艦これSSまとめ-キャラ別これくしょん-

艦隊これくしょんSSのキャラ別まとめブログ


夕張 大淀 清霜

【清霜・艦これSS】攻めるばっかりが戦いじゃないよね!

2017/03/12

※一撃轟沈あり というか結構死人がでる系統

※深海棲艦が本気出したら悲惨 ってだけ

※雰囲気暗いのとか胸糞系好きな人以外はブラウザバック推奨
五月二二日

深海棲艦の反攻により複数の鎮守府が壊滅、指揮官を含め多数の所属艦娘が死亡。

そんな伝達を見て思いました。
「まさか」

そして心のどこかではこうも思いました。
「ついに」
これまで深海棲艦の生態は謎に包まれてきました。

どこから来たのか?

何体 何万体いるのか?

いったい何者なのか?

その中で多くの関係者が抱えていた疑問

『なぜ奴らから攻めてこないのか』
決まった海域に出撃すると反撃はしてくるが、鎮守府を直接攻撃してくることはない

遠征部隊にも襲いかかってくることはない

侵攻の伝達を受けることはあるが対応する頃には動きはない

こちらが大破すると途端に攻撃の手を緩める…なんて噂もありました

物量で圧倒的に劣る私たちが戦況優位に進めてこれたのはただ一つ

奴らが防衛戦に徹するというルールを守っていたから

しかしついに… それが崩れてしまいました。
さて、このことをどう提督に告げたものか…

思い悩んだ末、事実を伝え判断は一任することに致します。

もし、困った提督であればただ事実を伝えるとパニックになるだけでしょうが

我が鎮守府の提督は『それなりに』有能。

軍人らしく真面目で融通がきかないところは見受けられますが責任感も思いやりもあります。

海軍『提督』になるほどの人材なのだから当然だろう?って

いえいえ、これがなかなかどうして

人間、テストの成績も出身大学もその方の人間性を表わすものではないわけで……

ましてやコネの有無など

でもそのあたりで社会的地位は決まるわけで…

それはまぁ本筋とは関係ないですね。

あ、申し遅れました。私は任務娘こと大淀
この鎮守府では第一部艦隊旗艦、つまり秘書艦も兼任しております。
提督「常時防衛部隊を展開した場合の負担について」

提督「人数を裂く分。遠征を3割削減したとして資材減少量も計算しろ」

提督「また軍令部に連絡。この鎮守府への具体的な侵攻時期と敵戦力の想定を依頼」

なにか問題が報告された時

提督は常に判断材料となる数値を重視する方です。
提督「それに意見を聞きたい。資料が揃ったら明石と夕張を呼んで会議を開く」

即決する自信がないときは知識のある者に説明を求めます。

そして出揃ってから方針を考えられます。

当然、秘書艦たるもの行動パターンは把握

「全て用意済み、すぐに会議は開ける」

と告げると一瞬提督の顔は歪み……

支度ができるまで数時間。問題を先送りしたい気持ちがあったのでしょう

私も決めたくないことを決める前は部屋の掃除をしたくなりますよ。
明石「修繕担当より報告。ドック稼働率は平均88% 負傷発生が1割も増えれば修繕しきれません」

夕張「管理担当。これ以上出撃総数を増やすと疲労面でも編成面でも苦しいかと…」

大淀「侵攻予想は不明」

大淀「陥落した鎮守府には200隻余りの深海棲艦が一斉に攻めて来たそうです」

提督「………」

報告を受けた提督は胃が痛そうな顔で固まっています
無理もありません。
今まで攻めることだけ考えればよかったものが守りまで

なんと戦力の小出しもしてくれない

ただ鎮守府に閉じこもっていることを上層部が許すとも思えない

でも防衛の用意も並行して今まで通り任務をこなせるかというとまぁ難しい
防衛しなきゃ攻め込まれた時おしまい

そもそも任務を放棄したら達成分の補給が減らされる
遠征に出せる頭数も減るというのに…

こんなんどうするか瞬時に判断できるのは馬鹿かロボットだけです。
明石「うーん… このことって皆に言っちゃ駄目だよね?」

大淀「はい。混乱防止のため我々のような管理業務担当者以外は厳禁との命令」

明石「すぐ広まりそうだけど」

夕張「やだぁ。もうこれ遺書書いたほうがいいかな?」

大淀「残した家族でも?」

夕張「はっはっはー レンチとハンマーだけが我が身内☆」
大淀「それにしても…裏切られた感ありませんか?」

夕張「あるある 今まで通りに動かなかっただけなのにねぇー」

大淀「戦力凄いんだから慣例守ってという…理不尽ですねこれ」

明石「こっち一隻修理にあんだけ時間かかるのにあっち5分後に出撃したらもう全快」

夕張「あれ、同型の別個体だと」
明石「どちらにせよ戦力あるのに攻めてこなかった不思議」

夕張「今まで何隻 何千隻撃沈させたかなー」

大淀「奴らの補給路が知りたいです どんだけ天文学的な資材を使えばああできるんだか」

夕張「軍運用は費用がねぇ 少数精鋭の私たちでも金欠」

明石「国内生産 部品メイドインジャパン 国内に金回るから公共投資ダヨ 大丈夫ダヨ」

夕張「生産国内でも原料は国外産でしょ」

大淀「総力戦だと在庫いつまで…」

夕張「あ゛ーーーっていうか結婚もしてないうら若き乙女のまま死にたくないぃー」

明石「じゃあ今から出会いを探す? おっそこに男が一人!」

大淀「あはは…」

提督のお考えがまとまるまで無駄話。4人もいて沈黙だと気を使わせてしまいます

話題が後ろ向きな内容になってしまうのはまぁ許してほしいところ。
提督「暫定的に…」

提督が口を開かれたので無駄話は止め。お言葉を聞きます。

提督「名目を付け哨戒を今の3倍に、潜水艦も使用 また鎮守府内の艤装装着を許可」

明石「はっ」

提督「出撃は最低限任務を消化できる程度 遠征組にはドラム缶を減らして武器を持たせろ」

夕張「了解です」

提督「高速修復剤は虎の子。緊急時以外使用を禁ずる」

提督「補給と戦力増強の陳情を出して回答を待とう」

そう言うと提督は溜息を吐きながら、天を仰ぎました。

後ろ向きな対応に感じるかもしれませんがこの場合は仕方ないでしょう。

攻め込んでこようが恐れるな
大和魂だ不屈の心だとか根性論言われたらどうしようかと思いました。
今晩は普段よりいい寝酒を用意してあげることにします。

私たちを思いやった判断をしてくれたお礼として。

明石「明後日は休暇予定でしたが返上しちゃいます!」

夕張「資材消費の少ない任務消化編成を練ってきます」

二人も感謝の意を示している模様。

さて、このあとどうなるか。ろくな未来は待っていないかもしれませんが
戦時中の話ですもの。それもしかたないのかもしれません。せめて精一杯頑張りたいと思います。
六月二日

