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山城 雪風 明石

【雪風SS・艦これ】雪風「えっ!山城さんがぎっくり腰?」

2017/02/24

扶桑「そうなのよ……」

扶桑「あの子、大掃除中に重い荷物を持っちゃったの……」

雪風「それは大変!」

扶桑「だから医務室の湿布とコルセットがほしいんだけど……」

扶桑「私はこの後出撃なの……」

雪風「じゃあ、私がとってきますね!」

扶桑「ほんと……?ありがとう……」ナデナデ

雪風「えへへ」

雪風「えっ!湿布が切れちゃってるんですか?」

明石「うん……そうなのよ」

明石「ここも酒保の分も、私が発注忘れちゃってね」

明石「雪風、ごめんね……」

雪風「そうなんですか……」シュン

明石「……あ、そうだ!」

雪風「?」
明石「雪風、今時間ある?」

雪風「はい!非番です!」

明石「そっか、じゃあ……」ガサゴソ

明石「私のお金を渡すから、これで湿布を買ってきてくれない?」

明石「この辺りには何もないから、隣町まで行ってもらうことになるんだけど……」

雪風「分かりました!大丈夫です!」

明石「ほんと?ありがとうね!」
雪風「……あれっ」

雪風「明石さん!お金がおおいのでかえします!」

明石「ふふっ、いいの!」

明石「バス代もいるし……」

明石「ついでに皆に内緒で、美味しいものでも食べてきて」ニコッ

雪風「おいしいもの……!」キラキラ

雪風「ありがとうございます!」ニコッ

明石「じゃあ……お願いね?」

雪風「はい!いってきます!」

ドタドタドタ…
ドーン!
雪風「きゃっ!」

提督「おぉーうぁ!」

バサッ バラッ……

提督「ゲェーッ、資料の山がっ」アタフタ

雪風「ご、ごめんなさい!」ペコッ

提督「あ、あぁ……いいよいいよ」

提督「怪我はなかったか?」

雪風「はい!」

提督「そっか」ホッ
提督「そんなに急いでどうしたー?」

雪風「今から湿布のおつかいと」

雪風「内緒でおいしいものを食べにいくんです!」

提督「そ、そうか……まぁいいや」

提督「今度からは鎮守府の中、走ったらだめだからな?」

雪風「はい!気を付けます!」

雪風「では!」

提督「やれやれ……」ピラッ

提督「……」ピラッ

提督「ん?」ピラ…

提督「あ、この写真!」

提督「こんなところに挟まってたのか」

提督(カーチャンと昔飼ってた犬が写ってる)

提督(……今はカーチャン一人か……)

提督(……)
提督(近いうちに帰ってやるか)フフッ

雪風(こうやってバスを待つのは久しぶりです)

雪風(もうすぐおおみそかなので外は寒いですが……)

雪風(ズボン!コート!マフラー!)バッ

雪風(これでへっちゃらですね!)ニコッ

ブロロロrrr……
雪風(……どうやらバスがきたみたいです!)
……
…………
………………
ブロロロロrrrrr……

女(あー……立つのダリィ……)イライラ

女(あぁちくしょう、あの変態おやじ……)

女(うちの店でべたべた触りやがって……)

女(常連がなんだってんだ……クソッ)

女(……今日も来やがんのかな……)

女(いっそ……辞めてやろうかこんな仕事)

女(……いや、頭の悪いアタシじゃ、こんな仕事しか……)

女(腹のガキが生まれたら、ミルク代が出せなくなっちまう……)
雪風「……」ジーッ

女(……このガキ何見てやがんだ……)イライラ

雪風「」スッ

女(ん?立った?)

