・はぁ・・・っ!はぁ・・・っ!」バシャッ

朝潮(体中が痛い・・・っ)

力を振り絞り、立ち上がろうとする朝潮

祥鳳「あ、朝潮さん・・・っ!?」

長月「朝潮・・・っ」

朝潮「私は帰りたい・・・っ!あの鎮守府に・・・っ!あの司令官の元にっ!」

朝潮「心配してくれた、私を理解しようとしてくれた・・・」

朝潮「作戦が失敗してっ!怒られたっていいっ!!」

朝潮「絶対に・・・帰りますっ!!」

祥鳳「朝潮さん・・・」
祥鳳「・・・はい、絶対に帰りましょう」

祥鳳「皆さん、そういうことです」

祥鳳「私達は、沈む場所を求めてずっと出撃していましたね」

祥鳳「帰りたくない一心で、がむしゃらに敵と戦って」

祥鳳「沈みたいとずっと願っていました」

祥鳳「ですが・・・今の朝潮さんを見て、何か心辺りはありませんか?」

祥鳳「私も・・・あまり話しませんでしたし、素顔も見たことはありません」

祥鳳「だけれど、私も、皆さんからの話は聞いています」

祥鳳「・・・いい人ですよね」ニコッ

朝潮「・・・っ!はいっ!」

祥鳳「ですから、いつまでも沈む気で居てはいけませんよ」
神通「そう・・・でしたね・・・」

神通「あの人は、私の涙を優しく拭ってくれました・・・」バシャッ

神通「私も、帰りたいですっ!」

神通「いえ、みんなで帰りましょう!」

木曾「へへっ・・・そうか・・・そうだな」バシャッ

木曾「忘れてたぜ。帰りたいなんて気持ち」

木曾「あいつからもらった仮面。正直、あれ付けるとほとんど前見えなかったけど」

木曾「嬉しかった・・・何かをもらうなんて、なかったしな」

木曾「武蔵!長月!お前達もいつまでも倒れてないで起き上がれ!」

木曾「体中いてぇけど、帰れねぇほどじゃねぇぞ!」
武蔵「ふふ・・・そうだな」バシャッ

武蔵「異性と・・・いや、お前達以外で話して楽しいと思ったのは」

武蔵「あいつが久しぶりだったな・・・」

武蔵「ああ、帰ろう。教官としてもまだ未熟な奴らに教えたいこともある」

武蔵「まだ、私達にはやることはたくさんあるんだ」

武蔵「旗艦がそれでは、私達は帰れんぞ!長月っ!」

木曾「いつまで寝てんだ長月っ!」

祥朝神「長月さんっ!」

長月(・・・馬鹿どもが・・・あの日の再現を考える奴がいい奴なわけがない・・・)
執務室

提督「前任は、人の心を理解し、洗脳することを得意としていた」

大淀「はい・・・そのせいで皆さんの心は・・・」

提督「知ってるか大淀。洗脳っていうのは簡単に言うと思い込ませる事だ」

提督「朝潮や他の奴に、自身が出来ない奴だと思い込ませ、使っていた」

提督「俺は、人の心を理解する事なんて出来ない」

提督「正確には、どうしてそんな気持ちになる理由が理解出来ない」

提督「だが、俺にも洗脳は出来る」

大淀「い、言ってる意味が・・・」

提督「昔から得意なんだ・・・誰かに、俺がいい奴だと思い込ませる事は」
G地点

提督『お前の魅力に惹かれただけだ』

提督『俺の気持ちだ。お前を幸せにしてやろう』

提督『今日はお前と話をしたかったんだ』

提督『仲間同士の仲をよくするためのものを置きたい』

提督『俺はお前達が好きだ』

長月『・・・貴様は私の事が好きなんだろう?』

提督『まぁな』

長月「だが・・・ふふふ・・・私も、あいつの事は嫌いではない」
長月(誰かを雷撃処分する心配は無くなった・・・)

長月(・・・私も帰りたいと思えている)バシャッ

長月「・・・そうだな・・・帰るぞ。全員で」

武木「ああ!」
祥朝神「ええ!」

長月「いいか!攻撃には集中しなくていい!避けることだけを考えろ!」

長月「なるべくお互いの間隔を開けて自由が利くようにしろっ!!」

祥鳳「私は少しだけ朝潮ちゃんの近くに」

長月「・・・わかった。他は自分の事だけを考えろ!」

それぞれ、自由に動けるだけの間隔を空け始める六人

長月「・・・我に・・・この長月に続けぇ!!」

南姫(全員タチアガッタ・・・!?)