清霜「しれーかーん♪ えへへぇ。清霜3日連続MVPだよ すごい? すごいでしょ?」

伊58「…そもそもMVPの決め方が納得いかないでち!」

清霜「決め方?」

伊58「デコイもしてるゴーヤのほうが貢献度高いでち! 防御面の採点がされてないでち!!」

清霜「あっ、それ知ってる~ 負け犬の遠吠えっていうんだよ~」

夕張さん考案 『任務消化&哨戒部隊』から二人が執務室に戦果報告に来ました。

低燃費の駆逐艦と潜水艦の混成部隊

これまで潜水艦と水上艦を同時出撃させることはあまりなく

連携が心配されましたが困難はないようです。

お互い幼い子が多いから仲良くなりやすいのでしょうか。
清霜「いひゃいひゃい ほっぺひっっぱらにゃいでよ~」

伊58「止めてほしかったら負け犬というのを撤回するでち! あっ、セーラー服引っ張るなぁ」

いや、本当に幼子が戯れ合う姿はとても美しいものです。

大淀「そう思いませんか? 提督」

提督「同意…したらどうする?」

大淀「はい その場合は青葉さんにお伝えするだけで」

提督「否認させてもらう。伊58はそれほど幼くもないしな」

大淀「……今どこ見て言いました?」
あ、絶対今私の胸部装甲見てスクール水着のふくらみと見比べた

くそう。ちびっこいくせに結構あるなこいつ

大淀「二人とも~。ご褒美に他の四人も誘って間宮行きましょう。会計は提督で」

清霜「間宮!? やたー!」

伊58「今日の大淀は普段より優しいでち! 腹黒眼鏡とか言ってごめんでち!」

大淀「…初耳なんですが」

清霜「なにしてるのさー 早く行こうよ~」

大淀「他の4人もって言ったでしょ? 入渠終わってからです」

提督「中破の霞は約120分後に入渠完了だ」

清霜「えーっ そんな待つのー」
清霜「……やっぱ駆逐艦は損だなぁ 戦艦になりたいよ」

ゴーヤ「どういうことでち?」

清霜「だってさー戦艦の人は怪我してもバケツが出てきてすぐ直してもらえるじゃーん」

清霜「でも駆逐艦は基本通常修復 治るまで痛いし時間かかるし」

清霜「そーだっ♪ 3日連続MVPの清霜のおねがーい。バケツ1つ使わせて♪」

提督「駄目だ!」

清霜「……」

清霜「…ふぇ」

提督があまり強く拒否するものですからかわいい清霜ちゃんが縮こまってしまいました。

楽しくお話していたのに、嬉しいことがあったのに
なんで自分が怒られたのかわからずしょんぼりしています。

提督「…大きい声を出してすまなかった」

提督「霞が入渠終わったら行ってこい うん。ビフテキでもカレーでも好きなものを許可する」




大淀「子供に怒るとか」

提督「面目ない」

大淀「まぁいいですけど」

提督「…」

大淀「いい知らせ来るといいですね。奴らが進撃を停止。従来の戦術に戻ったとか」

提督「ああ」

六月六日

『追加余剰戦力無し。作戦の変更を認めず 各員一層奮励努力にて補うべし』

軍令部より戦力強化の要請却下。

同時に燃料の割り当て削減が通知

攻撃を受けていた油田所在地域の鎮守府が制圧されたとのこと 仕方ありません。
六月十一日

長門「なぜ我らを出撃させない? 新海域に出撃しようとしない?」

加賀「その通り 働きがなければ最高の練度を築いた優秀な子達が哀れです」

提督「資材消費を考慮して」

長門「資材が理由ならなぜ遠征を減らした」

加賀「あなたの作戦指揮は評価しています ですがここ二週間ほどは…」

提督「戦略的視点による決定だ」

長門「どうしたそんな消極的姿勢で… 今まで何百何千どの戦闘でも勝利を納めているではないか」

加賀「慎重さは大切 でも度が過ぎている」

提督「…大局を見て戦闘を行うべきではないと判断した」
急に出撃から外された戦艦空母さん達が説明を求めるのは当然。

軍紀上、上層部の命令によりその理由を説明できないのもこれまた当然。

どちらも理屈のある行動をしているのに対立してしまう。組織って難しいものですね。

不満を言われているだけならなんの損害もないけれど。

ただ混乱防止とはいえ、そろそろ隠し通すのも限界ですねぇ……ここまで陥落した鎮守府が増えると

今日もまた一つ

いったいどれだけの敵数が…
六月一三日

遠くない場所に所在する鎮守府が陥落

そこから逃げてきた艦娘により、事実が皆に知れることとなりました。

嵐「畜生…」

嵐「いきなり いきなり攻めてきやがって」

彼女は陥落した鎮守府にて第四駆逐隊という部隊に所属していた艦娘だそうです

もっとも、今では部隊ではありませんが

嵐「萩も舞も爆撃で吹っ飛んじまった… のわっちは2人の遺体……いや、破片を拾おうとして」

嵐「『今、修復剤用意するから』『大丈夫だから』って」

嵐「馬鹿だよあいつ バラバラになっちまったらもう修理もなんもねぇのに…」

陽炎さんと不知火さんに介抱されながら泣きじゃくる彼女の姿は痛々しいものでした

そんな彼女を見つめる他の艦娘たちの姿も痛々しいものでした

怯えていたのです。
提督「上陸中に攻められると能力はかなり下がるのだな」

夕張「ですけど守備隊を海に出撃させてると……燃料消費が」

提督「仕方あるまい」

障害物が多く、機動力が発揮できない陸上だと回避性能が著しく下がる

出撃、洋上待機させてしまうと燃料を消費し疲労も貯まる

敵が見えてから出撃したのでは間に合うかどうか…
発進準備している間に砲撃されたら終わり

守りには向かないという私たちの欠点。

地面に足をつけて戦うならば多少頑丈な一般兵でしかありません

陸地を守りながらでは海上にいても機動力は生かせません

「これが戦争なんだ 怯えるな」
と長門さんが叫びますが逆効果なのではないでしょうか。
六月一五日

名取「ごめんなさい私が悪いんです 私の力が足りなかったのが悪いんです ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