雪風「あの!」

雪風「ここ、座ってください!」サッ

女「え……?あ、アタシっ?」

雪風「はい!そうです!」

女「え、いや、いいよっ……」
女「アタシ、そんな歳じゃないしっ」アタフタ

雪風「うぅ、でも……っ」シュン

雪風「お腹が重そうなんです!」

女「……っ」

雪風「私はいいんです!ですから!」

女「……」

女「あぁ、ありがとう」フフッ

雪風「!」ニコッ
エキマエ……エキマエデス
ツリセンノナイヨウ、トウニュウグチニ……

運転手「230円だよ」

雪風「はい!」チャリン

雪風「ありがとうございます!」
タタタッ……
女(ありがとうございます!……か)

女(……あんな子に育ってくれたらな……)サスサス

女(……)

女(……お腹の子にアルコールを与えてるようじゃ……)

女(……だめだよな)

女(……)

女(……決めた)

女(今の仕事はやめる)

女(ガキに誇れるまっとうな仕事をしよう)

女(……これならお前の天国の父ちゃんも……)サスサス

女(……喜んでくれるかな)ニコッ
………………
…………
……

雪風(隣町に着きました!)

雪風「」グゥー

雪風「…………」

雪風(おなかがすきました!)

雪風(なので、先においしいものを食べます!)
ヒュゥ~……
雪風(……寒いので、温かいものが食べたいです!)

店主「ハァ……」

店主(ここ三日の間、客は一人も来ていない)

店主(俺は20年、このラーメン屋をやってきたが)

店主(もう……限界だな)

店主(景気がよかったときにこっそり業務用の麺を使い)

店主(コストを下げるためにスープの質を低くしたせいで)

店主(客足がすっかり遠のいてしまった……)

店主(今じゃそれは止めたが、一度失った信用は……)

店主(……どうにもならんな)
ガラッ

店主「!」

店主「へ、へいらっしゃい!」ガタッ

スタスタ…ガチャッ

雪風「ラーメンの大盛りっ!くださいっ!」

店主「あいよ」
店主(女の子が一人か……)カチャッ…

店主(……誰だっていい、もうこれが最後の客かもしれねえ)グツグツ

店主(どうせ最後なら、最高のラーメンを振舞おう)サッ…サッ…
店主「へい、お待ちどうっ」スッ

雪風「わーい!ありがとうございます!」ニコッ

雪風「いただきます!」

ズズズー!

雪風「うん!」コクッ

ズズズ-!

雪風「うんうん!」コクコクッ
店主(……うまそうに食いやがるなぁ……)フフッ
雪風「ごちそうさまでした!」ニコッ

雪風「おじさん!お会計おねがいします!」

店主「あはは、お代はいいんだ」

雪風「え?」

店主「この店……もう閉めることにするんだ」

店主「お嬢ちゃんが最後のお客さんだよ……ありがとうね」

雪風「え……えぇー!?」ガーン

雪風「そ、それは困ります!」オロオロ

店主「へ?」ポカン
雪風「だって!ここのラーメンすっごくおいしかったからっ」

雪風「また来ようと思ったのに……」シュン

店主「えっ……ウチの……」

店主「……ラーメンが?」

雪風「……」コクッ

雪風「……おじさん!お金は受け取ってください!」

雪風「私はこれからもお客さんなんですから!」

雪風「これはおいしいって思った分の、おかえしなんです!」ニコッ

店主「!」
雪風「お店、閉めないでくださいね!」

雪風「ゼッタイ!ですからねー!」

ガラッ
店主「……」

店主(おいしかった、か……)

店主(思い出してみれば……俺も駆け出しの頃は)

店主(美味そうに食う客の顔を見るのが一番の楽しみだったな……)

店主(……わすれていた初心か……)

店主(……へへっ、しゃーねぇ……店を閉めるのはもっと後にしてやらぁ)

……
…………
………………

雪風(おなかいっぱいです!)ケプー
旅女「すみませーん!」

雪風「ふぇっ?」

旅女「写真、とってくださーい!」

雪風「はい!分かりました!」
パシャッ
旅男「よく撮れてるねぇ」

旅女「ありがとう!」

雪風「いえいえ!」

雪風「お幸せに!」ニコッ
……
…………
………………

ヒュゥ~…
老人「うぅ……」

老人(さすがに、寒いな……)

老人(妻が逝き……家を売りに出して早一年)