南姫「クッ・・・大人シクシテイレバイイモノヲ・・・沈メッ!!」
長月「朝潮っ!来るぞ!!」

朝潮「はいっ!・・・っ!?」ズキンッ

朝潮「い、痛い・・・っ!」バシャッ

朝潮が、海面に膝をつく

祥鳳「朝潮ちゃん!!危ない!」

長月「っ!?」

祥鳳(中破した体じゃ・・・追いつけないっ!!)

朝潮「あ・・・」

朝潮(せっかく・・・本当に役に立ちたいと思った司令官が出来たのに・・・)

朝潮(こんな・・・あんまりだよ・・・)フラッ

ボンッ!!

朝潮が気を失い倒れたと同時に

大きな爆発音と共に、煙が立ち込めた
長月「朝潮!」

武蔵「馬鹿者!朝潮は祥鳳に任せて自分の事を考えろ!!」

祥鳳「朝潮さん!!」

祥鳳「煙の中に何か影が浮いて・・・」

その影が、朝潮の体にポトリと落ちる

妖精「」スクッ

祥鳳「よ、妖精?」

加賀「ふう。間に合ってよかった」

金剛「ヘイ皆!許可をもらったから助けに来たヨー!!」

加賀「ごめんなさい。偵察機のあなたに特攻隊のような真似をさせて」

妖精「」ビシッ
長月「助けだとっ?」

木曾「支援艦隊でも出したのかっ!?」

武蔵「いや、我らの鎮守府に加賀も金剛もいないはずだ」

南姫「皮肉なものね。過去に追い詰められた敵に」

南姫「今度は助けられるなんて」

神通「南方棲戦姫が・・・二人!?」

南姫「ッ!?ナンノツモリダ裏切リ者ッ!!」

南姫「裏切り者?」

南姫「生憎だけど、あなた達のことを仲間だと思ったことなんてないわよ」
南姫「長月、あなた達は下がっていなさい」

長月「なっ・・・ふざけるな!!」

長月「貴様等に助けられる筋合いは無い!」

南姫「明石、加賀、負傷者の手当を」

無明石「はいはいー」

無明石「帰還する分には問題ないくらいの手当はしますよ!」

無明石「加賀さん。サポートお願いします」

加賀「ええ」

長月「聞いているのかっ!?」
武蔵「なんのつもりだ!」

木曾「助けはありがたいけど納得する理由を聞かせろ!」

南姫「・・・タ級、護衛艦ちゃん。その子達を明石の元へ」

タ級「は・・・っ!?」

護衛艦「っ!?」

南姫「金剛、私と二人であっちの足止めをするわよ」

金剛「why!?」

南姫「頑固そうな子達ばかりで面倒だもの」

南姫「それに、私と二人なら、なんとかなるでしょ?」

金剛「・・・はぁ・・・最近なんだか、テートクに似てきたカモ」

南姫「あら、どんなところが?」

金剛「無茶するところネ!!」
祥鳳「あの・・・朝潮さんは・・・」

無明石「沈み始めてはいないので命に別状はないと思いますが・・・」

無明石「危険な状態であることには変わりありませんね」

無明石「早急に手当をします」

長月「ぐっ!なんだこいつは!」

護衛艦「」ガチガチ

護衛要塞の噛み付きを避けながら長月が後退してきた

タ級「・・・大人しく言うことを聞いて」

武蔵「っ・・・力が出ない・・・」

木曾「しょうがない・・・大破してたらどうしようもねぇ」
南姫「・・・皆下がったわね」

金剛「oh・・・敵さん激昂してマスネー」

南姫「仲間ヲ裏切リ、敵デアル艦娘共ノ味方ヲスル!」

南姫「私ハ許サナイ」

南姫「人聞きが悪いわね。さっきも言ったでしょ?」

南姫「元々私達深海棲艦に仲間意識なんてなかったじゃない」

南姫「いつからそんな仲間思いになったのかしら?」

南姫「随分成長したのね。姫になるなんて、相当戦って負けたんでしょうね」

金剛「・・・why」

南姫「・・・ッ!」
金剛「全然ついていけナイよ。南ちゃん」

南姫「あなた達が改装で強くなるように、私達も沈むたびに進化する」

南姫「沈めばまた復活し、呪いが強くなる」

南姫「私達の強さは恨みや負の感情で強くなって」

南姫「何度も沈められ、あなた達艦娘を恨み、呪いの肥やしになる」

南姫「それを繰り返し、私達は鬼、戦・・・そして今の姫の位まで来るの」

南姫「他のイ級やヲ級達だって一緒、沈むたびに能力が上がって」

南姫「エリート、フラグシップと強くなる」

南姫「最近気付いたんだけど」

金剛「oh・・・出世魚みたいダネ」
南姫「タ級!ソンナ裏切リ者ヨリ、私ニ従イナサイ!」