真っ青な顔で謝罪を繰り返すのは遠征部隊の名取さん

今回犠牲者を出し、彼女を含めた三名が重傷を負った遠征部隊を率いていた方

その遠征部隊の中にはほんの半月前。あんなに明るかった清霜ちゃんも参加していました。
提督「怪我の具合は」

清霜「……霞ちゃんがね 清霜の目の前で沈んでった」

清霜「手をね。海の中に手を伸ばしたら髪の毛に触れたんだ でも掴みきれなかった」

清霜「清霜がもっと強かったら…」

声を押し殺すように提督の胸の中で泣く清霜ちゃん

あのかわいい笑顔はもう見ることができないかもしれません。

遠征部隊が襲われる想定も警戒もしていましたが実際起こってしまうと…

少数なら敵に見つかりにくい、と言うだけで見つかる時は見つかるようです

しかし遠征に警護を付けても収支は赤字になるでしょう

提督「当分の間遠征任務は中止とする」

まぁそうなりますか

果たして資材はいつまで持つのでしょうか。
六月一六日

名取さんが首を吊っているのが発見されました。

飲めないお酒を大量に飲んで、文章になっていない遺書を書き散らして。
六月十八日

定期補給便が到着せず。

今後は護衛艦を出す必要があるとの連絡が

「冷静に考えるとよく護衛なしで補給届いてましたね? 今まで」

そう言って夕張さんが大きな声で笑いました。

私も明石さんも提督でさえもつられて思わず笑いました。
六月二十六日

いつ来るか いつ来るか

多くの子が怯えています。

今までは出撃が終わったらゆっくり枕を高く寝ていられたのに

こんな状態が続いては戦う前から参ってしまう子が出る危険が

上層部の隠蔽体質にも利するところはあったかも?
今週の補給便はまたしても到着せず

果たして沈められたのか送る資材自体が揃わないのか…
大淀「順番に、重症者から順番に並んでくださーい」

ドック待ちをする艦娘たちが15,6人。
六月末日にあった新イベント 第1回 深海棲艦さんの鎮守府攻略を防いだ代償です。

どうにか追い返しましたが奴らから攻めてくると半端ないですわー
何回撃退しても無限の物量波状攻撃でこっちの修理がおいつきませんわー

1回目の部隊撃退するよね 2回目の部隊も撃退するよね 3回目4回目56789
あっちは無限コンテニューなのにこっちは1回負けたらおしまいとか

幸いにも死者は出ませんでしたが守備側というのも大変なものですね。
伊勢「こりゃどのくらい待ちかなぁ。肉が抉れてるの放置したら…腐りそう。痛いし」

日向「仕方あるまいよ。ドックの順番を待とう」

伊勢「バケツ…使いたいなぁ 修復剤供給が滞ってるってのは深刻なの?」

日向「教えてくれ 情報の開示が足りないと思うのだが」

眼鏡を拭くふりをして修復剤の話が聞こえない演技をすると

どうでもいいこと、瑞雲の補充なんかの話をまくしたてその場を立ち去ります。

逃げ去りますと言い変えても可

高速修復剤の供給は完全に停止すると連絡がありました。
本土防衛部隊に優先供給されるという理由です。

今回重傷者に使って現在の残バケツ数はもうわずか
どうしましょう
明石「建物の修理を開始します! 動ける方は手伝ってー!」

そんなことを考えていたら明石さんの声

そういえば襲撃により、鎮守府のあちらこちらに爆撃の穴が

普段はカレーや女の子の甘酸っぱい匂いで溢れる居住区も硝煙の臭いで一杯

部屋が燃えてしまった子もかなり居るようです。

卯月「うーちゃんの部屋が おもちゃも ぬいぐるみも 全部燃えちゃった…」

天龍「とりあえず今晩は俺らの部屋で寝ろよ」

卯月「…うん」
誰もが助け合ってお互いを慰め合っているのだけが幸いでした。

提督は通信機の前で叫んでいます
必死に救援と補給の要望を行っているようです

通るといいなぁ。
七月一日

長門「目標 …突っ込んでくる敵っ」

長門「打てぇ!!」

敵にヲ級1体がいると5.60機戦闘機を発進させる 真っ黒に見えるのでどれが爆撃でどれが艦攻なのかは知りません。
空母棲鬼だと80機は
姫が来たら3ケタは

さて、そいつらがたくさん来たら戦闘機は何機来るでしょうか?

天龍「んなもんわかんねぇよ」

正解!!