老人(世間では……わしはホームレス……か)

老人(情けない話だが……)

老人(……こんな生き恥を晒してでも、わしはまだ生きたいのだな……)
雪風「」テクテク

老人「お嬢さん……」フラッ

雪風「ひゃ!びっくりしました!」ビクッ

老人「あぁ……驚かせてすまないね……」

老人「時にお嬢さん……」

老人「ワシに……お金を恵んではくれんか……?」

雪風「へっ!お、お金……ですか?」アタフタ

老人「あぁ……」

老人「食うものに困っておるのだ……」

老人「頼むよ……」

雪風「うぅ…………」オロオロ

雪風(この人、困ってるんだ……!)

雪風(……でも!)

雪風「ご、ごめんなさい!」

雪風「うちの山城さんが困ってるんです!」

雪風「……ですからお金は渡せません」シュン

老人「そうか……」
雪風「本当に、ごめんなさい!」ペコペコ

老人「い……いやいや、いいのだ」

老人「こうなってしまったのは」

老人「お嬢さんのせいではない……」

老人「気にしないでくれ……うぅっ」ゴホッゴホッ

雪風「!」

雪風「おじいさん!せめて……これを!」スッ

老人「ゴホ……ん!?」
老人「マフラーか?」

老人「い、いかん……君が風邪を引いてしまうぞ……」
雪風「いいえ……“雪風”はゼッタイ!」

雪風「大丈夫なんです!」

老人「っ!!」
雪風「私、そこの薬局におつかいにいくのでこれで失礼します!」

雪風「それでは!お体におきをつけて!」ダッ

タッタッタッタッ……
老人「……“雪風”か……」
老人(……昔を思い出すのぉ……)

老人(……かつて駆逐艦“雪風”の乗組員だった頃を……)

老人(……雪風は幸運の船と、同期の連中に言われておった)
老人(……それは少し、違うな)フフッ

老人(あれは皆の極まった練度と……生きようとする毅然とした意志の賜物……だ)

老人(それが今のわしは……どうだ?)ゴホッゴホッ
老人(…………暖かいマフラーだ……)

老人(これなら、外も出歩けるだろ……)

老人(……こんな老いぼれでもできる仕事を探す)

老人(老い先短い人生だが……)

老人(……結果を座して待つより、自ら手繰り寄せる)

老人(わしらには、やはりそれが性に合っとるんじゃ……)
老人(……そうですよね、寺内艦長……?)ポロ…ポロ…

……
…………
………………
ヒュゥ~……
雪風「……」ブルブル

雪風「……」ブルッ
雪風「さすがに……寒いです……」

山城「う……うぅ~ん……」グデー……

山城「……っいだだだだっ!」

山城「……不幸だわ……」グスッ
ガチャッ
雪風「山城さん!」

山城「あっ……雪風!」
雪風「こちらが買ってきた湿布と」

雪風「医務室のコルセットです!」

雪風「今から!山城さんにこれを……」

山城「あなた、顔真っ赤じゃないの!」

雪風「ふぇ!?」

山城「首元、なにも巻かずに出て行ったの!?」

雪風「えと!そ、それは……」アタフタ

雪風「……えへへ」

山城「まったくもぉ」ハァ
ギュッ

雪風「ひゃっ!」

山城「……あなた、やっぱり冷たいわ」

山城「でもこうすれば、少しは暖かいでしょ?」フフッ

雪風「でも!そんな姿勢じゃ……山城さんの腰が!」

山城「ふふっ、大丈夫」ニコッ

山城「こうやってあなたを抱くと、私も幸せを感じるの」ニコッ

山城「雪風……ありがとう」ギュ…

雪風「…………」

雪風「はい!」ニコッ

雪風「雪風も幸せ、感じちゃいます!」
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以上でこのお話はおわりになります

いつも以上に短い作品となりましたが

見てくださった方、楽しく書かせていただきありがとうございました
幸運艦は伊達じゃないな乙
いい話だった

元スレ:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1453609936/

-山城, 雪風, 明石