タ級「・・・南方棲戦姫様の話を聞いてなかったの?」

タ級「私はこの南方棲戦姫様にしか従うつもりもないし」グッ

木曾「いでででで!!もっと優しくしてくれ!」

タ級「私の主に手を出すあなたの方が、私からすれば敵だから」

南姫「だそうよ」

南姫「・・・話はここまで。それで、来るの?来ないの?」

南姫「貴様ニ深海棲艦ノ誇リハナイノ!?」

南姫「お生憎様。朝潮を助ける前から、捨ててるわ」

南姫「・・・もう、痛い思いするのは懲り懲りよ」
南姫「・・・あの時の私は」

南姫「沈むために戦場に出ていた」

南姫「この子達と同じように」

南姫「この子達と他の子達との違いはそこ」

南姫「普通の艦隊は生きて帰りたいと思うもの」

南姫「それがこの子達にはなかった。成果が上げられてもなお」

金剛「ふふーん・・・なるほどネ」

南姫「でも、今は違う。この子達も、その帰りたいと言う気持ちを取り戻した」

南姫「帰りたいと思える居場所が出来たのよ」

南姫「・・・私と同じように!」
南姫「タッタ二人デ何ガ出来ルノ?コチラハホボ無傷」

南姫「あら、ここの海域は貴方達以外の子は掌握してるのよ?」

タ級「ん?おお、やっほう、ヲ級っち」

ヲ級「タ級」

タ級「随分な大所帯。いっぱい連れてきたね」

ヲ級「南方棲戦姫様のご命令。ほとんどの子を連れてきた」

長月「なっ・・・」

南姫「ナッ・・・!」

南姫「これで形勢逆転ね。さぁどうするのかしら?」ニコッ
南姫「・・・チッ」

南姫「・・・覚エテナサイ。雑魚ノ寄セ集メ如キ・・・」

南姫「あら、仲間意識はどうしたの?」

南姫「そんなことじゃ、いつまでも部下は言うこと聞かないわよ?」ニヤッ

南姫「貴様サエ居ナケレバ・・・引クワヨ。護衛要塞達」

それだけ言うと、敵側の南方棲戦姫は去っていった

南姫「・・・はぁ」

金剛「・・・大丈夫?」

南姫「正直、ちょっと怖かったわ・・・」

金剛「そうネー。あなた会った当初よりだいぶ弱くなったもんネー」
南姫「・・・あなたも相当命知らずよね」

金剛「まぁネ。私もだんだんテートクに似てきちゃったから!」

南姫「はぁ・・・私も、丸くなったわね」

無明石「こっちは終わりましたよ」

南姫「ええ、こっちも終わったわ」

長月「礼は言わんぞ」

南姫「あなた達のお礼なんていらないわよ」

南姫「で、気を失っている朝潮はどうするの?」
タ級「私が背負います。こんなボロボロの奴等に任せておけませんし」

木曾「」カチン

木曾「俺が背負う!見ず知らずの深海棲艦なんかに任せられるか!」

タ級「見ず知らずではないと思うんだけど・・・じゃあよろしく」

木曾「ったく・・・よっと」

朝潮「・・・」

木曾「・・・ありがとな朝潮。よく頑張ったな」

長月「・・・これより帰還する!」
仮面母港

長月「気持ちがいいものだ」

長月「この母港に帰りたいと思って、帰って来れるのは」

武蔵「初めてだな。こんな気持ちで帰ってきたのは」

木曾「帰ってきたな。説教でもなんでもかかってこい」

神通「・・・本当は怖いですけど、でもあの提督になら・・・」

祥鳳「朝潮さんの分まで、怒られましょう」

金剛「あれ、そういえばテートクも居るんでしょ?」

南姫「ええ、その予定よ」

パチパチパチ・・・

どこからともなく、拍手の音が聞こえる
提督「おかえり」

長月「・・・作戦完了だ」

提督「よく無事で帰ってきたな。何か言いたいことはあるか?」

武蔵「見ての通りボロボロだ」

木曾「朝潮に至っては気を失っている始末」

祥鳳「・・・お好きなように」

神通「・・・」

提督「随分と早合点だなお前達」

六人「えっ?」
提督「祥鳳、しっかり言ったとおりにしたんだろう?」

祥鳳「えっ?あ、はい・・・」

祥鳳「言われた通り、前任とあなたの違いを思い出させました」

祥鳳「ですが、最後まで言い終わる前に」

祥鳳「朝潮さんに全てを持って行かれましたが・・・」

提督「それでいい」

提督「俺の命令を無視しても、あの連絡の際帰ってきてもよかったんだ」

提督「だが、お前達は命令に従い、そして敵艦に敗北し」