沢山すぎて数えられりゃしない。

敵が七分で空が三分  よくもまぁ衝突しないもので
昨日はほんの小手調べだったのか

赤城さんや加賀さん、翔鶴さん瑞鶴さん
各空母が艦載機を発進させますが必死に鍛えた子たちでも敵の密集地帯に突っ込まされればさほど関係ない

せいぜい撃墜される前に落とせる数が1.2機なのか3,4機なのかの違いだけで

熟練しても命中や回避率が上がるだけで弾丸当たったら落ちないわけはなく…

朝から始まった長い戦闘が終わり、ようやく敵が引き揚げた頃には日が落ちていました。
爆弾で粉微塵になった防衛拠点

そこに居たはずの艦娘達の姿はなく、あたりには手や足が散乱しています

いかに艦娘といえども爆撃の雨に耐える能力はなかったようです。

海上で戦った者も未帰還多数。矢矧や大鳳。綾波に照月といった精鋭も帰らず

だからどれだけ腕の立つ奴でも凡人が1機落とせる間に2機落とせるだけで…

物量にはかなわないよ。

今日は長い一日でした

提督はまた通信機の前で叫んでいます
増援だの支援だの色々と

けれどもどこの鎮守府も襲われ、追加戦力などない模様。

撤退希望を出して散々怒鳴られていたようですが私たちは明日に備えないと。
明けて七月二日 幸いにも今日は敵影を見ませんでした。

吹雪「……こんなのあんまりだよぉ」

夕方になり本日の攻撃は無いと判断。遺体集めにとりかかったところ
もう7月。南方の陽気ですからしかたないことですが…
ウジが湧いていました。

吹雪ちゃんは泣きながらウジを払い落しています。

睦月ちゃんは嘔吐してしゃがみこんだまま動きません。

普段はのんきな夕立ちゃんが一番キビキビと働いていたのが印象的でした。

爆弾でも使えば早いのですが、無駄に使う弾薬などはないため手作業で大きな墓穴を

どの遺体が誰のかもわからないため全員同じ穴。

叢雲「あっちにいったらまたお話しましょ またね」

叢雲さんが木片に全員の名前を書いて墓標を作りました。遺体がない子たちの分も。
埋葬を終えて鎮守府内に戻るとそこもまた血なまぐさい臭い

「ドックに入れないならいっそ殺せ」
「痛いよぉ 痛いよぉ」

火傷をした子や足を引き摺っている子、顔が包帯に覆われて誰かわからない子もいます。
何十人もの負傷者が我先にとドックに入り込もうとしています。

明石「落ち着いてください 落ち着いて」

彼女が泣きそうな顔をしているのは修理が間に合わないだけではなく鋼材も医療品も残り少ないから
治す材料が心もとないから

誰かが「修復剤を使え」と声を上げたところ不使用への抗議がたちまち伝染

明石さんが捌け口に暴行されそうな勢いなので提督を呼びに行きました。

提督が一人一人説いて、頭を下げることでなんとか納まりましたが根本的な解決とはなりません。
七月三日は早朝から猛攻撃

この日の最大の被害

それはドックが全焼させられたことでした。
提督「現海域からの撤退を申請する
敵深海棲艦侵攻により 戦力、艦娘の約2割を喪失
資材、食糧の欠乏甚だしく、修理機能をも喪失。戦力の再編成が必要であると判断する」

『不許可 同鎮守府に留まり敵深海棲艦の侵攻を食い止められたし』

提督「同海域からの撤退再検討を上申する。
負傷者甚大 修繕能力なし 数的不利甚だしくこれ以上の防衛は困難」

『戦略的視点から撤退は不許可とする 決定事項である』

提督「現海域からの撤退を再々願い…ます。
このままでは嬲り殺し」
『再々度撤退申請を不許可とする 貴殿の持ち場である』

『三百で百万に戦い抜いた古事に習え 数など理由にならない』

『本土には砲撃翌用意有り 命令不順守の場合は反逆したものと見なす』
提督「…聞こえていたと思うが撤退は許可されなかった」

悲しそうな顔をして提督は通信機を置きました。

無断撤退を選択する自由もなさそうです。

夕張「ただ時間稼ぎしろってことですかねー 前近代的だなー」

大淀「そういうこともありますよね」

三百人のって最後…

会議のメンバーも1人減りました

提督「重傷者の帰還許可交渉を続ける 住居の確保や食料配布等を頼む」
七月九日

瑞鶴「やだよ きっと生きてる だから…ね 捜索隊を」

朝潮「……見捨てると言うのですか 助けるという姿勢すら守らないのですか」

数日ぶりに敵の攻撃がなかったので未帰還者を探しに行きたいという…
望みは叶えることはできず。

常時のように捜索に資材を使う余裕はなく

私も首を振ることしかできません

かけてあげたい言葉はいくらでもありますが姉妹がいない私が言うべきではないでしょう。

現状では点呼の時いない場合やられたものと判断するしか

もし逃亡したのであれば姉妹を置いていくわけはないでしょうし…

海上で戦っていたのであれば痕跡も残らないわけで…
筑摩さんの亡骸を抱えたまま茫然としている利根さんはまだ幸せ
んなわけないですよね

遺体を埋めようとした時に「なぜ埋める」と大声で叫びそれっきりあのざま

提督の命令で神経がやられた子は拘束することにしました

非人道的ですが嫌な前例もあるのでね。
七月も半ばになると燃料弾薬に続き食糧も欠乏が顕著に

皆やせ細り生気が薄れています。

天龍「……」

長門「……」

古鷹「……」

自分の分を。僅かな分を食べ終えた駆逐艦達の視線を受けながら当直の3人が食事をしようとすると

「お腹すいた」

文月か皐月かあるいは大潮あたりだろうか
幼い声の呟きが聞こえ天龍と長門が同時にビクッと体を震わせ

そして食事だけを見つめると…掻きこむように食べ始めました。
古鷹「……」

古鷹「……残りは皆さんで分けてください」

そう言って席を立った古鷹の残飯を子供たちが大人しく分け合い始める

我先にとならないのは立派なものだと思う

米の一粒まで食べ終えていた二人は顔を赤らめ足早に立ち去っていった。
七月一九日

本日も三百隻は下回らないだろう敵深海戦艦が攻撃を仕掛けてきました。

ろくな弾薬もないこちらに対し、砲撃の雨嵐

抵抗の手段もなくもはやこれまで……

と思ったものの敵が沿岸まで到達した際に何人かが突撃をしたことで敵進軍が停滞

そこに三式弾での反撃が重なったことで幸いにも上陸は防ぐことができた

突撃を試みた者はだれも帰らなかった

その先頭は長門と天龍だった。
七月二十一日

近隣鎮守府より撤退開始する旨の連絡有り

こちらへの攻撃が厳しくなるではないかとの怒り半分