提督「ボロボロになりながらも、無様にも帰還してきた」

六人「・・・」
提督「だが、それでいい。恥じることはない」

提督「お前達は今回の目的を達成した」

提督「その心に根付いた帰ることへの恐怖心・・・」

提督「それに打ち勝ったのだからな」

長月「・・・貴様・・・最初からそれが狙いで」

提督「どうだ。気持ちがいいものだっただろう」

提督「こうして帰ってこれるのは」

武蔵「・・・否定はしない」

木曾「・・・本当に帰ってきたいと思ったのは、こいつのおかげだ」
木曾「おそらく、こいつが居なければ、俺達はお前をまだ疑っていた」

木曾「祥鳳の言葉だけではまだ足りなかっただろうな」

提督「それも計算済みだ。当然だろう」

提督「全てはお前達のために」

提督「この鎮守府の再興ために」

提督「そして・・・」スッ

提督はおもむろに仮面を手に

提督「俺の計画のために」カラン

仮面は、音を立てて地面に落ちる
ザッ

無提「なんだ。もうバラしたのか」

憲兵「あらー」

提督(憲兵)「少し遅かったですね。提督殿」

神通「け、憲兵さんっ!?」

武蔵「憲兵が二人!?」

木曾「・・・双子か!?」

憲兵「あー青葉は違いますよー」バサッ

憲兵の頭がすぐにピンクに

青葉憲兵「いやーすっかり憲兵様気分です」
青葉「身長差はあまりありませんでしたし、顔のパーツの位置も似てましたし」

青葉「カラコンや服、カツラなどで瞳の色、体や髪はなんとかなりましたが」

青葉「どうも声だけが苦労しましたけどね」

取ったカツラをくるくると回しながら青葉はそう言った

提督「俺が提督として入る前から計画していたんだ」

提督「憲兵の時に何度か出入りしてたのはそのためだ」

祥鳳「計画・・・通りなんですね・・・」

提督「ああ」

長月「・・・なんとなく、お前なんじゃないかと思っては居たが・・・」

提督「・・・もうこの鎮守府は大丈夫だ」
提督「帰還に恐れる奴はもういない」

提督「それだけでも、再興・・・いや、前以上の鎮守府になるだろう」

提督「出撃するにも、帰還するにも、それなりの覚悟が必要だからな」

提督「その心がある限り、大丈夫だ」

長月「・・・私達と過ごした日々は、お前にとっては全部嘘だったのか?」

長月「私への気持ちは・・・嘘だったのか?」

提督「さぁな」

提督「とりあえず、もう一つの問題を解決しなくては」

無提「・・・行くのか?」

提督「そろそろ行きましょう。あの人ももう待っているはずです」

青葉「資料もいっぱいありますよー。協力者も」
提督「・・・それでは仮の提督としての最後の命令を下す」

提督「木曾、神通以外の四人は入渠を」

提督「木曾と神通は改装室へ」

提督「・・・今回の出撃で、足りてるはずだぞ。改二への練度は」

木神「っ!」

提督「・・・では、行きましょうか。提督殿」

無提「ふふ・・・変わったな」

提督「・・・子供の頃に三ヶ月ほどしか会っていないのに」

提督「俺の事はなんでもわかるんだな・・・化物め」

無提「子供の時以来だな。生意気なクソガキめ」
長月「・・・」スッ

提督二人と青葉が去ったあと

長月が提督が落とした仮面を拾い上げた

木曾「長月・・・」

神通「長月さん・・・」

長月「不思議だな。利用されたにも関わらず」

長月「・・・司令官に対して、嫌悪感が沸かない」

長月「司令官のことを憲兵だと察した時から」

長月「利用されていることもなんとなく勘付いたんだろうな」

長月「ふふ、それならこっちにも考えがある」

長月「みんな協力してくれ・・・もう一度告白がしたい」
憲兵部隊本部

無提「司令部からご苦労さんだな。司令官殿?」

憲兵司令官「我が規律を守る憲兵にて」

憲兵司令官「職権濫用をする輩が居るのは見逃せん」

憲兵司令官「もちろん、ガセであったとしたら、覚悟は出来ているんだろうな?」

憲兵司令官「期待の新人と言えど、容赦はしないぞ」

提督「もちろんです。証拠も全て揃えてあります」

提督(妹に秘書艦との同性愛をほのめかせて囮として協力させ証拠を集めたんだ)

提督(憲兵の腐った所を直すため、色々としてきたんだ)

提督「司令官殿。とくとご覧下さい」
完全勝利S

憲兵司令官「手際が良すぎる・・・言い返す言葉もない・・・」

憲兵司令官「どうやってここまで証拠を集めた?」

提督「・・・自分は、綺麗事を実現させるためにはどんなに汚い手でも使います」

提督「平和にさせるための戦争のように」

提督「自分の憧れである、化物もそうするはずですから」

憲兵司令官「そうか・・・ご苦労だったな。それで?お前はどうしたいんだ?」

提督「・・・」

憲兵司令官「お前ほど有能な人材、あまり手放したくはないが」

提督「自分は、憲兵としてやっていくため、より良い環境を作るつもりでした」

提督「しかし、作っている過程で、部下に慕われる嬉しさを知ってしまいました」

提督「それだけ言えば理解して頂けるかと・・・それでは」
憲兵司令官「・・・ああ。もう下がってもいいぞ」

提督「では、失礼します」

提督「・・・あなたに言われた通り」

提督「俺は自分の進みたい道を自分の意思で選択した」

提督「次はあなたの意思を、心を自分の部下に打ち明ける番だ」

提督「もう、心は決まっているはずだぞ。化物が」

無提「・・・言うようになったなクソガキ」

提督「ふん」

パタン
憲兵司令官「・・・はぁ・・・手続きが面倒だなぁ・・・」

憲兵司令官「新たな人材の補充も必要だし・・・」

無提「はは、あんな理由を突きつけられては」

無提「やらざる負えないな」

憲兵司令官「そうだな・・・化物とはお前だったのか。随分、慕われているね」

無提「色々あったからな」

憲兵司令官「そういえば、そろそろ妻にも会ってやってくれないか?」

憲兵司令官「上達した料理を食べて欲しいってさ」

無提「そうか。お前はどう感じてる?」

憲兵司令官「すごく美味くなってるよ」

無提「ならよかった」
憲兵司令官「お前、奥さんが生きていた頃に戻ってきたな」

無提「そうか?」

憲兵司令官「ああ」

無提「・・・」

憲兵司令官「・・・そろそろ、新しい奥さんでももらったらどうだ?」

無提「・・・あいつも、はっきりと自分の意見が言えるようになった」

無提「そろそろ私も、けじめを付けなくてはな」

憲兵司令官「それがどういうものかは知らんが、健闘を祈るよ」

無提「お前も、面倒な手続き、頑張れよ」

憲兵司令官「やだなぁ・・・」
本部の外

無提「すまない。待たせた」

三日月「いえいえ、あまり時間かかりませんでしたね」

無提「手際が良かったからな」

無提「相手が反論する暇も無しだった」

三日月「ふふ、それは何よりです」

無提「それでだが三日月」

三日月「はい?なんでしょうか?」

無提「娘の、美月の墓参りに付き合って欲しい」

三日月「へっ?」
美月の墓前

三日月「・・・」

無提「・・・」

二人はお墓の前で目を瞑り、両手を合わせて居る

無提「・・・三日月、お前は、私の事が好きなのか?」

三日月は一瞬、驚いたような顔をしたが、すぐに微笑んだ

三日月「・・・はい。少し照れくさいです・・・」

無提「・・・なら、お前に謝らなくてはいけないことがある」

三日月「なんですか?」

無提「ずっと、お前の気持ちを聞いてから考えていた」

無提「やはり私は、お前の・・・お前達の気持ちには応えられない」
三日月「・・・」

無提「女々しいかもしれないが、やはり、妻となる女性は」

無提「今は亡き妻しか考えられない」

無提「妻は、正しい選択をした」

無提「助けた二人は、こうして立派になっている」