軍令部も撤退を認めてくれることがあるんだ!との喜び半分

慌てながら内容を……

夕張「食糧難による暴動&提督の殺害かぁ やだー、撤退っていうか全員軍法会議?」

大淀「提督も嫌われないようお気をつけください」

夕張「そうね もっとフレンドリーなほうがいいかしら?」

提督「……留意する」

軍としての形が保てなくなったらそりゃ撤退も許しますよね

指揮者いなかったら烏合の衆です。

このまま食糧事情が改善しなかったらここでも……

その前に全滅するかな?
七月二十二日

こちらから護衛隊を出してまで迎え入れた補給船

普段の半分程度しか積荷はありませんでしたがこんなに嬉しいことはありません。
夕張「うふふふふ 弾薬だぁ 燃料だぁ これでもうちょっと戦えるよぉ」

清霜「ご飯は…先にお供えだよね うん」

古鷹「きれいな水ですね。久しぶりに見ました」

これで3日ほどは雨水や植物の茎をしゃぶる日々とおさらば
井戸がやられたのは痛手でした…
それぞれの階級に応じて食糧や水を配給。

大した量ではありませんが一息入れられた気分。

荷を船から一通り降ろし終わると提督が声をあげます。

提督「重傷者のみ帰還が許されている 戦えないほどの重傷者のみだ」
帰還者の選別というのは非常に嫌な作業だった。

提督「熊野 帰りたいのは理解できるが骨折程度では認められん 残れ」

提督「由良もだ その程度では軽傷 残れ」

提督「駄目だ羽黒 泣かれても帰還は認められない お前はまだ戦える」

提督「本当の重傷者以外を許すと次回から重傷者の帰還が認められなくなる 我慢してくれ」
空荷になった補給船があるんだから乗れば帰れる。
残れば死ぬ可能性が高いのだから誰だって帰りたいに決まっている。

「あいつはわざと怪我をしたんじゃないか」
「頭が狂った演技をしているんじゃないか」なんてヒソヒソ話がされているのは妬みからだろう。

見栄からか「まだ戦える」
と船に乗ることを拒否した者もいるがそれは提督が説得。

「無駄飯喰いとでも言いてぇのか!」と反論し、肯定された摩耶さんは失意のまま船に乗せられた。

自力で歩けないような姿になっても帰れるのは羨ましかった。
後日、帰還する補給船護衛として選ばれた子たちが馬鹿正直にまた戻ってきたのには……
子供ばかり選ばれていた意味をどう解釈したのか

彼女らを出迎える提督のなんとも言えない顔が印象的だった。
七月二十七日

補給で来た水を使い切ったので飲料水が雨水に逆戻り

一回の補給船で運べる分ではこんなものでしょう。

夕張「人数減った分思ったより持ったわね」

そうですね

一か月前と比べたら4割くらい減ったでしょうか

夕張「はぁ 酒でも飲んでうさ晴らししたい…」

夕張「羊羹をつまみに冷えた麦酒が飲めたら死んでもいい…」

大淀「なんですかその気持ち悪い組み合わせ」

夕張「やだ~ 妄想にケチつけないでよ~ どーせどっちもないんだから」
大淀「そういえば『酒保に酒が無いとはどういうことだ~』って隼鷹さんが騒いでましたね」

夕張「まぁ弾薬庫にも弾薬ないし」

大淀「食糧庫にも米がない」

提督「作戦会議なのに作戦の話をしてくれない」

夕張「お、珍しく提督が乗ってきた~」

大淀「口を開くより考えをまとめてください」

提督「……」

明石さんの代わりでもしようとしたのかな?