無提「自惚れかもしれないが、私も色々な人の助けが出来ている気がする」

無提「それを考えると、妻はとても立派に、自分らしく生きたし」

無提「後悔なく生きてくれたと思う」

無提「その妻に対して私は、今も無尽蔵に愛が溢れてくるんだ」

無提「つくづく思う。私は、本当に妻のことを愛していたんだと」
無提「・・・お前がどれほど好きでいてくれても」

無提「私はお前の気持ちを受け入れることも、幸せにしてやることも出来ない」

無提「無論、響や鈴谷も」

無提「本当にすまない」

三日月「・・・それだけですか?」

無提「えっ?そ、そうだが・・・」

三日月「・・・ふふ」

無提「んん?」

三日月の意外な反応に、無提の頭にハテナが浮かぶ
三日月「司令官は一つ勘違いしていますよ」

無提「なんだと?」

三日月「前にも言いましたけど、私は司令官のお側に居られる」

三日月「それだけでも幸せなんです」

三日月「別に、愛してほしいなんてちょっとしか思っていません」

三日月「お側に居られるだけじゃなくて」

三日月「そこまで考えてくれて、私はそれだけでも十分幸せです」

無提「・・・そうなのか?」

三日月「まぁ少しは残念ですけど・・・」

三日月「もし司令官が私を幸せにしたいと少しでも思ってくれているなら」

三日月「ずっと、あなたのお側で仕えさせて下さい」

三日月「もちろん、側に置いておくのは司令官のお気持ち次第ですけど」
三日月「・・・美月さんのお墓の前でこういうお話したのも」

三日月「司令官なりのけじめなのでしょうし」

三日月「お二人共認めてくれますよ」

三日月「そして、どんな形の幸せであれお二人は願ってくれているはずですよ」

三日月「私達部下の幸せを第一に考えてくれる司令官の奥さんと娘さんなんですから」ニコッ

三日月「あっ!私も司令官の幸せはずっと願っていますよ!?」

無提「・・・いい子だな。本当に・・・」ナデナデ

三日月「えへへ・・・少し恥ずかしいです・・・」ニコニコ

無提「墓も綺麗になったし、そろそろ帰ろうか」

無提「それでなんだが、いい子なお前にご褒美をあげようと思う」

三日月「ええっまたっ!?そんないいですよ!」

無提「もらってくれ。何が欲しい?」

三日月「い、いいんですか・・・?」
三日月「・・・そうですね・・・なんでもいいんですか?」

無提「ああ」

三日月「そ、それでは・・・その・・・」

三日月「パソコンの中の秘密フォルダ」

三日月「家族の思い出や、奥さんとの馴れ初めとか惚気とか・・・」

三日月「写真を見ながらお話して欲しいなぁ・・・なんて」テレッ

無提「・・・どうしてあのフォルダの中身が家族写真や妻との写真だと知っているんだ?」

三日月「えっ?響ちゃんが自慢気に語ってました」

無提「ああ・・・そうか・・・わかった。いいぞ」

無提「お前が望むなら、話そう・・・あのフォルダもそろそろ更新時か」

無提「今度、鎮守府のみんなで写真を取ろう」ニコッ

三日月「はいっ!」

提督「・・・」

提督(帰ってきてしまった・・・帰ってくるつもりは無かったんだが)

提督(一ヶ月ぶりだな。夜に、この街灯の下、長月が本を読んで待っていたんだな)

提督(流石に・・・待っては居ないか)スッ

元憲兵の提督は、一か月前に長月が座っていた所をさっと撫でる

提督「・・・柄にも無くドキドキしている」

提督「どうしたものか・・・どういう顔で会えばいい」

提督(一か月、嘘ではあったが、仲良く過ごしてきたつもりだ)

提督(その築いた絆を信じて普通の顔で会えばいいのか?)

提督「・・・絆か・・・家族との絆ですら信用できないのに・・・」

提督「そんなものにまで頼ろうとするとはな・・・俺も心が弱くなったな」
鎮守府出入り口

提督「・・・」

パタン

壁に寄りかかった長月が、読んで居た本を閉じる

長月「やはり帰ってきたか・・・遅かったな。忘れ物だぞ」スッ

提督「・・・」スチャ

仮面を受け取りすぐに装着する

提督「ああ」

長月「どうしてすぐに付ける」

提督「いや・・・」

長月「もう正体もバレてるんだ。いい加減顔を合わせて話そうじゃないか」

提督「・・・わかった」スッ

提督は、仮面をしまった
提督「で、いつから俺のことを憲兵だと思っていた?」

長月「一緒の布団に入った時ぐらいにだな。あと匂いか」

神通「一緒のふとむぐっ!!」

提督「・・・前にも似たような状況があったな・・・」

長月「そうだな。その時の再現だ」

提督「・・・つまり?」

長月「私は回りくどいのが苦手だ」

長月「だから単刀直入に言う」

長月「お前の事が好きだ。憲・・・いや司令官」
提督「・・・俺は・・・」

長月「答えはいらない。お前は演技で私を好きだと言っていたんだろ」

提督「・・・」

長月「お前が憲兵だと知った時、私は安心した」

長月「誰か二人を同時に好きになるなんて、少しショックだったしな」

長月「・・・しかし、やはりそういう気もあるのだろうか?」

提督「・・・まぁ、お前のような年頃の女は」

提督「恋に恋するのが趣味みたいなものだからな」

提督「その年で、一人の男に決めるのはまだ早い」
長月「そういうものか?」

提督「・・・俺はいい女が好きだ」

提督「俺の仕事の邪魔をせず、出来るなら役に立つ女だ」

提督「・・・お前なら、大人になればいい女になれる」

提督「その時、もしお前が俺の事が好きなら」

提督「・・・俺から告白させてくれ」

長月「っ!?」

提督はそう言い、長月の頭をポンポンと叩く
提督「お前ら出てこい」

提督「改二なった感じはどうだ?」

木曾「・・・お、おう!絶好調だぜ!」

神通「ええ、すごく調子がいいです」ニコッ

武蔵「・・・なぁ提督よ。これからも提督として、我々を指揮してくれるのだろう?」

提督「もちろんだ。これからもビシバシ行くぞ」

木曾「提督にビシバシと厳しくされた事なんて記憶にねーけどな」

提督「・・・そうだったか?」

神通「ふふ・・・そういえばそうですね」
提督「・・・さて」スチャ

長月「むっ」

提督「仮面は俺の個性だ」

大淀「顔が見えないと本当の自分が出せるからですよね」ニヤニヤ

提督「ぶほっ!お、お前いつから居た!?」

大淀「あちらの提督さんに全部聞いてますよ」ニヤニヤ

提督「あの化物め!余計なことしか言えないのか!!」

長月「なんだ。そうだったのか」

神通「案外、恥ずかしがり屋さんなんですね」

木曾「武蔵とそっくりだな」

武蔵「い、一緒にするな!!」
提督「全く・・・」

提督「まぁいい。今日は疲れただろう。無茶をさせて悪かったな」

提督「明日より、本格的に鎮守府としての活動を始める」

提督「という事で、今日はもう休もう」

長月「ああ、そうだな」

武蔵「久々の出撃だったしな。私も疲れた」

木曾「それで?秘書艦は?」

提督「そりゃ長月だが・・・頼めるか」

長月「・・・ああ、もちろんだ」ニッ

提督「頼りにしてるぞ」

長月「あんまり、頼りにされても困る・・・わけないだろ? お前は別だよ、司令官」
提督「そうだ。朝潮の容態は?」

長月「落ち着いている。明日にでも目を覚ますと明石が言っていた」

提督「そうか。あいつには一番無茶させたからな」

長月「二、三日休暇をやろうと思っている」

提督「そうしてやれ」

木曾「にしても、よく提督が帰ってくると思ったな」

長月「・・・部下に好かれる喜びなら知っているしな」

提督「そこまで見透かされてたか」

長月「それに、戻ってくるまでここで待っているつもりだったしな」

提督「ふふ、怖い女だな」

長月「その怖い女を惚れさせたのはお前だがな」
無提鎮守府

無提「あいつは両親に見捨てられ、一年間、孤児院で過ごし」

無提「里親に引き取られていったんだ」

無提「親子という絆を裏切られたあいつは、人に気を使うように生きてきたらしい」

無提「人の心がどうすればどう動くか、どうすれば気に入られるか」

無提「難しく考えてな」

無提「憲兵になって現れるまで会ったことはなかった」

無提「里親からの手紙は定期的に来ていたがな」

無提「見た目だけでは全然気付かなったが」

無提「性格は子供の頃から変わってなかったな」

三日月「司令官も変わってなさそう」

無提「そうか?」

響「Да да(そうだよ)」
無提「・・・提督になってから、あいつは変わり始めた」

無提「いい方向にな」

無提「これから、あいつは、臨時としてではなく一人の提督として」

無提「色々なことに気付かなくてはならない」

無提「例えば、お前達が戦わなくなるほど平和になった時」

無提「お前達を一人前に成長させておくのも、私達提督の仕事のうちだ」

無提「それに気づくのはいつになるかはわからんが」

三日月「・・・それじゃあ、司令官は育て方を間違っている事に・・・」

鈴谷「誰の事っ!?」
響「誰の事?」

無提「頭が痛い。というか、いつからそこにいたんだお前達は」

鈴谷「なんか面白そうな事してたからつい」
無提「まぁいい」

無提「お前達と触れ合う事で私達提督も成長出来る」

鈴谷「提督が言うと説得力あるねぇ」ニヤニヤ

無提「うるさい。持ち場に戻れ」

無提「お前ら二人はこれから演習だぞ」

鈴谷「ダー?(そうなの?)」

響「Да да」

鈴谷「忘れてた」

無提「とりあえず準備してこい。あと四人にも声をかけておけ」

響「Окей(オーケィ)。行こう鈴谷」

三日月「・・・ハラショーじゃないんだ・・・」
無提「・・・ああ」

無提「そうだ三日月。指輪は持っているんだろう?」

三日月「へっ?ええ・・・肌身離さず持ち歩いてますけど・・・」

無提「後で、一緒に改装室へ行こう」

無提「戦力として、秘書艦としての性能アップをな」

三日月「っ!!」パァァァ

三日月「はいっ!!」ギュウ

満面の笑みで、三日月は大好きな提督に抱きついた

無提(あいつも三日月も、今後の成長が楽しみだな)ナデナデ
無提(そう思えるのも、助けてくれた君のおかげだ)