とりあえず本日も大本営に撤退の許可を申請

『大局的観点により撤退は不許可 戦闘継続可能状態であると判断する』
七月二十九日

泥で作った羊羹と生ぬるい雨水で我慢してください

どうせ口には入らないんですから
七月三十日

部隊配置と資材の配分について検討中

やり慣れない仕事なので難しい

管理簿を手に取ると中から書きかけの手紙が落ちてきた。

御両親様 敵の勢いを思うに 近日中には上陸してくると思われます
大した親孝行もできず 本当にごめんなさい もしまたお目にかかれたなら……

なーんだ いるじゃないですか。家族
八月一日

朝からトンカントンカンなんかうるさい

音源は工房の焼け跡掘立小屋か?

「ふ~んふ~ん♪」

覗くと代役の兵器担当に任命された秋津洲さんが妖精指揮して装備品の修繕をしている様子

……大丈夫かな?
正直なんか頼りないような……

工場も焼けて機材もあんまりないし…

五時間後に見ると明石さん夕張さんが指揮していた時の二割にも満たない速度ですが修理は進んでいました。

案外頼りになる…かも?
夕方にあった攻撃への対応後

秋津洲さんは膝を抱え俯いています。

修理した砲身が暴発。負傷者が出たとのこと

そりゃ機材も不足で新人が即戦力なら世の中苦労ないですよ

知ってた。
八月二日

提督「……」

大淀「……」

無言だけど一応作戦会議中

雑談をする相手もいなくなってしまったので

提督は話が固いし、気さくに雑談をするような感じの人でもなし
沈黙は気まずいものが…
グゥ

静かだと腹の音がよく響く  私ではない。

大淀「ちゃんと食べていらっしゃいます? 顔色黒ずんで死相出ていますよ」

提督「配給分はしっかり食べている これは…日焼けだ」

大淀「はぁ」

もうちょっとマシな言い訳はないのか
もっとも栄養失調者は全体の半分近いので珍しい顔色ではないけれど
連夜の襲撃で睡眠時間は十分ではないし
水や空気も悪い

大淀「どうでしょう 皆の顔を撮って送れば悲惨さが分かって撤退許可も」

提督「……」

真に受けて青葉さんを呼ぼうとしたので大慌てで止める。

冗談の通じない人だ。

そんなのが遺影になったらどうするんですか

これだから男性は。
八月六日

隼鷹「こういう時に出す酒の一杯も隠しとくもんだぜ ったくよ~」

瑞鶴「もー、ガタガタ言わない」

千歳「でもまぁ…お酒は…日本酒…大吟醸…うへへ」

千代田「お姉……その顔は見たくなかった」

長門さん達以降いつのまにか恒例になってしまった少数が敵に突撃
怯んだ隙に一斉砲撃を仕掛ける省エネ防衛手段

誰が行くかは負傷者や艦載機を喪失した空母さんたちが勝手にくじ引きをしているようです。
瑞鳳「すり替えたでしょ! 瑞鳳が当たり引いたはずなの!! 」

隼鷹「ふっ まだ遊びたい盛りの子供が、こんな事をしちゃあいかん」ナデナデ

隼鷹「って一回この台詞言ってみたかったんだよね~ イケてね?」

瑞鶴「いや、なに今さら」

秋月「みなさーん 早くしてください 上陸されちゃいますよ~」

「はーい」
最近は誰もが一週回って逆に明るくなっていた。

人目の少ない場所で泣いている子の姿も減っていた。

疲れたのかもしれません
深刻な顔をしているのにも生きていくのにも。

毎晩お墓の前で泣いていた吹雪ちゃんも今ではすっかり戦力に戻りました。

吹雪「死んだらもう痛くないしお腹も空かないし皆にも会えるしそんな悪くないですよね?」

吹雪「司令官のために頑張ります!」

言われた本人は無言で顔をそむけた。
八月九日

提督が通信機の前で土下座しながら撤退要求をしている

見えやしないのに
八月十日

「ひとーつ ふたーつ みっーつ よーっつ ははっ。全然足りなーい」

残りの弾薬と燃料は何度数えても増えず。溜息を吐きながらとりあえず執務室へ

今日は珍しく提督のほうから声をかけてきました。

提督「やほやほー 大淀ちゃん元気? だめだぞ~ 溜息つくと幸せになれん!」
…ストレスが頭に来たかこの人?
大淀「では幸せになれるように必勝の策でも考案して頂けると…」