無提(空から見てる?君が助けた二つの命と夫は)

無提(今も、立派に育っているよ)

無提(君の意思を継いで、人助けもしている)

無提(血の繋がりなんて関係ない。この子達と元気に生きて行くよ)

無提(そして・・・変わらず、僕は君を愛して生きていくよ)

終わり

鈴谷「えっ?新しい奥さんを作る気がないって?」

響「нет проблем(問題ない)」

鈴谷「ダーダー」

三日月「本当にもうあなた達はっ!」
おまけ(ちょっとした後日談)

南姫、三日月との話、無提
朝潮、長月との話、憲兵
三日月と提督、満月の夜

提督「もう寝てもいいんだぞ」

三日月「まだ起きてますよ」

三日月「先に寝ちゃうと司令官が寂しがっちゃいますしね」ニコッ

提督「・・・指輪をしてから、随分と大胆になったな」

三日月「司令官の心のケアも私達のお仕事です」

三日月「私をもっと頼りにしてください」

提督「・・・電ほどの安心感はないなぁ」

三日月「うーん、ショック」

提督「ふふふ・・・電とは三日月より付き合いが長いからな」

三日月「こ、これからは電ちゃんに負けないぐらい司令官と一緒に居るつもりですし!」

提督(指輪をしてから、少し子供っぽくなった気もする)
南方棲戦姫の本音

南姫「月を見ているの?欠けた月なんて、見ても面白くないでしょうに」

提督「そんなことはない。私は細く傾いた三日月の方が好きなんだがな」

南姫「変わってるわね」

提督「死ぬのが楽しみとか言っているお前に言われたくない」

南姫「呪いの原因でもある艤装自体も簡単に外せるようになったし」

南姫「あとは寿命を待つのみ。やっと生き死にの連鎖から逃れられる」

提督「・・・死ねるといいな」

南姫「ええ・・・まぁ、あなたよりは先に死ぬつもりはないから安心して」

提督「お前も言うようになったな」

南姫「ふふ、私も、あなたの事が好き」

南姫「だから、私があなたの死を見届けてあげる」

南姫「平和になった世の中でね」

提督「・・・艦娘も深海棲艦も関係のない平和な世になるといいな」

南姫「・・・そうね」
長月と提督

長月「太ももじゃない。背中だと言っているだろう」

提督「いや、こっちは俺の趣味でだな」

長月「・・・セクハラで憲兵を呼ぶぞ」

提督「元憲兵の俺にぬかりは無い。合意の上でならセクハラもしていいんだ」

提督「実は、鎮守府内恋愛が禁止されていないんだなぁこれが」

提督「禁止されているのは無理やり、相手の合意がない性的行為だからな」

提督「鎮守府内恋愛を禁止していたらほとんどの提督が捕まるだろう」

提督「俺はお前にマッサージをして欲しいと言われて」

提督「仕方なくマッサージをしてやっているんだ。合意の上だ」

長月「・・・仕方ないな・・・す、好きにしろ」カァァ

ガチャ

木曾「提督いるか?ん、おお悪い。エロい事してる最中だったか」

提長「そ、そういうわけじゃない!!」
朝潮とりんご

朝潮「・・・司令官。最近、すごくりんごの夢を見るんです」

提督「薮から棒にどうした」

朝潮「司令官が来てから夢を見るときは必ずりんごを見るんです」

朝潮「司令官と一緒に食べてたり・・・かと思いきや長月さんとりんごを取り合ったり」

朝潮「さらに青くて美味しくないりんご食べてたり・・・」

朝潮「何か不吉なものの暗示なのでは・・・!?」

提督「ふむ。どんな状況だ。そしてどうして俺にその話をした」

朝潮「・・・なぜでしょう?一緒にりんごを食べてたからでしょうか」

武蔵(提督に用事があるから来たが・・・取り込み中か)

武蔵(朝潮はまだ自分自身が提督を好きなことに気付いていないのか・・・)

武蔵(周りから見ていればすぐに分かるものだがな)

武蔵(・・・まぁ、どちらにしろ今の朝潮では長月には勝てんな)

神通「・・・武蔵さんが占いが好きそうな乙女な顔してます」

武蔵「ぐっ!?い、いつからいた!?というかそれはどういう顔だ!!」
今SSはこの辺で

それでは

やっぱり
真面目な提督に艦娘達がちょっかい出す感じの方が
書いてて書きやすいですし楽しいですね

そして、やはり続編は駄作になりますね
元スレ:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1429190829/

-武蔵, 長月