厭味チクリ

提督「必勝ねー」

提督「そもそもどうやったら最終的に勝ちなのよ?」

大淀「…敵の殲滅……は無理だから敵の本拠地占領すれば」

提督「深海にどうやって攻め込めと」

大淀「じゃあ相手が降伏するまでこう耐え抜いて」

提督「言葉通じず共通ルールない相手に降服しないだろ 捕虜待遇取り決めあったらこっちが降伏してる」

それ言っちゃダメでしょ

大淀「じゃあ相手の国民が耐えかねてクーデター起こせば……国民とか居るんですかね?」

提督「さー」
大淀「というかなんであんな得体のしれない化け物と戦争開始したんでしょうか?」

提督「船が襲われた~ とか色々噂あるけどどうなんかね?」

提督「結局のとこ、君ら性能凄いじゃん。海戦の勝率軽く9割超えじゃん」

提督「無敵の君たち艦娘部隊 倒せない敵なんていない! と思っちゃったんじゃね?」

大淀「なんですかそのじゃね?って」

提督「だって開戦したの自分じゃないし」

ですよねー
提督「無限に湧く相手と戦争とか無理でしょ 親玉倒したら~ とかの勝利条件もないし」

大淀「いや、そこは勝てるって言いませんか?」

提督「提督って立場じゃなかったら逃げてるよ っていうかうん。艦娘だったら脱走してる」

提督「なに 定期的に薬投与されないと死ぬとか家族が人質とかあんの?」

大淀「権限者の許可を得ず話せる内容ではありません」

提督「えー なんかもういいんじゃない」

提督「報告する気もないんでしょー?」ウリウリ

ノリが違いすぎて誰ですかあなた

大淀「まったく」
大淀「…なんか今日の提督凄い話しやすいです そっちのほうがモテますよ」

提督「ホント? まー、ある程度上官の威厳とか心がけててさ」

提督「でも君たちかわいい子ばっかだし、本音は仲良くお話したいのよ」

大淀「じゃ今度一緒に遊びにでも行かれます? 綺麗どこ揃えて」

提督「いいねー じゃ戦争終わったらうちの故郷遊び来てよ 田舎だけどすっごい山も川も綺麗なの」

大淀「ほうほう」

提督「春は花が 秋は紅葉が一面に」

提督「冬になると雪でぜーんぶが なにもかも真っ白に包まれてさ それが物凄く美しくて…」
翌朝、執務室のドアを開けると
目に飛び込んできたのは頭から血を流した提督の遺体でした。
1、指揮官自決の顛末及び戦況
2、指揮権限者不在のため戦闘続行不可の旨
3、撤退希望する旨

以上3点を軍令部へ報告するように
と、全体への遺言は業務連絡のようなもの。

あとはそれぞれにあてた簡素な謝罪。

私には撤退までの部隊配置

提督個人の資産状況とそれを使用しての傷病除隊者に関する生計の云々

お礼の言葉も数行

第一発見者となっているだろうこと。決断が遅かったことなどのお詫びも数行

本人なりにできる限りのことをしたつもりなのでしょう。
まったく……だから有能の前に『それなり』がつくんです

死んで責任を取るというのは男の人の考えです

こんなやり方で撤退できたからって誰が喜ぶんですか

泣いている駆逐艦の子たちの姿を想像しなかったんですか

子供の心みたいな真っ白のものにこんな色を付けてしまってどうするんですか

お金があったところでこれを見せられて楽しい未来が過ごせると思ったんですか

だから自分で責任を取るというのは美意識と責任感ばっかり強い 独善的な…男の人の考え方です

もっと短絡的に
例えばそう 残りの資材盗んでどっかに逃げて、そのお金元手に貧しいながらも皆で畑でも耕すとか…

そんな妄想を思い浮かべると、それがものすごく幸せそうなものに思えて
頬から顎をつたわって流れる涙が止まらなくて

回りからも泣き声が聞こえ、壁を叩く音、地面を掻き毟る音が聞こえて

ただ悲しさがこみ上げるだけでした。
提督が亡くなった旨を知らせた5日後

近くの基地からでしょうか、沖合に護衛を伴った船が
清霜「あれに乗れば帰れるのかな」

大淀「そうですね 荷物の支度は済みましたか?」

清霜「…清霜達だけ帰るなんて司令官もいなくなった皆も許してくれる?」

大淀「そんな顔しないで」

大淀「大体、敵潜水艦に見つかったら無事に帰れるとは限らないですからねー?」

大淀「戦艦重巡さんは役立たず 私たちもばっちり護衛しませんと!」

つらいときは役目を与えるのが一番

さーて、最後まできっちりがんばります!
そんなことを思っていると船が着岸
不機嫌そうな顔をした男性が降りてきました。

「本日より着任する おい、なんだその覇気のない面は! 心構えを教えてやる 整列ッ 歯食いしばれ!!」
…どうやら新しい提督が着任されたようです。
おわり
艦これ改は買ってません。
元スレ:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1469795878/

-夕張, 大淀, 清霜